Meta社の大規模言語モデル「Llama」の日本語対応とその可能性
近年、人工知能(AI)の分野では、大規模言語モデル(LLM)の発展が目覚ましく、その中でもMeta社が開発した「Llama」シリーズは特に注目を集めています。本記事では、Llamaの日本語対応の現状と、その技術的特徴、さらに日本国内での活用事例について詳しく解説します。
Llamaとは?
Llama(Large Language Model Meta AI)は、Meta社が開発したオープンソースの大規模言語モデルであり、自然言語処理の分野で高い性能を発揮しています。2023年2月に初版が発表され、その後も継続的に改良が加えられています。
Llamaの日本語対応の進展
当初、Llamaは主に英語データで訓練されていましたが、日本国内の研究機関や企業によって日本語対応が進められています。特に、ELYZA社が開発した「Llama-3-ELYZA-JP-8B」は、Llama 3を基に日本語の追加学習を行い、日本語性能を向上させたモデルとして注目されています。
日本語対応の強化
Llamaは元々英語に特化したモデルですが、日本国内の研究機関や企業が日本語対応を強化したモデルを開発しています。以下に主なモデルを紹介します。
①Llama 3.1 Swallow
東京工業大学と産業技術総合研究所が開発したモデルで、Llama 3.1をベースに日本語能力を強化しています。オープンな日本語LLMの中で、トップクラスの性能を持つと評価されています。
②Llama-3-ELYZA-JP-8B
ELYZA社が開発したモデルで、Llama 3を基に日本語の追加学習を行い、日本語性能を向上させています。80億パラメータのモデルでありながら、高い日本語生成能力を持つとされています。
③ELYZA-japanese-Llama-2-7b
ELYZA社がLlama 2を基に開発した日本語特化モデルで、商用利用も可能です。日本語の理解と生成に特化しており、前バージョンよりも精度と自然さが向上しています。
④Llama 3.1 70B
サイバーエージェントは2024年7月に「Llama 3.1 70B」を使った新たな大規模言語モデル(LLM)を公開しました。Llama 3.1 70Bをベースに、日本語データを追加学習させたものです。
Llamaの技術的な特徴
Llamaシリーズは、Transformerアーキテクチャを採用し、少ないパラメータ数で高性能を実現しています。最新のLlama 3では、80億(8B)から700億(70B)のパラメータを持つモデルが提供されており、特に日本語対応モデルでは、日本語データの追加学習や事後学習を行うことで、日本語の理解と生成能力を強化しています。
Llamaの日本国内での活用事例
Llamaは日本国内でも多くの企業によって活用されており、その具体的な事例は以下の通りです。
1. リコー
リコーは、AI活用支援の一環としてLlamaを導入しました。特に、モデルマージ技術を駆使して、日本語能力を向上させた大規模言語モデルを開発し、顧客サポートや業務効率化に役立てています。リコーが開発したLLMは、米Meta社が提供する「Meta-Llama-3-70B」の日本語性能を向上させた「Llama-3-Swallow-70B」をベースモデルに採用し、日本語と英語、中国語のオープンコーパスを追加学習させて開発されたものです。
2. 日本経済新聞社
日本経済新聞社は、経済情報に特化した大規模言語モデル「NIKKEI Language Model(NiLM)」を開発しました。このモデルは、約40年分の日本経済新聞や日経産業新聞、日経MJ、日経ヴェリタスなど、同社グループが著作権や使用権を持つ記事のみを学習データとして使用しています。
NiLMの開発には、Meta社のLlama 2やLlama 3のモデルがベースとして利用されており、最大700億パラメーターのモデルをファインチューニングしています。これにより、記事の要約や最新ニュースに関する知識など、社内独自タスクにおける性能改善が確認されています。
日本語対応が進んだLlamaモデルは、以下のような分野での活用が期待されています。
- 教育分野: 学生の質問に対する自動応答や、教材の自動生成などに利用されています。
- 医療分野: 医療文献の要約や、患者からの問い合わせ対応に活用されています。
- エンターテインメント: ゲームのシナリオ生成や、キャラクターの自動対話に応用されています。
今後の展望
Llamaの日本語対応はまだ発展途上であり、さらなる性能向上が期待されています。多言語対応やマルチモーダル化が進むことで、より多様な分野での活用が可能となるでしょう。また、オープンソースであることから、企業や開発者が独自のカスタマイズを行い、ニーズに合わせたモデルの開発が進むと考えられます。