なぜ今、ローカルLLM(生成AI)が注目されているのか?

ローカルLLM(生成AI)とは、クラウドサービスを介さず、個人のPCや企業のサーバーなどのローカル環境で直接動作させるLLMのことです。

オープンソースのLLMが公開された2023年以降、多くの注目を浴びているわけですが、注目を浴びるその理由はなんなのでしょうか?

この記事ではローカルLLMの魅力について迫ります。

クラウド不要!ローカルLLMが切り開く未来とは?

ローカルLLMの最大の特徴は、ネットワークに繋がずに個人のPCや企業のサーバーなどのローカル環境で直接、LLM(生成AI)を活用できる点です。

ネットワークに繋がないことから、以下のメリットが生まれます。

  1. データのセキュリティとプライバシーの強化
  2. コンプライアンス要件への対応
  3. コスト削減
  4. カスタマイズ性の向上
  5. ネットワーク環境に左右されない

ローカルLLMのメリット1: データのセキュリティとプライバシーの強化

クラウド型の生成AIを使用する場合、常に情報漏洩のリスクが懸念されます。とくに機密情報や個人情報を含むデータを外部サーバーに送信することには、抵抗がある方も多いでしょう。多くの企業でいまだに生成AIの利用が禁止されている理由が、これです。

しかし、ローカルLLMならば、データ処理が社内環境に限定されるため、セキュリティリスクを大幅に軽減できます。

ローカルLLMのメリット2:コンプライアンス要件への対応

自社では生成AIを利用していても、取引先が生成AIの利用を禁止しているケースもあります。そのような場合でも、ローカルLLMならばデータを外部に送信しないため、取引先の意向次第ではありますが、生成AIを利用できる可能性が出てきます。

ローカルLLMのメリット3:コスト削減

一般的にクラウド型の生成AIは、利用量に応じて課金されます。そのため、大量のデータ処理を行う場合は、高額な費用が発生してしまう可能性もあるのです。

ローカルLLMならデータ送信自体を行わないため、当然データ処理による料金は発生しません。初期費用こそかかりますが、大幅にランニングコストを抑えられる可能性があります。

ローカルLLMのメリット4:カスタマイズ性の向上

ローカルLLMは、自社のデータでファインチューニング(追加学習)することができます。

特定の業務や業界に特化したAIを構築できるため、より精度の高いアウトプットを得ることが可能です。

ローカルLLMのメリット5: ネットワーク環境に左右されない

大前提としてローカルLLMは、インターネットに接続していなくても利用できるため、ネットワーク環境が不安定な場所や、機密情報を含むデータを扱う業務でも安心して活用できます。

環境によってですが、これだけでも十分なメリットがあると考えられます。

ローカルLLM(生成AI)の導入方法

ローカルLLMを導入することで、データのセキュリティ強化やカスタマイズ性の向上が期待できます。以下に、導入の基本的な手順を示します。

  1. ハードウェアの準備: LLMは高い計算リソースを必要とするため、GPUを搭載した高性能なPCが推奨されます。ただし、近年ではCPUのみでも動作可能な軽量モデルも登場しています。
  2. ソフトウェアのインストール: Pythonなどのプログラミング環境を整備し、必要なライブラリやツールをインストールします。たとえば、「llama-cpp-python」などのモジュールが利用されています。
  3. モデルのダウンロード: Hugging Faceなどのプラットフォームから、目的に合ったLLMモデルをダウンロードします。日本語対応のモデルも増えてきています。
  4. モデルの実行とテスト: ダウンロードしたモデルをローカル環境で実行し、動作確認を行います。適切なプロンプトを入力し、期待通りの出力が得られるかを確認します。

注目すべきオープンソースLLM「Gemma 2」

この記事では代表的なGoogleが開発したローカルLLMとして、Googleからリリースされている「Gemma 2」を紹介します。

Gemma 2の概要

Gemma 2は、Googleの最新LLMであり、9億、27億パラメータのモデルが公開されています。とくに、27億パラメータのモデル(Gemma2 27B)は、パラメータが2倍以上の他モデルに匹敵する性能を持つと報告されています。

Gemma 2の特徴と性能

Gemma 2は、以下の特徴を持ちます

  • 高性能:主要なベンチマークで高い性能を発揮し、同規模の他モデルを上回る結果を示しています。
  • 軽量性:モデルサイズが小さく、リソース効率が高いため、ローカル環境での実行が容易です。
  • 商用利用可能:Apache License 2.0のもとで提供されており、商用利用が許可されています。

Gemma 2は日本語対応

特筆すべきは、日本語に特化したモデル「gemma-2-2b-jpn-it」の存在です。このモデルは、日本語での詩の作成や翻訳、コード生成など、多様なタスクで高い性能を発揮しています。

Gemma 2の導入方法

Gemma 2は、Hugging Faceのプラットフォームからアクセス可能で、以下の手順で導入できます:

  1. 環境構築:Python環境を整備し、必要なライブラリ(例:Transformers)をインストールします。
  2. モデルのダウンロード:Hugging Faceから目的のモデルをダウンロードします。
  3. 実行とテスト: ダウンロードしたモデルをローカル環境で実行し、動作確認を行います。

その他のオープンソースLLM

オープンソースのLLMは無料で利用でき、カスタマイズ性が高いのが特徴です。以下に、日本語に強い代表的なモデルを8つ紹介します。

  1. Command R+
  2. Elyza-Llama2-7B-Instruct
  3. Llama-3-8B
  4. Vecteus-v1
  5. Ninja-v1
  6. Command-R
  7. ArrowPro-KUJIRA
  8. RakutenAI-7B-Instruct

①「Command R+」:バツグンの安定性と高い日本語能力を持つAIモデル

Command R+は、AIスタートアップのCohereが開発した大規模言語モデル(LLM)で、エンタープライズ向けに設計されています。

高度な検索拡張生成(RAG)やツールの使用に特化しており、文書の要約や提供された情報に基づく質問応答、多言語対応など、ビジネスに必要なタスクで優れた性能を発揮します。

②「Elyza-Llama2-7B-Instruct」:松尾研初のスタートアップが開発したモデル

Elyza-Llama2-7B-Instructは、株式会社ELYZAが開発した日本語特化の大規模言語モデルです。

Meta社のLlama 2をベースに、日本語データを追加学習し、指示追従能力を強化しています。

③「Llama-3-8B」:日本語にも対応予定のMeta社モデル

Llama-3-8Bは、現在(2024年11月現在)開発中のMeta社が開発中の大規模言語モデルで、80億のパラメータを持ちます。

日本語対応も予定されており、多言語での高性能な自然言語処理が期待されています。

④「Vecteus-v1」:伸びしろがすごい日本語特化モデル

Vecteus-v1は、日本語に特化した大規模言語モデルで、今後の発展が期待されています。とくに、日本語の自然言語処理タスクでの高い性能に注目されています。

⑤「Ninja-v1」:ローカルAIハッカソンから生まれたモデル

Ninja-v1は、ローカルAIハッカソンで開発されたモデルで、コミュニティ主導の取り組みとして注目されています。軽量で効率的なモデル設計が特徴です。

⑥「Command-R」:Cohereの原点であるAIモデル

Command-Rは、Cohereが初期に開発した大規模言語モデルで、ビジネス向けのタスクに特化しています。文書の要約や質問応答などで高い性能を示しています。

⑦「ArrowPro-KUJIRA」:現役高校生が作った日本語特化のAIモデル

ArrowPro-KUJIRAは、現役高校生が開発した日本語特化の大規模言語モデルで、その独創性と技術力が評価されています。

⑧「RakutenAI-7B-Instruct」:楽天グループが開発したAIモデル

RakutenAI-7B-Instructは、楽天グループが開発した大規模言語モデルで、7億のパラメータを持ち、指示追従能力に優れています。楽天のサービスにおける多様なタスクでの活用が期待されています。

注目が集まるローカルLLM(生成AI):まとめ

ローカルLLMの導入は、データのセキュリティ強化やカスタマイズ性の向上など、多くのメリットをもたらします。適切なハードウェアとソフトウェアの準備、そして目的に合ったオープンソースLLMの選択を通じて、効果的な活用が可能となります。今後も技術の進化に伴い、ローカルLLMの活用範囲はさらに広がることが期待されます。

高セキュリティと低コストを実現するローカルLLM

ある日本企業に対する調査では、72%が業務でのChatGPT利用を禁止していると報告されています。社内の機密情報がChatGPTのモデルに学習されて、情報漏洩の可能性を懸念しているためです。

そのため、インターネットに接続されていないオンプレミス環境で自社独自の生成AIを導入する動きが注目されています。ランニングコストを抑えながら、医療、金融、製造業など機密データを扱う企業の課題を解決し、自社独自の生成AIを導入可能です。サービスの詳細は以下をご覧ください。

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