AI時代にプログラマーは必要なのか?プログラミング言語は不要?

近年、大規模言語モデル(LLM)の急速な発展とともに、私たちの生活・仕事のさまざまな場面で自然言語による指示で高度な処理を実行できる環境が整いつつあります。その代表例がChatGPTなどの対話型AIです。こうした流れから「そもそもプログラミング言語は不要になるのでは?」「プログラマーという職業はどうなってしまうのか?」といった疑問が投げかけられるようになりました。

この記事では、下記のような観点から、この疑問を掘り下げていきます。

  1. 自然言語がそのまま“プログラミング言語”となる未来像
  2. プログラミング言語が不要になるのか?
  3. プログラマーの役割はどのように変化するのか?

1. 自然言語がそのまま“プログラミング言語”となる未来像

ChatGPTなどのLLMは、私たちが普段使っている日本語や英語といった「自然言語」を理解し、コードを自動生成したり、手順書を作成したりできます。
ある程度の要件を自然言語で伝えるだけで動作するコードが返ってくるのを目にすると、「プログラミング言語を使わずとも、自然言語だけでソフトウェアの開発ができるのではないか」と感じる方も多いのではないでしょうか。

実際、自然言語によるプロンプト(指示文)でコード生成を行う場面は、今後さらに広がっていくでしょう。こうした状況では「AIにどう的確に指示を与えるか」という、いわゆるプロンプトエンジニアリングという能力が注目されています。あいまいな表現で指示をすると、思わぬ動作やエラーにつながりかねないため、「自然言語を使いこなす」力が今まで以上に求められるのです。


2. プログラミング言語は不要になるのか?

一方で、「プログラミング言語は本当に不要になるのか?」という問いに対しては、依然としてニーズは残るという見方が強いようです。なぜなら、LLMが旧来型のソフトウェアや外部システムに指示を出す際、バックエンドではPythonやJavaなどのプログラミング言語を介して実行処理を行っているからです。

自然言語によるやりとりがフロントとして顕在化しても、その裏側では既存のプログラミング言語の実行基盤が動いているケースがほとんどです。さらに、大規模ソフトウェア開発などでは、自然言語ベースの曖昧さを排除し、厳密な仕様と制御を行う必要があります。大量のユーザや取引が関連する金融システムやインフラ系のシステムでは、自然言語とプログラミング言語の橋渡しをするために、引き続きプログラミング言語が重要な役割を担うと考えられます。


3. プログラマーの役割はどう変化するのか?

では、こうした潮流の中でプログラマーの役割はどのように変わっていくのでしょうか。AIによってコードの多くが自動生成されるようになったとしても、完全にプログラマーの仕事がなくなるわけではないでしょう。むしろ以下のように新しい役割が注目されます。

  1. プロンプトエンジニアリング・要件定義能力の強化
    • どのように自然言語で要件を整理し、AIに的確な指示を与えるか。
    • 曖昧さや誤解を生まないための“言語運用力”が重要。
  2. AIが生成したコードの検証・デバッグ
    • AIが生成したコードが正しく動作するか、セキュリティ上問題はないかなどのチェックが欠かせない。
    • 適切なテストやリファクタリングができる人材が求められる。
  3. ビジネス要件・システム設計の深い理解
    • ソフトウェアはあくまで手段であり、ビジネス課題やユーザのニーズを正しく汲み取る役割は人間に残される。
    • プログラムを書く能力だけでなく、業務や運用プロセス、ビジネスモデルなどへの理解が大切になる。
  4. 複雑なシステム基盤や低レイヤーの開発
    • 大規模な基幹システムや組込みシステムでは、低レイヤー言語(C/C++など)や特殊なシステム制御が必須な場面も多い。
    • こうした分野の専門知識と実装力は、引き続き重宝されると予想される。

まとめ

  • 自然言語がソフトウェアを操る“言語”となる流れは加速する。
    ただし、裏側でAIが既存のプログラミング言語を利用しているため、プログラミング言語そのものが即座に不要になるわけではない。
  • プログラマーの需要は依然として続く。
    AIの進化によってコーディングの多くが自動化されても、要件定義・システム設計・検証・運用などの工夫や専門知識が不可欠となる。
    特に、プロンプトエンジニアリング、ビジネス要件とのすり合わせといった新しい領域での活躍が期待される。

AIの発展による社会の変化は今後さらに加速していきます。しかし、どれほどAIが進化したとしても、その性能を引き出し、有効活用するうえでは人間の高度な理解やコミュニケーションスキルが必要となるでしょう。技術の担い手としてのプログラマーが果たす役割は、むしろこれまで以上に重要性を増すかもしれません。

今後は、プログラミング言語を「使う」ための能力と同時に、「どのようにAIに適切な指示を与えるか」という能力が求められます。AI時代においても「プログラミング言語は不要」とまでは言えませんが、プログラマーの役割や求められるスキルは大きく変わっていくことでしょう。

監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。

「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

高セキュリティと低コストを実現するローカルLLM

ある日本企業に対する調査では、72%が業務でのChatGPT利用を禁止していると報告されています。社内の機密情報がChatGPTのモデルに学習されて、情報漏洩の可能性を懸念しているためです。

そのため、インターネットに接続されていないオンプレミス環境で自社独自の生成AIを導入する動きが注目されています。ランニングコストを抑えながら、医療、金融、製造業など機密データを扱う企業の課題を解決し、自社独自の生成AIを導入可能です。サービスの詳細は以下をご覧ください。

いますぐサービス概要を見る▶▶▶