SharePointとAzure OpenAIで実現する次世代エンタープライズ検索
「社内規定のあのファイル、どこに保存したっけ?」「この案件の過去資料を探すのに30分もかかった…」
こんな経験、ありませんか?企業のナレッジは日々増え続け、SharePointには膨大な文書が蓄積されています。しかし、従来のキーワード検索では「表記揺れ」や「文脈の理解」に対応できず、必要な情報にたどり着けないことも少なくありません。
本記事では、Azure AI SearchとAzure OpenAIを組み合わせた「RAG(検索拡張生成)」アーキテクチャ、Custom RAGについて、Microsoft 365 Copilotとの比較を交えながら解説します。
従来検索の限界と「意味検索」の登場

従来のキーワード検索は、ユーザーが入力した単語と文書内の単語が完全一致しなければ機能しません。例えば「リモートワーク規定」で検索しても、「在宅勤務ガイドライン」という名前の文書はヒットしないのです。
これに対し、Azure AI Searchのベクトル検索は、テキストを数値配列(ベクトル)に変換し、「意味的な近さ」で文書を検索します。「リモートワーク」と「在宅勤務」が同じ概念であることを理解し、関連文書を見つけ出せるようになりました。
アーキテクチャの全体像

今回ご紹介するRAGソリューションは、以下の4層で構成されます。
1. データソース層
- SharePoint Online:社内規定、マニュアル、契約書などの非構造化データ
- Azure Database for MySQL:商品カタログや売上データなどの構造化データ
2. 検索・インデックス層(Azure AI Search)
- ベクトルストア機能で数百万件のデータから高速検索
- ハイブリッド検索:ベクトル検索(意味理解)とキーワード検索(完全一致)を組み合わせ
3. 推論層(Azure OpenAI Service)
- Embedding Models:テキストをベクトルに変換
- Chat Completion Models(GPT-4oなど):検索結果をもとに自然言語で回答生成
4. アプリケーション層(App Services / Static Web Apps)
- ユーザーインターフェース提供
- 会話履歴管理、プロンプト制御
このアーキテクチャの特徴は、SharePointの文書データとMySQLの業務データを統合的に検索できる点です。「昨年の売上報告書の要点は?」という質問に対し、SharePointの報告書PDFとMySQLの売上数値を組み合わせた回答が可能になります。
Custom RAGとMicrosoft 365 Copilotとの比較

企業がAI検索を導入する際、「自社でRAGを構築するか」「M365 Copilotを購入するか」という選択肢があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
機能面の比較
| 項目 | Custom RAG 本システム | Microsoft 365 Copilot |
|---|---|---|
| データ範囲 | SharePoint、MySQL、外部システムなど自由に統合可能 | Microsoft 365内(Teams、Outlook、SharePoint等)に限定 |
| 検索制御 | チャンクサイズ、検索アルゴリズム、プロンプトを完全カスタマイズ | Microsoftが管理(ブラックボックス) |
| UI/UX | 自社ポータル、LINE/Slack連携など自由設計 | Teams/Officeアプリのサイドバー固定 |
| セキュリティ | ACLの複製・トリミングを自前実装 | M365権限を自動継承 |
料金面の比較
Microsoft 365 Copilot
- 月額約4,500円/ユーザー(年間約54,000円)
- 別途Microsoft 365 E3/E5等のベースライセンスが必要
- 全社員1,000名に導入すると、Copilotだけで年間約5,400万円
Custom RAG(Azure構成例)
- Azure AI Search Basic:約15,000円/月
- Azure AI Search Standard S1:約50,000円/月
- Azure OpenAI:トークン課金(使用量に応じて従量課金)
- App Service:約10,000〜50,000円/月
例えば、中規模構成(Azure AI Search S1 + App Service + OpenAI従量課金)で運用した場合、月額10〜20万円程度からスタート可能です。全社員が使うわけではなく、特定部門や用途に限定する場合は、Custom RAGの方が大幅にコストを抑えられます。

Custom RAGとMicrosoft 365 Copilot、どちらを選ぶべきか?
Custom RAGが向いているケース
- 特定ドメイン(技術文書、法務文書など)に特化した高精度検索が必要
- SharePoint以外のデータソース(基幹システム、外部API)も統合したい
- 検索ロジックやプロンプトを細かくチューニングしたい
- 利用者が限定的で、ユーザー課金より従量課金が有利
M365 Copilotが向いているケース
- 全社員の一般業務効率化(メール下書き、会議要約)が主目的
- 即座に導入・利用開始したい
- 追加の開発・運用リソースを割けない
- Microsoft 365エコシステム内で完結する

セキュリティの重要性:権限継承の実装
エンタープライズ検索で最も重要かつ難しいのがセキュリティです。SharePointには厳格なアクセス権限が設定されていますが、データをAzure AI Searchにコピーすると、デフォルトでは権限情報が失われます。対策として「セキュリティトリミング」を実装します。
- インデックス作成時に、各文書の閲覧可能ユーザー/グループIDをメタデータとして保存
- 検索時に、ログインユーザーの所属グループを取得
- 検索クエリに権限フィルタを自動付与
これにより、ユーザーは自分がアクセス権を持つ文書のみ検索結果として受け取れます。M365 Copilotはこの処理を自動で行いますが、Custom RAGでは自前実装が必要です。
導入を成功させるポイント
1. チャンキング戦略の最適化
文書を適切なサイズに分割することが検索精度に直結します。一般的にRAG用途では512トークン前後が推奨されますが、文書の性質に応じて調整が必要です。
2. ハイブリッド検索の活用
ベクトル検索だけでなく、キーワード検索も併用することで、固有名詞や製品番号などの完全一致検索にも対応できます。
3. プロンプトエンジニアリング
「コンテキストに答えがない場合は『分かりません』と答える」といった制約を加え、ハルシネーション(嘘の生成)を抑制します。
Custom RAGとMicrosoft 365 Copilotの比較:まとめ

SharePoint AI検索ソリューションは、Azure AI Searchのベクトル検索とAzure OpenAIの言語理解能力を組み合わせることで、企業のナレッジ活用を根本から変革します。
M365 Copilotは手軽さと即効性に優れる一方、Custom RAGは柔軟性とコスト最適化の可能性を持っています。自社のユースケース、予算、技術リソースを総合的に判断し、最適な選択をしてください。
特に「AIを活用したファイル検索」「社内規定検索ボット」「技術文書Q&A」のように特定用途に絞る場合や、MySQLなど外部データとの統合が必要な場合は、Custom RAGの検討をお勧めします。
「Copilotは高いけれど、社内検索のDXは止めたくない」
導入期間の目安は、標準構成で数週間〜を想定しています。データボリューム、権限設計、ネットワーク要件により前後いたします。詳細は以下のフォームよりお問合せください。
本記事は2025年11月時点の情報に基づいています。料金体系は変更される可能性がありますので、最新情報は各サービスの公式サイトでご確認ください。


