llms.txtの基本と実装方法:生成AI時代の情報保護ガイド

AI活用ブログ
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企業やメディアにおける情報管理の在り方が、生成AIの急速な普及によって大きく変わろうとしています。そのなかで注目を集めているのが「llms.txt」という新しいテキストファイルです。llms.txtは、Webサイトの運営者が自社のコンテンツを生成AIにクロール・学習させるかどうかを制御するためのルールファイルであり、特にIT管理者にとっては重要な検討事項になりつつあります。

本記事では、llms.txtの基本的な仕組みから、具体的な記述例、設置方法、そして今後の企業対応のあり方について解説します。


最近「社外に出せないデータで生成AIを使いたい」という相談をよく聞きます。ChatGPTの利用は社内で禁止されているそうです。セキュリティやコスト面が気になる企業には、社内のローカル環境で動かせる仕組みがあることはご存知ですか?

llms.txtとは何か?

llms.txtは、Webサーバーのルートディレクトリに設置することで、AIクローラー(大規模言語モデル=LLMを運用する企業のボット)に対して、自社のWebコンテンツを学習対象とすることの可否を伝えるためのファイルです。

構造は「robots.txt」に似ており、機械が読み取れるプレーンテキスト形式で記述されます。2024年後半以降、OpenAI(ChatGPT)やAnthropic(Claude)といった主要な生成AIベンダーがこの仕組みへの対応を表明しており、llms.txtの設置は企業のデータ保護戦略として注目を集めています。

企業がllm.txtを導入する背景と目的

従来、AIがWeb上の情報をクローリングして学習に利用することに対して、明確な拒否の手段は「robots.txt」しかありませんでした。しかしこれは検索エンジン向けの制御が主目的で、AIクローラーの挙動に対しては曖昧でした。

llms.txtの登場により、企業や個人が生成AIの学習対象から明確に除外する意思を示すことができるようになったのです。とくに以下のような目的で導入され始めています。

  • 自社独自のノウハウや有料コンテンツの無断学習を防ぎたい
  • 著作権やライセンス上、AI学習に適さない情報を含む
  • 個人情報やセンシティブな記述を含むページへのアクセスを制限したい

llms.txtの基本的な書き方と記述例

llms.txtの記述形式は非常にシンプルです。代表的な構文は以下の通りです:

User-Agent: *
Disallow: /

この記述は「すべてのAIクローラーに対して、全ページのクロールを禁止する」という意味です。
特定のベンダー(たとえばOpenAIのみ)を制限したい場合は、以下のように個別指定も可能です。

User-Agent: OpenAI
Disallow: /

User-Agent: Anthropic
Allow: /

このように、どのクローラーに何を許可/禁止するかを柔軟に制御できます。

llms.txtの設置方法と注意点

llms.txtは、Webサイトのルートディレクトリ(例:www.example.com/llms.txt)に設置する必要があります。通常はFTPやSSHを用いてサーバーにアクセスし、テキストファイルをアップロードするだけで済みます。

ただし注意点として、現時点(2025年6月時点)ではすべてのAIクローラーがllms.txtの指示に従う義務はなく、法的拘束力もありません。したがって、あくまでベンダーの自主的な遵守を前提とした対策になります。

また、robots.txtとの併用が可能ですが、対象が異なるため、それぞれに正確な意図を記述することが重要です。両方のファイルを使い分けることで、検索エンジンと生成AIの双方に対して適切な制御が可能となります。

対応を表明している主なベンダー

以下の企業は、llms.txtへの対応を公式に発表しており、設定内容に基づいてクロール対象を制御するとしています。

  • OpenAI(ChatGPT)→ 2024年8月から対応開始。User-Agent名は「OpenAI」
  • Anthropic(Claude)→ 2024年末に対応。User-Agent名は「Anthropic」
  • Google(Gemini)やPerplexityなど→ 対応を検討中/一部対応済みの段階

今後、他のLLMベンダーも追随する可能性が高いため、llms.txtの記述を将来的に拡張できるよう設計しておくとよいでしょう。

IT管理者が取るべき対応とは

企業のWeb資産がAIの学習対象となることで、情報漏洩や競合への知見流出のリスクが発生する可能性があります。特にBtoB領域や専門的なナレッジを有する業種では、意図しない情報流通への備えが求められます。IT管理者としては、以下の対応を検討すべきです。

  1. 自社サイトの現状を棚卸しし、学習させたくないページを特定する
  2. llms.txtをルートに設置し、ベンダー別に制御ルールを明示する
  3. robots.txtやセキュリティポリシーとの整合性を確認する
  4. Web開発部門と連携し、更新・運用の体制を整備する
  5. 新たなAIクローラーへの追跡とファイル更新を定期的に行う

とくにCMSを利用している企業では、ファイルの自動生成や変更が行われることもあるため、ルールが意図せず消えるリスクにも注意が必要です。

llms.txt:まとめ

llms.txtは、生成AI時代における「情報の境界線」を明確に示すための第一歩です。今後もAIの学習手法やデータ取得方法は進化していきますが、llms.txtのようなルール整備は、企業が自らの知的財産や情報資産を守るために欠かせない対策になるでしょう。

Webサイトの運営方針や情報の扱いを見直すよい機会として、IT管理者はこのタイミングでllms.txtの導入を検討してみてください。

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監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。
「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

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