Copilotの企業導入にあたっては、「セキュリティの確保」や「情報漏洩リスク」への懸念も少なくありません。とくに、AIが社内情報にアクセスし自動的に生成する仕組みである以上、その利用範囲やデータ管理体制を適切に整備しなければ、企業の信頼性に関わる重大な問題を引き起こしかねないのです。
本記事では、Copilotを企業に導入する際に直面しやすいセキュリティ課題と、その対策として有効な5つの実践的ポイントをわかりやすく解説します。
1. Copilotがアクセスする社内データの範囲を可視化する

企業でCopilotを導入する際、まず検討すべきなのが「AIがどのデータにアクセスできるのか」という点です。Copilotは、Microsoft 365環境内のファイル、メール、会話履歴などに広くアクセスし、必要に応じて情報を抽出・活用します。
この特性は業務効率の向上につながる一方で、機密情報が誤って出力されるセキュリティリスクも孕んでいます。社内フォルダのアクセス権限や共有設定を改めて見直し、Copilotに読み込ませてよい情報の範囲を明確に定義しておくことが、安全な運用の第一歩となります。
2. 入力内容のガイドラインを設けてセキュリティリスクを抑える

Copilotはプロンプトに入力された内容をもとに回答を生成するため、入力情報そのものがセキュリティリスクの原因となるケースもあります。たとえば、社外秘のデータや顧客情報、未公開の業績などを不用意に入力してしまうと、AIの出力やログに機密情報が残る可能性があります。
このリスクを回避するには、「AIに入力してよい情報・控えるべき情報」に関する社内ガイドラインを整備し、全従業員に周知する必要があります。Copilot導入にともなうセキュリティ教育の徹底が、事故を未然に防ぐカギとなります。
3. 情報保護機能と連携し、セキュリティレベルを強化する

Microsoftは、Copilotを安全に活用するための情報保護機能も提供しています。その代表例が「Microsoft Purview」です。Purviewでは、文書やデータを機密度に応じて自動分類し、アクセス制御や暗号化、追跡ログの保存を行えます。
企業でCopilotを導入する際には、このような情報保護ソリューションとの併用が極めて有効です。たとえば、データ損失防止(DLP)ポリシーを活用することで、誤送信や誤共有による情報漏洩を防止できます。
4. Copilotの利用ログを監査し、不正利用を検知する体制を構築する

Copilotの安全な運用には、利用履歴を把握できる監査体制も重要です。Microsoft 365の監査ログやDefender for Cloud Appsなどのセキュリティ機能を活用すれば、Copilotがどのような情報にアクセスし、どんな操作が行われたかを追跡可能です。
企業内でCopilotの活用が拡大するにつれ、利用ログの収集と定期的な分析が、セキュリティの維持に欠かせない仕組みとなります。とくに機密情報に関連する操作については、アラートやレポートによる可視化を行い、不審な活動を早期に検出できる体制を整えましょう。
5. 企業導入は段階的に。小さく始めて安全性を確認する

Copilotの機能は多岐にわたるため、企業全体に一気に展開するのではなく、段階的な導入が推奨されます。たとえば、最初はマーケティング部門やバックオフィスなど、機密性が比較的低く、効果が可視化しやすい業務から導入を始めましょう。
この段階でCopilotの動作特性や出力品質、セキュリティ上の懸念点を確認し、必要なルールやガイドラインを整備してから他部門へ展開することで、より安全で確実なCopilot導入が可能になります。
まとめ:Copilotの企業導入は「利便性とセキュリティの両立」が鍵

Copilotは、AIの力を活用して企業の業務効率を高める強力なツールですが、同時にセキュリティリスクも内包しています。企業導入を成功させるためには、利便性だけでなく、情報保護や運用ルールの整備にも注力する必要があります。
今回ご紹介した5つのポイントを着実に実行することで、Copilotのメリットを最大限に活かしつつ、企業としてのセキュリティ体制を確保した導入が実現できます。AI時代の業務基盤を支える存在として、Copilotを「安全に」「効果的に」活用していく準備を、今から始めてみてはいかがでしょうか。