OpenAIが提供するChatGPTは、ビジネス用途に特化した新機能「ChatGPT Record」をリリースしました。この機能により、会議の録音・文字起こし・要約が可能となり、さらにGoogle DriveやDropboxなどのクラウドサービスとの連携も強化されています。
また同時に発表されたのが主要クラウドストレージとの連携機能「Connectors in ChatGPT」です。
本記事では、今回追加された「ChatGPT Record」と「Connectors in ChatGPT」の概要とその活用方法を解説します。

ChatGPT Recordとは?

ChatGPT Recordは、ChatGPTのmacOSデスクトップアプリ上で利用できる新機能で、会議やブレインストーミング、音声メモなどを録音し、自動で文字起こしと要約を行います。録音は最大120分まで対応しており、生成された要約は編集可能な形式で提供され、メールや共有ドキュメントとして活用できます。
録音データは、文字起こし後に自動で削除され、プライバシーにも配慮されています。また、生成された要約はChatGPTの「Canvas」として保存され、後から検索や参照が可能です。
セキュリティとプライバシーへの配慮
ChatGPT Recordは、録音データを文字起こし後に自動削除し、生成された要約も既存のワークスペースの保持ポリシーに従って管理されます。また、録音機能はワークスペースの管理者が設定で無効化することも可能であり、組織のセキュリティポリシーに柔軟に対応できます。
ChatGPT Recordを利用可能なプランは?
ChatGPT Recordは、現在「ChatGPT Team」プランのユーザー向けに提供されており、macOSデスクトップアプリ上で利用可能です。将来的には、「Enterprise」「Edu」「Pro」「Plus」プランのユーザーにも展開される予定です。
2025年6月時点でのChatGPT Record(録音・要約機能)を利用できるプランを表形式でまとめましたのでご覧ください。
プラン名 | 利用可否 | 対応状況・備考 |
---|---|---|
ChatGPT Team | ✅ 利用可能 | 現在唯一の正式対応プラン。macOSアプリで録音・要約機能が有効。 |
ChatGPT Enterprise | ⏳ 対応予定 | 近く対応予定。管理者による録音許可設定あり。 |
ChatGPT Edu | ⏳ 対応予定 | 教育機関向け。正式対応時期は未定。 |
ChatGPT Pro | ❌ 未対応 | 現時点ではRecord機能は利用不可。 |
ChatGPT Plus | ❌ 未対応 | 同上。Record機能は未提供。 |
無料プラン | ❌ 未対応 | 録音・要約機能は利用不可。 |
補足情報
- 対応アプリ:現在はmacOS版ChatGPTアプリのみ対応(Windows対応は未発表)。
- 録音時間制限:最大120分まで録音可能。
- 保存形式:録音はテキストに要約され「Canvas」として保存。音声データは自動削除されます。
- セキュリティ:管理者は録音機能を無効化可能。ポリシー設定により制御可能です。
Connectors:クラウドと社内外の知識を統合する「コネクタ」機能の進化

また、ChatGPTでは、Google Drive、Dropbox、Box、SharePoint、OneDriveといった主要クラウドストレージとの連携機能「Connectors in ChatGPT」が備わり、ユーザーはChatGPT上で各種ドキュメントやスプレッドシートを検索・要約・分析できるようになりました。
たとえば「昨年の第1四半期の売上は?」と尋ねれば、クラウド内の該当ファイルを自動で特定し、情報を抽出して回答してくれます。
この連携では、ユーザーのアクセス権限や企業ポリシーに準拠したセキュリティ管理が徹底されており、Google Driveとの「同期コネクタ」機能を活用すれば、選択したフォルダのコンテンツをChatGPTに自動でインデックス化し、レスポンスの精度と速度をさらに高めることが可能です。
Connectors 利用プラン一覧
プラン名 | 利用可否 | 利用可能なコネクタ機能 | 備考 |
---|---|---|---|
ChatGPT Free | ❌ 利用不可 | なし | Connectors機能は利用できません。 |
ChatGPT Plus | ✅ 一部利用可 | Deep Research内での一部コネクタ(例:Gmail、Google Drive) | 同機能はDeep Research経由でのみ利用可能。 |
ChatGPT Pro | ✅ 利用可能 | Deep Research内でのコネクタ全般、カスタムコネクタ(MCP) | 個人環境でのカスタムコネクタ利用が可能。 |
ChatGPT Team | ✅ 利用可能 | 通常チャットでの検索コネクタ、Deep Research、同期コネクタ(Google Drive)、カスタムコネクタ(MCP) | ワークスペース全体でのコネクタ管理が可能。 |
ChatGPT Enterprise | ✅ 利用可能 | 通常チャットでの検索コネクタ、Deep Research、同期コネクタ(Google Drive)、カスタムコネクタ(MCP) | 高度なセキュリティ管理とカスタマイズが可能。 |
ChatGPT Edu | ✅ 利用可能 | 通常チャットでの検索コネクタ、Deep Research、同期コネクタ(Google Drive)、カスタムコネクタ(MCP) | 教育機関向けに特化した機能と価格設定。 |
利用可能なコネクタ例
- ストレージサービス: Google Drive、Dropbox、Box、OneDrive、SharePoint
- コミュニケーションツール: Gmail、Outlook、Microsoft Teams
- カレンダー: Google Calendar、Outlook Calendar
- 開発・業務ツール: GitHub、HubSpot、Linear
- カスタムコネクタ(MCP): 自社の内部データベースやアプリケーションとの連携が可能
注意点
- 地域制限: 一部のコネクタは、欧州経済領域(EEA)、スイス、英国では利用できない場合があります。
- セキュリティとプライバシー: Team、Enterprise、Eduプランでは、コネクタ経由で取得したデータはAIモデルの学習には使用されません。
- 管理者設定: Team、Enterprise、Eduプランの管理者は、ワークスペース内で利用できるコネクタを管理・制御できます。
Deep Research機能の大きな進化

さらに、こうした基本的なファイル連携にとどまらず、ChatGPTは「Deep Research(深層リサーチ)」という新たな機能を提供しています。
これは、HubSpotやLinear、Google Workspace、Microsoft製品など、クラウドストレージを超えたビジネスツールとの連携を通じて、社内外の情報を横断的に収集・分析し、実用的なリサーチレポートを自動生成するというものです。
新たなDeep Researchの特徴
Deep Researchという機能は以前もありましたが,2025年6月に発表されたDeep Researchは、いくつかの点で大きく進化しています。以前のDeep Researchと比較してみましょう。
過去のDeep Research
- 主な特徴:単一のクラウドドキュメント(例:PDFやGoogle Drive上のファイル)を読み取り、ChatGPT上で質問・要約・翻訳・編集などを行える機能。→ いわば「AIによるインタラクティブな資料読解」。
- 対象:Dropbox / Google Drive / OneDrive などの限定的なストレージサービス。
- 使い方:ファイルをChatGPTに読み込ませて、会話形式で情報を引き出す。
2025年6月以降の新しいDeep Research
主な進化点は以下のとおりです。
- 単一ファイルの分析から、複数データソースの統合的リサーチへ
- HubSpot、Linear、Google Workspace、Microsoft 365など業務ツールとも連携
- Web情報や社内データベースを組み合わせた自動レポート生成
- 「MCP(Model Context Protocol)」によるカスタムデータ連携の土台として機能
また、単なる資料読み取りだったツールの目的も、意思決定支援や戦略立案に直結する分析ツールへと進化しています
具体例
たとえばマーケティング担当者が、HubSpotのCRM情報とGoogle Drive上の競合分析資料、さらにWeb上のトレンド記事を組み合わせ、「今後の市場戦略」を分析させる――そんな高度な活用が現実のものとなっています。
Deep Research 利用プラン一覧
ChatGPTの「Deep Research」機能の利用可能なプランと、それぞれの利用内容を表形式でまとめました(2025年6月時点)。
プラン名 | 利用可否 | 月間利用上限(フル版 / 軽量版) | 備考 |
---|---|---|---|
ChatGPT Free | ✅ 利用可能 | 0 / 5 回 | 軽量版(o4-mini)限定。簡易なレポート生成が可能。 |
ChatGPT Plus | ✅ 利用可能 | 10 / 15 回 | フル版と軽量版の併用が可能。 |
ChatGPT Team | ✅ 利用可能 | 10 / 15 回 | チーム向けプラン。フル版と軽量版の併用が可能。 |
ChatGPT Pro | ✅ 利用可能 | 125 / 125 回 | 高度なリサーチが可能。 |
ChatGPT Enterprise | ✅ 利用可能 | 10 / 0 回 | フル版のみ利用可能。 |
Deep Research 機能の概要
- フル版: OpenAIのo3モデルを活用し、複雑なリサーチタスクに対応。詳細なレポートを生成します。
- 軽量版: o4-miniモデルを使用し、フル版よりも簡易なレポートを迅速に生成します。
MCP(Model Context Protocol)による連携
この背景には、「MCP(Model Context Protocol)」と呼ばれるプロトコルの存在があります。MCPを通じて、企業は自社専用のデータベースや業務アプリケーションをChatGPTと直接連携させることが可能となり、AIによる意思決定支援の精度が飛躍的に向上します。
たとえば社内BIツールやERP、カスタムCMSなどと接続すれば、経営層が求める「即時の意思決定材料」を自然言語で呼び出せる環境が構築できます。
このように、ConnectorsとDeep Research、そしてMCPは単なる検索補助ではなく、「企業知の統合インターフェース」としての役割を担いはじめています。IT担当者にとっては、業務ごとの情報分断を解消し、部門間のナレッジ活用を横断的に推進するための、極めて重要な基盤となるでしょう。
ChatGPT Recordで会議録音が変わる!まとめ

ChatGPT Recordは、会議の録音・要約機能とクラウドサービスとの連携を通じて、企業の業務効率化を支援する強力なツールです。IT担当者は、これらの機能を活用することで、情報の整理・共有・活用を促進し、組織全体の生産性向上に寄与することが期待されます。