今や生成AIは、ビジネスの競争力を左右する重要な要素です。欧米の大手企業が開発したモデルばかりが注目される中、中国発の新星が現れました。
本記事では、Z.aiという中国のスタートアップが公開した最新オープンソースLLM「GLM-4.5」ファミリーの特徴や実力、そして日本企業やエンジニアにとってのメリットや活用のヒントを詳細に解説します。中国AIの“今”を知り、グローバルな視野でAI活用を広げたい方には必読の内容です。
中国発Z.aiとは何者か?グローバルAI競争の新たな主役

中国AIスタートアップ「Z.ai」は、これまで欧米中心だった大規模言語モデル(LLM)市場に新風を吹き込む存在として注目を集めています。
Z.aiが開発した「GLM-4.5」シリーズは、いずれもオープンソースで公開されており、商用利用も可能なApache 2.0ライセンスのもとで提供されています。これまで中国発のAI技術は、情報が限られていたり評価が割れていたりしましたが、Z.aiはその壁を打ち破る野心的な取り組みを進めています。
特筆すべきは、Z.aiのモデルが単なる研究用途やプロトタイプにとどまらず、実際のビジネスや開発現場での利用に耐える性能と柔軟性を備えている点です。例えば、GLM-4.5は米国のClaude 4やGemini 2.5 Proといった有名プロプライエタリモデルと肩を並べるほどの実力を持ち、さまざまなベンチマークで上位に食い込んでいます。
中国国内のみならず、グローバルな開発者コミュニティや企業にも訴求力を持つ理由は、まさにこの“実戦力”にあります。今後、AIの主戦場がグローバルにシフトしていく中、Z.aiのようなプレイヤーの台頭は見逃せません。
GLM-4.5/GLM-4.5-Air:二つのモデルがもたらす選択肢

Z.aiが公開したGLM-4.5ファミリーには、用途やニーズに合わせて選べる複数のモデルが用意されています。その中核をなすのが「GLM-4.5」と「GLM-4.5-Air」です。
GLM-4.5
GLM-4.5はフラッグシップモデルとして、複雑な推論タスクや高度なエージェント的行動、さらにプログラミング支援など幅広い用途に対応しています。米国の先進モデルと比較しても遜色ない性能を誇り、特定のベンチマークではClaude 4 Opusなどを上回るスコアを記録しています。
GLM-4.5-Air
一方のGLM-4.5-Airは、より軽量かつ省リソースで高速な推論が可能な設計となっており、コスト効率や運用負荷を重視するチームや中小規模のプロジェクトに最適です。
GLM-4.5ファミリーにはさらにGLM-4.5-XやGLM-4.5-AirX(超高速推論向け)、GLM-4.5-Flash(コーディングや推論タスク特化型・無料版)など、ニッチニーズに応じたバリエーションも揃っています。この多様性こそが、さまざまな開発シーンや企業の要望に応えられる大きな強みと言えるでしょう。
強力な機能群――PowerPoint自動生成から創造的コンテンツ制作まで

GLM-4.5ファミリーの最大の特徴は、その多彩な機能にあります。まず注目すべきは、「PowerPoint自動生成」機能です。ユーザーがタイトルやプロンプトを入力するだけで、AIがプレゼンテーション資料の構成から具体的なスライドまで自動で作成します。
これにより、会議準備や教育現場、社内レポート作成などの業務が大幅に効率化されるでしょう。従来の生成AIでも類似機能はありましたが、Z.aiはより自然で説得力ある資料を短時間で生成できる点が評価されています。
さらにGLM-4.5は、クリエイティブな文章生成や感情を踏まえたキャッチコピー作成、SNSやWeb用のブランドコンテンツ作成、さらには顧客サポートやファンコミュニケーション向けのバーチャルキャラクター開発やロールプレイ型対話システムまで、実に幅広いユースケースに対応可能です。
開発者向けにはコード生成やデバッグ補助、複雑な推論タスクへの対応も提供されており、単なるチャットボットを超えた“知的エージェント”としての活用が見込まれています。
また、GLM-4.5シリーズは「シンキングモード」と「ノンシンキングモード」の2つの動作モードを搭載しています。前者は複雑な推論や道具利用を伴うタスクに、後者は迅速な応答が求められるシナリオに適しています。これにより、用途に応じて最適な応答品質と処理スピードを両立できる点も大きな魅力です。
オープンソース×商用利用――Apache 2.0ライセンスの衝撃
GLM-4.5ファミリーが話題を集めているもうひとつの理由は、オープンソースとしての提供形態です。Apache 2.0ライセンスを採用しているため、個人・企業を問わず、モデルの利用・改変・再配布・商用展開が自由に行えます。これにより、大企業だけでなくスタートアップや教育機関、個人開発者にも門戸が広がっています。
実際、モデルのコードや重みデータはZ.ai公式サイトやHuggingFace、ModelScopeなどで公開されており、API経由での利用や自社インフラ上での自己ホスティングも可能です。開発者はAPIを通じてサードパーティアプリと連携したり、推論エンジンvLLMやSGLangとの統合もサポートされているため、既存のシステムやワークフローに柔軟に組み込むことができます。
また、GLM-4.5シリーズは商用利用も想定されているため、企業は自社サービスの一部としてAI機能を安全かつ迅速に実装できます。欧米発の商用LLMに比べ、ライセンス面での制約が少なく導入障壁が低い点は、今後のAI市場における選択肢の多様化に寄与するはずです。

コスト競争力と導入のしやすさ――API活用の現実解
AIモデルを現実のビジネスやサービスに組み込む際に避けて通れないのが「コストと導入のしやすさ」です。Z.aiはAPIを通じてGLM-4.5シリーズの利用を提供しており、その価格設定も注目に値します。
Z.aiのGLM‑4.5ファミリー(GLM‑4.5およびGLM‑4.5‑Air)のAPI料金を、最新情報に基づき整理した表です(すべて1,000,000トークンあたり)。
API料金
モデル名 | 入力トークン料金 (USD) | 出力トークン料金 (USD) | 備考 |
---|---|---|---|
GLM‑4.5 | 約 0.60 ドル | 約 2.20 ドル | Z.ai公式価格 |
GLM‑4.5‑Air | 約 0.20 ドル | 約 1.10 ドル | Z.ai公式価格 |
補足情報
- 第三者プラットフォーム(例:SiliconFlow)では、GLM‑4.5:入力 0.50 ドル/出力 2.00 ドル、GLM‑4.5‑Air:入力 0.14〜0.20 ドル/出力 0.86〜1.10 ドルと報告されています。
- CometAPIにおける非公式情報では、以下のような幅を持った料金プランが示唆されています。
- GLM‑4.5:入力 0.48 ドル/出力 1.92 ドル
- GLM‑4.5‑Air:入力 0.16 ドル/出力 1.07 ドル
- 他にX版やFlash版などの派生モデルも紹介されています
日本企業・開発者への示唆――グローバルAI時代の選択肢として

API経由での利用は、モデルのダウンロードや自己ホスティングに伴うインフラ構築・運用コストを抑えつつ、必要な分だけ柔軟にサービスへ組み込める点が大きなメリットです。トークンベースの課金体系は、利用規模に応じてコストを最適化できるため、スタートアップから大企業まで幅広いユーザー層に適しています。
加えて、APIドキュメントや多様な統合パス、迅速なサポート体制も整っており、初めてAIモデルを導入する企業や開発者でもスムーズに活用を始められるでしょう。
グローバル市場で通用する実力と拡張性
ここまで見てきたように、Z.aiのGLM-4.5ファミリーは単なる“安価な選択肢”や“オープンソースの一例”にとどまらず、グローバル市場で十分に通用する実力と拡張性を備えています。
日本の企業や開発者にとっても、今後のAI戦略において「中国発オープンソースLLM」の存在を無視することはできません。とくに、以下の特徴は、日本発のサービスや業務プロセスの効率化にも直結します。
- PowerPoint自動生成機能
- 多様なクリエイティブ用途への対応
- 高度な推論・エージェント機能
- 商用利用の自由度
既存の欧米モデルに比べてコストパフォーマンスや導入の柔軟性に優れる点は、限られたリソースで最大の成果を目指す日本の企業文化とも親和性が高いでしょう。
また、オープンソースという形態は、独自の業務フローやデータ、ローカルニーズに合わせたカスタマイズや微調整にも最適です。今後、日本市場向けに最適化されたアプリケーションやサービスが登場すれば、AI活用の幅はますます広がるはずです。
Z.ai「GLM-4.5」シリーズ:まとめ

AIモデルの選択肢が増え続ける中、私たちが重視すべきなのは「性能」や「コスト」だけではありません。グローバルな視野で情報をキャッチし、オープンソースならではの柔軟性やエコシステムを最大限に活かす戦略が、今後のAI時代の競争力につながります。
中国発のZ.ai「GLM-4.5」シリーズは、その象徴とも言える存在です。自社のビジネスや開発現場に合ったAIを選び、より創造的かつ効率的な業務変革を実現するために、今こそ世界のAI動向に目を向けてみてはいかがでしょうか。