ローカルLLM vs クラウド型生成AI:企業が知るべき導入の分岐点

AI活用ブログ
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オープンソースLLMの進化とローカルLLMの導入拡大

生成AIは今や企業にとって欠かせない技術となりました。ChatGPTやClaudeといったクラウド型サービスが広く使われる一方で、自社環境にモデルを導入する「ローカルLLM」への注目も急速に高まっています。両者は単なる利用形態の違いにとどまらず、コスト・セキュリティ・運用性といった観点で大きな差があります。

本記事では「ローカルLLM」と「クラウド型生成AI」を比較し、企業が導入を検討する際に押さえるべきポイントを整理します。


最近「社外に出せないデータで生成AIを使いたい」という相談をいただきます。ChatGPTの利用は社内で禁止されているそうです。セキュリティやコスト面が気になる企業には、社内のローカル環境で動かせる仕組みがあることはご存知ですか?
OpenAIのオープンなAIモデル「gpt-oss」も利用いただけます。

クラウド型生成AIとは

クラウド型生成AIは、ベンダーが提供する大規模言語モデルにインターネット経由でアクセスする形態です。代表例は OpenAIのChatGPT、AnthropicのClaude、Google Gemini など。ユーザーはソフトウェアやハードウェアを意識せず、即座に最新のモデルを利用できるのが最大のメリットです。

主な特徴

  • 常に最新バージョンを利用可能
  • 初期投資が不要で、サブスクリプション課金で導入可能
  • インターネット接続前提のため、データを外部に送信するリスクがある

ローカルLLMとは

ローカルLLMは、企業が自社サーバーやオンプレミス環境、あるいはプライベートクラウド上で直接運用するオープンソースの大規模言語モデルです。代表例には Llama(Meta社)、Phi(Microsoft社)、Gemma(Google)、Mistral などのオープンソースモデルが挙げられます。

クラウド型のLLMモデルの性能と比較しても遜色のないオープンなモデルが多数登場しており、その進化のスピードは急激で、多くの会社がオープンソースのモデルの導入を検討し始めています。

主な特徴

  • データを社外に出さずに処理可能
  • カスタマイズや微調整(ファインチューニング)が可能
  • 導入や運用に必要なインフラ整備や人材確保が課題

比較表:ローカルLLM vs クラウド型生成AI

項目クラウド型生成AIローカルLLM
導入のしやすさすぐ利用可能。環境構築不要サーバー準備や運用体制が必要
初期コスト低コスト(利用料のみ)高コスト(GPU・ストレージ投資)
ランニングコスト利用量に応じた課金社内運用なのでコストは固定化しやすい
セキュリティデータが外部クラウドに送信される社内完結で高いセキュリティ確保
カスタマイズ性ベンダー依存。自由度は低いファインチューニングや独自拡張が可能
アップデート常に最新モデルを利用可能更新は自社で行う必要あり
スケーラビリティクラウドリソースで柔軟に対応サーバー能力に依存
主な用途一般的な情報収集、文章生成機密データ活用、業務特化型アプリ

企業における選択のポイント

1. セキュリティとコンプライアンス

企業が生成AIを導入する際、最も大きな懸念のひとつが データの取り扱い です。
クラウド型生成AIでは、入力データが外部サーバーを経由するため、万一の情報漏洩リスクが常に存在します。これが特に問題となるのは以下のような業界です。

  • 金融業界:顧客口座情報や取引履歴を取り扱う場合、社外への持ち出しは規制で禁止されているケースが多い。
  • 法務・知財部門:契約書や特許申請書のドラフトをAIに生成させる際、極秘情報が外部に流出するリスクは致命的。
  • 医療業界:患者データや診断記録は厳格な法規制下にあり、クラウド型AIへの入力は基本的にNG。

このような場合、ローカルLLMによる社内完結処理が不可欠です。一方、ニュース記事の要約やマーケティング文案の作成など、機密性が低い業務であればクラウド型を活用しても問題は少なく、効率化メリットを享受できます。

2. コストと運用リソース

コスト構造も両者を選ぶ際の大きなポイントです。

  • クラウド型生成AI
    • 初期費用が不要で、サブスクリプション課金による小規模導入が可能。
    • 例:中小企業がChatGPT Plusを導入し、営業担当者が提案資料作成に活用。少人数利用であればコストは月数千円レベルに収まる。
    • ただし利用者数やリクエストが増えると、月額数十万円規模に跳ね上がるケースもある。
  • ローカルLLM
    • GPUサーバーやストレージへの投資が必要で、初期コストは高額。
    • 例:大手メーカーが研究開発部門にローカルLLMを導入し、数千万規模のGPUサーバーを設置。ただし長期的にはライセンス費用が発生しないため、利用者が数百人規模に増えると クラウド型よりも低コストに収まる

ここで重要なのは、「利用者数」と「利用頻度」 を見積もることです。数人で試験的に使うのであればクラウド型が最適ですが、全社規模で展開するならローカルLLMのほうが長期的にROIを確保しやすくなります。

3. カスタマイズの必要性

生成AIを「自社専用ツール」に育てるかどうかも、選択の分岐点となります。

  • クラウド型生成AI
    • ベンダーが提供する機能をそのまま利用する形になるため、業界特化の知識や独自フォーマット対応は難しい。
    • 例:商社の営業担当が海外取引先向けに英語メールを自動生成。汎用的な翻訳・文書生成には十分。
  • ローカルLLM
    • ファインチューニングや追加学習により、業界特化の知識を学習可能。
    • 例:法律事務所が過去の訴訟資料や契約書データを学習させ、**「自社専用リーガルAI」**を構築。契約条項チェックの精度が向上し、弁護士の作業時間を大幅に削減。

「どこまで自社業務に合わせたいか」を基準に選択するとよいでしょう。

ローカルLLM vs クラウド型生成AI:選び方のフローチャート

【生成AI導入の目的を明確にする】

     ▼
 「機密データを扱うか?」

   ─ はい ──────────► ローカルLLM
   │              (金融、医療、法務など)
   │
   └ いいえ
     ▼
 「利用規模はどのくらいか?」

   ─ 少人数・限定的 ─────► クラウド型生成AI
   │              (営業資料、調査レポートなど)
   │
   └ 大人数・全社規模
     ▼
 「自社専用の知識やカスタマイズが必要か?」

   ─ はい ──────────► ローカルLLM
   │              (業界特化のナレッジ活用、独自AI)
   │
   └ いいえ
     ▼
             クラウド型生成AI
             (一般文書作成、翻訳、アイデア出し)

ハイブリッド活用という選択肢

実際の導入現場では「どちらか一方」ではなく、ハイブリッド活用が現実的です。

  • クラウド型:一般的な調査やドキュメント生成に利用
  • ローカルLLM:機密情報を扱うデータ分析やナレッジ検索に利用

このようにタスクごとに使い分けることで、コスト・利便性・セキュリティのバランスを最適化できます。

ローカルLLM vs クラウド型生成AI:まとめ

ローカルLLMとクラウド型生成AIは、それぞれに明確な強みと弱みがあります。

  • 即時性・利便性を重視するなら クラウド型生成AI
  • セキュリティ・カスタマイズを重視するなら ローカルLLM

企業が導入を検討する際には、「どの業務に、どのレベルのセキュリティや自由度が必要か」 を見極めることが重要です。生成AIの活用は単なる流行ではなく、今後の競争力を左右する基盤となります。自社に最適な形態を選び、戦略的に活用していくことが成功のカギとなるでしょう。

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会社ではChatGPTは使えない?情報漏洩が心配?

ある日本企業に対する調査では、72%が業務でのChatGPT利用を禁止していると報告されています。社内の機密情報がChatGPTのモデルに学習されて、情報漏洩の可能性を懸念しているためです。

そのため、インターネットに接続されていないオンプレミス環境で自社独自の生成AIを導入する動きが注目されています。ランニングコストを抑えながら、医療、金融、製造業など機密データを扱う企業の課題を解決し、自社独自の生成AIを導入可能です。サービスの詳細は以下をご覧ください。

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監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。
「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

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