2025年、ついにAIエージェント元年へ
生成AIは2023~2024年に一気に注目を集めましたが、2025年にはさらなる進化が見込まれています。特に「AIエージェント」の台頭は、企業の仕事の進め方や個人の働き方を根底から変える可能性があります。
では、このAIエージェントとは何か? そして2025年に向けて、企業・個人はどのように備えるべきなのでしょうか。ここでは、生成AIの専門家である梶谷氏(POSTS代表)の解説や市場動向を踏まえ、2025年の超予測をまとめました。
「AIエージェント」と「AIアシスタント」は何が違うのか
アシスタントは“新人”、エージェントは“自立的リーダー”
AIはこれまで「○○Copilot」「Chat○○」など、人間が主導権を握り、AIが補助する“アシスタント”型が中心でした。しかし2025年から本格化するのは、ゴール(目標)だけを設定すれば、AI同士で分業し、必要な外部ツールも自動で連携してタスクを進める“自立型”のAIエージェントです。
アシスタント型が「指示待ち」であるのに対し、エージェント型は「何をすべきかを自分で考え、進めていく存在」。新人(アシスタント)から中堅・リーダークラス(エージェント)へと、AIの熟度が大きく変わろうとしています。
「分業」「上司・部下関係」をエージェント同士で実現
1つの大きなゴールに対して、複数のAIエージェントが分業したり、エージェント内で上下関係が生まれる動きも既に始まっています。人間が“AIチーム”をマネジメントする時代が来るといっても過言ではありません。
ただし、感情ケアや対人的な調整はAIにとってはまだ難しい面もあるため、人間が“上司”として全体を見渡し、責任を取る価値は引き続き重要視されるでしょう。
2025年に訪れる企業への3つのインパクト
1.定型業務の完全自動化が進む
AIエージェントは指示しなくても自立的に業務をこなすため、人間が関わらずとも“完結”してしまうタスクが急増します。たとえばカスタマーサポートや特定領域のデータ処理などは、企業内でAIだけが担当する時代へと移行すると見られます。
その結果、一部の領域では“人手が不要”になり、企業内では人員再配置やリスキリングが必須になってくるでしょう。
2.「AIオンボーディング」の巧拙が競争力を左右
AIエージェントに自社の情報やノウハウを学習させ、「うちの会社の文化」「商品・サービス」「競合状況」などをどうインプットするか――。
これを「AIオンボーディング」と呼び、新人に教育するようにAIに自社の知識を与えるプロセスが重要になります。オンボーディングを怠ると、AIから的外れな提案しか返ってこず、むしろ効率が落ちるリスクも。2025年以降の企業競争力は、「AIにどれだけ自社をしっかり学習させ、最大限活躍させられるか」にかかっていると言えるでしょう。
3.ソフトウェア(SaaS)の価値基準が大きく変わる
生成AIの進化は、「ソフトウェアを“つくる”コスト」を限りなくゼロに近づけます。1人の個人が、AIとエージェントを駆使してSaaSを作る、そんな世界がもうすぐ到来します。
これまで「ソフトウェアを作るには企業規模が必要」「長期開発が必要」とされていたものが、個人レベルでも短期間・低コストで実現可能になるため、SaaS市場は急激な競争・淘汰のフェーズに入っていくでしょう。
その結果、企業としては「ソフトウェア単体の優位性」だけでは戦えなくなり、顧客基盤やデータ、総合的なプロフェッショナルサービスなどを組み合わせる総合力が必要になります。
「考えるAI」がもたらすホワイトカラーへのインパクト
リーズニングモデルの登場が“本当のAI時代”を加速
従来の大規模言語モデル(LLM)は、問いに対して瞬間的・脊髄反射的に回答する「システム1」的な動きに近く、複雑な推論は苦手でした。
ところが昨今登場した「リーズニングモデル」は、「答える前に考える」プロセスをAIが内部で実行し、複雑な戦略立案や高度な思考をこなせるようになりました。これがシステム2に相当することで、いよいよ経営やコンサルの領域までAIが深く入り込む可能性が高まっています。
意思決定も人事評価もAIが担う時代へ
こうしたリーズニングモデルを搭載したAIエージェントが普及すると、企業の意思決定プロセスや人事評価にも大きな変化が訪れます。すでにAmazonでは、一部の労働者評価をAIが自動的に行っている事例も。今後は評価の基準にAIを導入する企業が増え、データドリブンでフェアな評価が可能になると期待されています。
一方、人間ならではの“バイアス”が消える一方で、「AIに評価されるためにどう行動するか」という新たな意識改革も必要になるでしょう。
“囲碁・将棋現象”が広がる
囲碁や将棋で、かつて「プロをAIが上回るなんて不可能」と言われていたのがあっという間に逆転したように、あらゆる知的生産活動で同様のことが起きると予想されます。「経営計画の立案」「新技術の発明」「クリエイティブ制作」も、これまで人間の聖域と思われていた分野までAIが浸食していく時代です。
ただし、人間にしかできない「問いを生み出す力」「責任を負う判断」こそが新たな価値になっていくでしょう。
マルチモーダルAIの普及で“AIと一緒に作業”が当たり前に
音声・画像・動画も理解し、リアルタイムに会話・コラボレーション
テキストだけでなく、音声や画像、動画までも取り込み・解析・生成が可能なマルチモーダルAIの実用化が急速に進んでいます。OpenAIやGoogleはすでに、ビデオ通話機能や画面共有にリアルタイムでAIが参加できるサービスを発表しており、“画面を一緒に見ながら” AIと会話し、作業するという姿が当たり前になるでしょう。
ウェアラブルやIoTに組み込まれ、先回りして業務を完遂
スマートグラスやIoTデバイスにAIが搭載されることで、リアル環境をAIが自動認識し、タスクを先回りで遂行してくれる未来が見え始めています。たとえば会議に自動参加し、議事録を作成するだけでなく、決まったアクションを自律的に進める――そうした機能が標準化していくでしょう。
このように、インターフェース面(AIエージェント)・モデル面(リーズニングモデル)・データ面(マルチモーダルAI)の“三位一体”で、AIの進化はますます加速度的に進みます。
どう備える? 企業・個人が今からやるべきこと
- AIオンボーディング体制の整備
- 自社のデータやノウハウをAIに学習させる仕組みを整える
- 社内のドキュメントや各種システムとの連携をAIにスムーズに渡せる体制を作る
- AIリテラシー向上・活用の促進
- まずは生成AIやAIエージェントを実際に触ってみる
- 既存のSaaSやコラボレーションツールに埋め込まれたAI機能を積極的に使う
- “問いを生み出す力”を磨く
- 答え(作業)を出すのはAIが得意になってきたからこそ、問いや企画力・責任を取る判断軸が重要
- 経営やチーム運営においても「何を聞くか」「どこにゴールを設定するか」の発想が成果を大きく左右する
2025年、真のDXが始まる
2025年は、生成AI時代の“本当の到来”といえます。AIアシスタントから自立型AIエージェントへ、サポート役から業務主体へ――。これまで人間が担っていたタスクの大半をAIがこなし、人間は「問を考え、責任を負い、相手を説得し、組織や社会を動かす」という領域へシフトしていくでしょう。
同時に、SaaSや既存ソフトウェアの価値観も大きく変革し、“誰もがAIを使いこなし、必要なサービスを素早く作れる”時代になります。囲碁・将棋のように「人間 vs AI」という図式を超えて、どのようにAIと共存し、協働するか。経営者もビジネスパーソンも、2025年を見据えた戦略立案・自己啓発がいよいよ本格的に求められます。
参考)【2025年超予測:生成AIと経営】AIエージェントとAIアシスタントの違い/企業への3つのインパクト/オンボーディングが重要/SaaSへの影響/