システム開発の内製化で加速するDXと注意点

内製化で実現するアジャイル業務改善

近年、「業務アプリなどのシステム開発の内製化」というキーワードが注目を集めています。ITベンダーや開発会社へ全てを外注するのではなく、業務部門が自らツールを使いこなし、必要な業務システムやワークフローを社内で素早く開発していく。このトレンドは、組織のアジャイルな業務改善とDX推進の大きな原動力となりつつあります。特に、「Power Apps」や「Power Automate」をはじめとしたMicrosoft Power Platformは、この内製化を可能にする強力な武器といえるでしょう。

本記事では、IT担当者として社内のDXをリードする上で、内製化推進の背景、適した顧客像、そして導入におけるボトルネックと、その克服のポイントを整理します。


なぜいまシステム開発の内製化が注目されるのか?

1. 開発のスピードアップ
従来のシステム開発では、要件定義から開発、テスト、リリースまでに長い時間と多大なコストがかかりがちでした。しかし、業務部門自身がローコード/ノーコードツールを活用することで、小規模な改善やアプリ更新がスピーディーに進みます。「忙しい時期に発注業務を自動化したい」「営業支援のアプリがすぐに必要」といったニーズに、内製化は迅速な対応を可能にします。

2. コスト削減と継続的改善
システム開発を外部に丸投げすると、開発費用はもちろん、改修や追加機能開発の度にコストが膨らみます。一方、内製化により社内で改善を続けられる環境が整えば、初期投資と教育コストはかかるものの、長期的には持続的なコスト削減と業務品質向上が見込めます

3. ナレッジ蓄積による競争力強化
業務改善の知見が社内に蓄積されることで、ノウハウの社内循環と人材育成が促進されます。「このプロセスを自動化するとどうなるか?」といったアイデアが現場から自然発生しやすくなり、それが蓄積されることで独自の競争力やイノベーション創出につながります。


どのような企業・組織が内製化に適しているのか?

1. Microsoft 365 やDynamics 365を活用する企業
WordやExcelなどのMicrosoft365を使っている場合、Power Platformは自然な拡張ツールとなります。既にMicrosoftライセンスをお持ちの組織なら、追加のコストを抑えつつ、Power AppsやPower Automateを業務改善に活かしやすいでしょう。

2. DX推進・内製化に前向きな企業文化がある企業
変化をポジティブに捉え、自社内でのスキル獲得に積極的な組織は内製化に向いています。IT担当者がロードマップを示し、業務部門が自らアプリ作成に取り組むことで、現場が改善サイクルを回しやすくなります。

3. 明確な業務課題と改善ニーズがある組織
「何を改善したいのか」が明確な企業ほど、研修や教育への投資が実を結びます。社内ワークショップを通じて、すぐに使えるアプリや自動化フローを作成できれば、経営層や現場からの賛同を得やすくなります。


システム開発の内製化におけるボトルネックと克服方法

1. ガバナンスとセキュリティの懸念
ローコードで誰でも簡単にアプリが作成できる一方、無秩序な拡散は避けたいところ。IT部門としては、ガバナンス体制やデータ損失防止(DLP)ポリシーを整えることが重要です。標準的なアプリ開発ガイドラインやライフサイクル管理を定めることで、社内での混乱を防ぎます。

2. ITリテラシーのばらつき
「ローコード」といえど、アプリ開発には最低限のデータモデリングやプロセス設計の理解が必要です。そこで、IT担当者としては、基礎的な研修を分かりやすく提供したり、対象者別(初心者・中級者・IT部門向け)のコースを用意したりするなど、学習ステップを明確にしましょう。

3. ライセンスコストへの抵抗
高度なコネクタや機能を使う際には追加ライセンスが必要になることもあります。研修時には、ビジネスメリットとライセンスコストを整理して提示し、「これだけの投資で、どれほどの時間短縮や人的ミス削減が見込めるか」を明確にすることが肝心です。

4. 成果物が定着しない問題
システム開発を内製化するための研修を受けただけで終わってしまい、実際の改善が起こらなければ意味がありません。研修直後に小さなアプリやワークフロー構築を支援し、成功体験を共有することで、現場への定着を図りましょう。また、研修後のサポートやフォローアップコンサルティングを組み合わせることで、長期的な改善サイクルを回しやすくなります。


IT担当者が今すべきこと

  1. ガバナンスと運用設計の先行整備
    • ローコード開発基盤を導入する前に、ルールやポリシーを明確化し、環境戦略を策定しましょう。
  2. 段階的な研修プランの立案
    • 初心者向けの基本操作から、IT部門向けのガバナンス研修、業務部門向けの業務改善ワークショップなど、レベル別・役割別に計画的な教育プログラムを提供します。
  3. 成功事例やサンプルアプリの提示
    • すでに社内でPower AppsやPower Automateを活用した成功事例があれば共有し、モチベーションを高めます。まだない場合は、簡易的なサンプルアプリを自作して見せるのも有効です。

まとめ

「業務アプリなどのシステム開発の内製化」は、DXを推進し、業務部門の創造性を引き出す大きなチャンスです。IT担当者としては、技術的なトレーニング提供にとどまらず、ガバナンス面の整備や全社的な運用モデルの構築、そしてライセンス戦略の明確化までを見据えたサポートが求められます。Power Platformの活用を通じて、社内のスキル蓄積と業務改善サイクルの加速を実現できれば、組織全体の競争力強化につながるはずです。

業務アプリ内製化への第一歩として、いま手元にある課題を洗い出し、シンプルな自動化から試してみてはいかがでしょうか。あなたの行動が、組織のDXを一歩前進させます。

監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。

「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

高セキュリティと低コストを実現するローカルLLM

ある日本企業に対する調査では、72%が業務でのChatGPT利用を禁止していると報告されています。社内の機密情報がChatGPTのモデルに学習されて、情報漏洩の可能性を懸念しているためです。

そのため、インターネットに接続されていないオンプレミス環境で自社独自の生成AIを導入する動きが注目されています。ランニングコストを抑えながら、医療、金融、製造業など機密データを扱う企業の課題を解決し、自社独自の生成AIを導入可能です。サービスの詳細は以下をご覧ください。

いますぐサービス概要を見る▶▶▶