Grok 3はなぜ来ない?AI業界の“延期連鎖”から見る開発の壁

Grok 3は延期?AIモデル開発の“壁”が見え始めたのか

AI界の有力企業が次々と発表するフラッグシップ級の新モデル。しかし、近年の開発スケジュールの実態を見ると、「発売延期」や「未実装」といった事例が相次いでいます。イーロン・マスク氏率いるxAIの次世代モデル「Grok 3」も、その波に飲み込まれてしまったようです。昨年の夏頃には「2024年末までにリリース」と大々的に宣言されたものの、年明けのいまも目立った動きは見られません。

Grok 3延期の兆候と「Grok 2.5」の存在

マスク氏は昨年7月、xAIの大規模GPUクラスターを活用してGrok 3をトレーニングすれば「とびきり素晴らしいものになるだろう」と期待を煽り、12月には「Grok 3は大きな飛躍になる」と繰り返し語っていました。しかし、現実には2024年1月を迎えても正式なリリースの気配はありません。
むしろ、「Grok 2.5」という中間バージョンが先に登場するとのコードがxAIのウェブサイト上で確認されており、Grok 3自体はさらに先送りになる可能性が高まっています。

xAIの「発表→延期」は初めてではない?

イーロン・マスク氏が示す製品やプロジェクトのスケジュールは、往々にして極めて楽観的であることが知られています。マスク氏自身も、ポッドキャスターのLex Fridman氏とのインタビューで「2024年にリリースできれば幸運だ」と“やや控えめ”に言及したことを考えると、Grok 3の正式リリースにはまだ時間を要すると見てよいでしょう。

相次ぐ「未完モデル」、その背景とは

Grok 3だけではありません。

  • Anthropic:
    • 「Claude 3.5 Opus」を「2024年末までに出す」と宣言しながら、最終的に開発者向けドキュメントから一切の記載を削除。訓練自体は完了したものの、リリースの費用対効果を理由に断念した可能性が指摘されています。
  • OpenAI、Google:
    • フラッグシップモデルの開発で遅れや不確定要素が生じていると報じられています。

こうした動きは、「AIスケーリング則」の限界が見えつつある証拠ではないかという声が広がっています。これまでAIの性能向上は、膨大なデータとNvidiaの高性能GPUを投入する“スケールアップ”で飛躍的に進んできました。しかし、モデルが巨大化するにつれ、投入するリソースに対するパフォーマンス向上の幅は徐々に小さくなっているようです。

「Grok 3は最先端を目指すが、失敗もあり得る」

マスク氏はLex Fridman氏との対談で、Grok 3を“世界最先端”にするのが目標だと語る一方、失敗もあり得ることを示唆しています。xAIはOpenAIやGoogleと比べると、まだまだ小規模なチームです。大規模GPUクラスターこそ用意できたものの、リソース管理や研究開発体制は大手に比べて不利な面も否定できません。

それでも「Grok 3」を実現しなければ、xAIがアピールする「OpenAIやGoogleに対抗するAI企業」という存在意義が揺らぐのは明らかです。開発遅延にどのように対処し、どんな形で新モデルをリリースしていくか——xAIの今後の立ち回りが注目されます。

限界を迎えたAI開発の“常識”——新しい突破口はどこに?

度重なる開発延期は、単なる企業のスケジュール管理不足にとどまらない可能性があります。

  • 大規模モデルのコスト問題: 巨大モデルほど訓練コストが跳ね上がり、企業にとってはROI(投資対効果)が厳しい判断材料に。
  • 性能向上率の頭打ち: “ビッグデータ+大規模学習”で性能が飛躍的に上がった時代は過ぎ、**「より効率的なアルゴリズム」や「新アーキテクチャ」**が求められている。
  • 専門家のリソース不足: トップクラスのAI研究者やエンジニアの確保は年々競争が激化。小規模チームには大手ほどの開発スピードを維持するのが難しい。

こうした課題を解決しなければ、近い将来の「Grok 3」どころか、多くのAI企業が目指す次世代モデルのローンチも難しくなります。まさに、**“AIモデル開発の壁”**が立ちはだかっている状況です。

本当に「Grok 3」はやって来るのか?

2024年のAI業界における注目モデルの一つとされている「Grok 3」。その到来を待ち望んでいるユーザーは少なくないでしょう。しかし、いまだに具体的な発売日どころかローンチの兆しすらはっきりしない中で、先に“Grok 2.5”のような中間的アップデートが公開されるにとどまる可能性も高まっています。

  • 最終的にリリースされるにしても、当初の予告より大幅に遅れるのは濃厚
  • 巨大なGPUクラスターも高性能チップも、限界まで使い切ればコストパフォーマンスの問題が顕在化
  • 既存のAIスケーリング戦略からの脱却こそが、業界全体の課題になりつつある

果たしてイーロン・マスク氏の大風呂敷は、本当に実を結ぶのでしょうか。2024年のAI業界を占う上で、Grok 3の行方は大きな焦点となるに違いありません。

参考)xAI’s next-gen AI model didn’t arrive on time, adding to a trend

監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。

「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

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