AIアシスタントCopilotの落とし穴―情報漏洩を防ぐために知っておくべきこと

AI活用ブログ
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AI技術の進化により、企業ではさまざまな業務の効率化が進んでいます。その中でも、マイクロソフトが提供するAIアシスタント「Copilot」は、Microsoft 365と連携して文書作成、メール返信、議事録の要約などを自動化できる革新的なツールとして注目を集めています。

とくに人手不足や業務の属人化に悩む企業にとって、Copilotの導入は非常に魅力的に映るでしょう。しかしその一方で、見過ごされがちなのが情報漏洩のリスクです。Copilotは便利なツールである反面、使い方を誤ると、思わぬ“落とし穴”に陥る危険性をはらんでいます。

この記事では、Copilotを企業で導入する際にとくに注意すべき5つの情報漏洩リスクと対策を中心に、具体的な“落とし穴”の事例とともにご紹介します。


最近「社外に出せないデータで生成AIを使いたい」という相談をよく聞きます。ChatGPTの利用は社内で禁止されているそうです。セキュリティやコスト面が気になる企業には、社内のローカル環境で動かせる仕組みがあることはご存知ですか?

他の生成AIとの比較で浮かぶCopilotの強み

① 企業向け生成AIの5大比較

MiraLabによる比較では、ChatGPT、Gemini、Claude、Grokに加え、Copilotは「Microsoft 365との統合度」が最大の特徴で、日常業務に直接沿ったAIアシスタントと評価されています。

  • ChatGPT:推論力や機能が高い汎用AI
  • Gemini:長文読解やPDFなど文書解析に強い
  • Claude:自然な日本語の生成に優れている
  • Copilot:Word/Excel/Outlookなどに統合された業務支援に特化

② 社内利用でのセキュリティ・運用性

別の比較でも、ChatGPTとGeminiよりもCopilotはMicrosoft 365を既に導入している企業にとって導入・管理がしやすいと指摘されています 。とくにSSO管理、アクセス制御、監査ログ機能など、既存体制との親和性が高い点が評価されています。

Copilotは「既存Microsoft 365環境との親和性」と「情報セキュリティ体制の整備が行いやすい」点から、多くの日本企業にとって導入しやすいソリューションとなっています。

情報漏洩を防ぐために知っておくべき5つのポイント

他の生成AIよりも企業導入しやすいCopilotですが、情報漏洩に関してまったく危険がないわけではありません。より安全にCopilotを使うために以下の5つのポイントを押さえておきましょう。

1. 見落とされがちな社内データへのアクセス範囲

Copilotは、Microsoft 365に保存されている社内データ(SharePoint、OneDrive、メール、Teamsのチャットなど)にアクセスして、回答を生成します。この設計は非常に強力ですが、同時に社内でのアクセス権限設定が甘いと、Copilot経由で本来見せてはいけない情報が漏れる可能性があります。

たとえば、部門限定で共有されていたはずの資料が、Copilotを通じて他部門の社員にも内容の一部が生成文として出力されるといった事例は、想定しうる“落とし穴”です。

対策: 事前にファイル共有やアクセス制御の見直しを行い、「Copilotに読ませてもよいデータ範囲」を社内で定義しておくことが重要です。

2. プロンプト入力によるうっかり情報流出

Copilotは自然言語で指示を与えるAIです。そのため、社員がうっかり機密情報を含んだ形で入力してしまうリスクがあります。

たとえば、「今度のA社との契約書にある非公開の取引額を要約して」と入力した場合、その内容はCopilotの出力やログに記録され、場合によっては他のプロンプトに影響を及ぼす可能性もあります。

対策: 「AIに入力してよい情報・してはいけない情報」を明文化したガイドラインを整備し、利用者への定期的な教育を実施することが不可欠です。

3. 生成コンテンツの鵜呑みによる二次的な情報漏洩

Copilotは既存の社内情報をもとに文章を生成しますが、その内容が常に正確とは限りません。また、曖昧なプロンプトに対して推測を含んだ内容を出力することもあります。

このような出力をチェックせず、そのまま社外に提出したり、社内資料に引用してしまうと、誤った情報や機密事項が外部に流出するといった情報漏洩につながる危険があります。

対策: Copilotが生成した文章は、必ず人の目でチェックし、正確性と公開範囲を確認してから使用する運用ルールを徹底しましょう。

4. ログの取得・活用が不十分なまま運用が進行

Copilotの導入初期によくある“落とし穴”が、利用ログや操作履歴を記録していないことです。問題が発生しても「誰が・何を・いつ入力したか」が分からず、原因究明や責任の所在を特定できない事態に陥る可能性があります。

対策: Microsoft 365の監査ログやDefender for Cloud Appsなどを活用し、Copilotの利用履歴を自動的に記録・分析できる体制を整備しておきましょう。これにより、情報漏洩の兆候を早期に察知することも可能になります。

5. “とりあえず全社導入”によるルールなき利用拡大

Copilotは多機能で直感的に使えるため、「とりあえず全社で導入してみよう」という意思決定がなされがちです。しかし、ユースケースごとのセキュリティ要件や適合性を無視して導入を拡大すると、想定外の情報漏洩を引き起こすリスクがあります。

たとえば、法務部や経理部など、扱う情報の機密性が高い部門において、十分な検証やガイドラインなしにCopilotを使わせるのは危険です。

対策: まずは影響範囲の少ない部門・業務から段階的にCopilotを導入し、リスクや運用方法を検証した上で、全社展開するのが安全です。

Copilotは便利なツール。しかし「便利さの裏にあるリスク」を見逃さないこと

Copilotは、業務の自動化・効率化を進めるうえで非常に強力なツールです。とくにドキュメント作成やナレッジ検索といった定型作業においては、導入直後から目に見える成果を出すことが可能です。

しかしその一方で、Copilotを正しく制御しなければ情報漏洩を引き起こしかねない“落とし穴”がいくつも存在します。便利さだけに目を奪われず、次の3点を意識することが、Copilotを企業で安全に運用するカギになります。

  • 情報管理体制の見直し(アクセス権、共有設定など)
  • 利用者への教育とガイドライン整備
  • 監査ログなどの仕組みを使ったモニタリング体制の構築

まとめ:Copilot導入は「セキュリティの設計」から始める

AIアシスタントCopilotは、企業の業務変革を支える大きな武器になりますが、その導入は**単なる技術導入ではなく「セキュリティ設計を伴う経営判断」**でもあります。

情報漏洩という重大なリスクを回避しながら、安心してCopilotを活用するために、いま一度「どんな落とし穴が存在するのか」「それをどう防ぐのか」を企業全体で共有し、備えていくことが求められています。

安全なCopilot活用が実現すれば、AIの力を最大限に引き出しながら、ビジネスの競争力をさらに高めていくことができるでしょう。

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会社ではChatGPTは使えない?情報漏洩が心配?

ある日本企業に対する調査では、72%が業務でのChatGPT利用を禁止していると報告されています。社内の機密情報がChatGPTのモデルに学習されて、情報漏洩の可能性を懸念しているためです。

そのため、インターネットに接続されていないオンプレミス環境で自社独自の生成AIを導入する動きが注目されています。ランニングコストを抑えながら、医療、金融、製造業など機密データを扱う企業の課題を解決し、自社独自の生成AIを導入可能です。サービスの詳細は以下をご覧ください。

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監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。
「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

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