― IT管理者が押さえるべき選定基準とは?
ChatGPT、Gemini、Copilot、Claude──多くの生成AIツールが登場する中、企業のIT管理者にとって頭を悩ませるのが「どのAIツールを導入すべきか?」という選定の問題です。社内で生成AIを活用することは、業務の効率化や意思決定の迅速化、ナレッジ活用の高度化など、さまざまな恩恵をもたらします。しかし、導入時の判断を誤ると「期待した成果が出ない」「セキュリティリスクを招く」など、取り返しのつかない事態に発展するおそれもあります。
本記事では、生成AIツールを選ぶ際に押さえておくべき7つのポイントを、IT部門の視点でわかりやすく解説します。
1. 利用目的を明確にする

最初に確認すべきは、「何のために生成AIを使いたいのか」という目的です。たとえば、営業部門で顧客対応のスクリプトを作成したいのか、企画部門で新規アイデアをブレストしたいのか、それともナレッジベースから社内ドキュメントを検索したいのか。利用目的が異なれば、適切なツールも変わってきます。
たとえば「社内資料の要約や分析」が主目的であれば、文書処理能力に優れたChatGPTやClaudeが向いています。一方、「Office製品との連携」を重視するならMicrosoft Copilotが候補になります。利用部門のニーズをヒアリングし、想定ユースケースを具体的にすることが選定の第一歩です。
2. セキュリティと情報管理の仕組みを確認する

生成AIはクラウド型で提供されることが多いため、情報の取扱いや外部送信の仕組みに注意が必要です。特に以下の点は事前に確認しておくべきです。
- 入力データがAI学習に使われるかどうか(オプトアウトの可否)
- データの保存期間や暗号化レベル
- アクセス制御や監査ログの有無
企業向けプランを提供しているサービス(例:ChatGPT Enterprise、Gemini for Workspaceなど)では、より厳格な情報管理が保証されている場合があります。業務で使う場合は、個人向けの無償ツールではなく、法人契約を前提としたツールを選びましょう。
3. 社内システムや既存ツールとの連携性を確認する

生成AI単体の性能だけでなく、社内のIT環境との親和性も重要です。Microsoft 365環境で業務が構成されている企業であれば、Microsoft Copilotとの統合は非常にスムーズです。また、Google Workspaceを利用している場合はGemini for Workspaceの連携が便利です。
さらに、Slack、Notion、Salesforceなどの業務ツールとのAPI連携やコネクタ機能が充実しているかどうかも、導入後の運用効率を大きく左右します。IT部門が連携設定を担当することが多いため、事前の検証やPoC(概念実証)を推奨します。
4. 多言語・多機能の対応範囲をチェックする

企業によっては海外とのやりとりや多言語対応が求められることもあります。生成AIが対応している言語、翻訳精度、そして「画像生成」「音声認識」「PDF解析」などの追加機能にも注目しましょう。
ChatGPTやClaudeは英語での性能が非常に高い一方、近年では日本語での精度も大きく向上しています。また、GeminiはGoogleの検索インフラを活用した情報精度に強みがあります。必要な機能がそろっているか、将来的な拡張性も考慮しましょう。
5. コスト構造と課金方式を把握する

生成AIツールの課金体系はツールごとに異なります。主な方式は以下の通りです。
- 月額定額(例:ChatGPT Plus、Copilot for Microsoft 365)
- トークン課金(例:OpenAI API、Anthropic Claude API)
- ユーザー数ベースのライセンス(例:Enterpriseプラン)
一見安価に見えるプランでも、実際の利用量が多くなるとコストが跳ね上がるケースもあります。トライアル期間中に利用状況を分析し、実際にかかる費用を試算しておくことが重要です。
6. ガバナンスと利用ポリシーを整備できるか

ツールの選定と同時に、社内での使い方を統一する「ガイドライン」の整備も欠かせません。たとえば以下のような項目をあらかじめ定めておくと、リスクの低減につながります。
- 入力してはいけない情報の種類(機密・個人情報など)
- 使用可能なAIツールのリスト
- 誤生成や不正確な出力の取り扱いルール
ツールによっては、社内向けの権限管理やポリシー設定が充実しているものもあります。IT部門としては、導入後の管理負荷を見越して、ガバナンス機能の有無も評価軸に入れるべきです。
7. サポート体制とアップデート頻度を確認する

生成AIツールは進化が早く、機能追加や精度向上が頻繁に行われます。そのため、選定時にはサポートの充実度とアップデート体制もチェックしておくと安心です。
- 日本語対応のサポート窓口があるか
- ユーザー向けの導入資料やFAQが用意されているか
- アップデート情報や障害報告の共有があるか
特に初期導入時はユーザーからの問い合わせが急増するため、ベンダーによる支援の有無が現場の負担を大きく左右します。
生成AI選び7つのポイント:まとめ

生成AIは非常に強力なツールである一方、目的と手段がずれると期待外れに終わるリスクも高い分野です。IT管理者が的確な選定を行うことで、現場への定着と効果最大化につながります。
今回紹介した7つのポイントを参考に、自社の状況に合った生成AIツールを選び、持続的な運用につなげていきましょう。