生成AIのクローズドモデル vs オープンモデル開発競争の行方

AI活用ブログ
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ChatGPTの爆発的な普及から始まった生成系AI革命は、いま新たな局面を迎えています。その中心にあるのが「クローズドモデル」と「オープンモデル」という二つの開発アプローチの熾烈な競争です。

OpenAIやAnthropicが主導する独自開発路線と、MetaやDeepSeekが推進する公開型モデルの対決は、AIの未来を左右する重要な分岐点となっています。本記事では、「クローズドモデル」と「オープンモデル」の違いや特徴を明らかにしながら、この競争がもたらす技術革新と今後の展望について解説します。

この記事の内容は上記のGPTマスター放送室でわかりやすく音声で解説しています。


最近「社外に出せないデータで生成AIを使いたい」という相談をよく聞きます。ChatGPTの利用は社内で禁止されているそうです。セキュリティやコスト面が気になる企業には、社内のローカル環境で動かせる仕組みがあることはご存知ですか?

生成AI革命の二大潮流:クローズドモデルとオープンモデルの基本

クローズドモデルとは

クローズドモデルとは、開発企業が内部構造やトレーニング手法を非公開としながら、APIやサービスとして提供する生成AIモデルです。大規模な計算資源と独自データセットを用いて開発され、使用は許可されていても内部の改変や詳細な検証はできません。代表例としては、OpenAIのGPTシリーズ、AnthropicのClaude、GoogleのGeminiなどが挙げられます。

オープンモデルとは

対照的に、オープンモデルはソースコードや学習済みの重みデータを公開し、誰でも検証や改良、再配布が可能な生成AIモデルです。開発者コミュニティによる協力や改善が特徴で、Meta(旧Facebook)のLlamaシリーズ、Alibaba CloudのQwen、そして2024年に急速に注目を集めているDeepSeek V3などが代表的存在です。これらは商用利用も含め、比較的自由な条件で利用できるものが多くなっています。

進化の連鎖:クローズドモデルとオープンモデルの技術的攻防

AIモデル開発の歴史を振り返ると、鮮明な発展パターンが浮かび上がります。まずクローズドモデルが革新的な性能向上を実現し市場を驚かせると、数ヶ月から1年程度の時間差を経て、オープンモデルがその技術を吸収・再現するという循環が形成されてきました。この「イノベーションとキャッチアップ」のサイクルは、生成AI技術全体の急速な発展を促進する原動力となっています。

ポイント

  • “1年待てばオープンの最先端モデルが無料で使える”という見方もある
  • クローズドモデルは性能面・機能面で依然先行し続ける
  • 2025年以降もオープンモデルが追随し、クローズドモデルとの競争は絶えず続く

とはいえ、MMLU(※)のようなタスクでは上限に達してしまい差を測るのが難しくなる(いわゆる“サチる”)ケースも出ています。実際には、まだ他のタスクで差が見られる場合も多く、クローズドモデルがエンタープライズ向け高機能を提供する“逃げ”の状態が続いているのも事実です。

※MMLU(Massive Multitask Language Understanding)は、言語モデルの性能を評価するためのベンチマークテストです。2020年にカリフォルニア大学バークレー校の研究者Dan Hendrycks氏らによって提案されました。

“新技術”を取り込むのはどちらか?

クローズドモデルは大規模な学習リソースを背景に新技術を独自に開発し、先行したパフォーマンスを見せるケースが多くあります。

しかし、その技術は必ずしも秘匿され続けるわけではなく、他社やOSSコミュニティが追随し、1年ほど経つと同等の性能を持つオープンモデルが公開される──これが近年のトレンドです。

一方で、オープンモデルでもユニークなアーキテクチャや新手法を取り入れる例が増えています。2024年末にリリースされたDeepSeek V3は、その典型的な事例です。以下、DeepSeek V3の主な特徴を紹介します。

  • 革新的なMoE(Mixture of Experts)アーキテクチャ:DeepSeek V3は総計671Bという膨大なパラメータを持ちながら、実際の処理時には37Bのパラメータだけが活性化する「専門家の混合」方式を採用
  • 効率的な推論処理:必要な「専門家」のみを活性化させることで、通常の大規模モデルと比べて計算コストを大幅に削減しながら高性能を実現
  • クローズドモデルと肩を並べる性能:この革新的なアプローチにより、GPT-4やClaudeといったクローズドモデルに匹敵する処理能力を実現しつつ、オープンな利用環境を提供

このように、オープンモデル発で大きなイノベーションを生むケースも少しずつ目立ちはじめました。

価格競争の行方─クラウドでの提供コストに差はあるのか

かつては「オープンモデル=無料」「クローズドモデル=有料」というイメージが強かったものの、実際にはクラウドインフラでデプロイする際のコストはオープンでもクローズドでも大差なくなりつつあるのが現状です。

たとえば、以下の2つを比較したとき、計算リソースのコストを含めたトータルな面で大きく差があるとは言い切れません。

  • オープンモデルのLlama3を、企業がクラウド上で推論APIとして提供する
  • OpenAIやAnthropicがAPI提供するクローズドモデルを利用する

価格の優位性を武器にオープンモデルがクローズドモデルを駆逐する、というシナリオは今のところ描きにくくなっています。

これからの展望─2025年以降も続く熾烈な開発競争

2025年以降も、クローズドモデルとオープンモデルの“追いつ追われつ”は続いていくでしょう。各国・各企業の研究チームが参入し、既存のモデルや学習手法を改良・模倣しながら新しい技術を取り入れる動きは止まりません。

歴史的に見れば、技術の完全独占を維持するのは極めて困難です。クローズドモデル側が秘匿しているノウハウや学習手法が、数年経つと公開される・もしくは第三者が再現するパターンが過去にも繰り返されてきました。いずれオープンモデルもまた、大幅に性能を上げてクローズドモデルに肉薄していくでしょう。

まとめ──ユーザーにとっての最善の選択は?

最終的に、利用者にとっては「クローズドモデルがいいのか、オープンモデルがいいのか」という判断は簡単ではありません。現状、価格面の優劣はほぼなくなりつつあるうえに、性能や拡張性、エコシステム、サポートなど、重視すべきポイントは多岐にわたります。

少なくとも、2025年以降も両者の競争は続き、新たなプレイヤーや新技術が次々と生まれることは間違いないでしょう。今後は、それぞれの組織やサービス提供側が「どのモデルをどう活用するのか」によって大きな差がつく時代に突入するのではないでしょうか。

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監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。
「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

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