専門家並みの知識が欲しいのに、調べる時間が足りない……そんなジレンマを感じたことはありませんか?
この記事で紹介するChatGPTの「Deep Research」は、そんな悩みを一挙に解決する新時代のAIエージェント。数時間から数日のリサーチをわずか数分で完了し、専門的なレポートまでまとめてくれるという画期的な機能です。
「Deep Research」とは何か?
米国のOpenAIがChatGPT Pro(1か月200ドル)向けにリリースした新機能「Deep Research」は、AIエージェントとしてウェブ上の膨大な情報を“深く”調べ、専門家レベルの調査レポートまで生成してくれるものです。
ChatGPTサイトやアプリの入力欄下に表示されるオプション「詳細なリサーチ」から起動でき、将来的にはChatGPT Plus、Team、Enterprise、Eduプランにも順次拡大予定となっています。
“専門家が何日もかける調査”を数分で
OpenAIのCEOであるSam Altman氏は自身のSNS「X」で「これはまるで“超能力”だ。専門家が何日もかける作業を瞬時にやってくれる」と評しています。また、ビジネス、医療、金融、マーケティングなど幅広い領域に対応できることから、多くのユーザーが作業時間とコストを大幅に削減できると期待されています。
技術の中核:Oシリーズとo3モデル
「Deep Research」はOpenAIが独自に開発中の推論モデル“Oシリーズ”の最新版「o3」を活用しています。数日前に公開された小型版「o3-mini」よりも大規模かつ高性能なフルモデルが使われており、テキストやPDF、画像といった多様な情報を統合して分析できるのが特徴です。
OpenAIのFrontiers Research責任者であるMark Chen氏は、YouTube上のライブストリームにおいて「Deep Researchはインターネット上の情報を複数ステップで調査し、見つけた情報を統合しながら論理的に推論するモデルだ。新しい知識を発見・作成する“自律的な学習”に向けた重要な一歩」と語っています。
AIエージェントとしての可能性
本機能は、数日前にリリースされたマウス操作やウェブブラウザを自動制御するエージェント「Operator」に続く、OpenAI公式の第2弾AIエージェントです。OpenAIのJoshua Achiam氏は、「これらのエージェントが“AIエージェント”の概念を具体的に示している。ツールを使いこなし、複数のタスクを自動的に実行する汎用AIこそエージェントの真髄だ」とコメントしています。
思考しながら調査タスクを進める
実際にDeep Researchを使用してみると、AI時代が考えながら、ひとりごとをつぶやくようにリサーチの作業を進めているのを見ることができます。「あのサイトを見に行くと良いかもしれない」とか「そうか、この会社は〇〇に力を入れているのか」とか、気付きや学びを吐露しながら進めてくれる点に知性を感じます。
“Humanity’s Last Exam”で新たな最高スコアを記録
AIモデルの性能を測る新たな指標として注目されている「Humanity’s Last Exam」で、Deep Researchは26.6%という過去最高の正答率を叩き出しました。この試験は考古学で使われる古代文字の翻訳など、100以上の領域から合計3,000問が出題される極めて難易度の高いベンチマークです。
Model | 正答率 (%) |
---|---|
GPT-4o | 3.3 |
Grok-2 | 3.8 |
Claude 3.5 Sonnet | 4.3 |
Gemini Thinking | 6.2 |
OpenAI o1 | 9.1 |
DeepSeek-R1* | 9.4 |
OpenAI o3-mini (medium)* | 10.5 |
OpenAI o3-mini (high)* | 13.0 |
OpenAI deep research** | 26.6 |
OpenAIの研究者Isa Fulford氏は「ブラウジングや複雑な推論タスクをエンドツーエンドで学習し、リアルタイムで情報に応じて計画を修正したり、行き詰まったらバックトラックしたりする能力を獲得した」と解説しています。
具体的な活用事例:個人の医療相談
OpenAIのGovernment Go-to-MarketリードであるFelipe Millon氏は、妻の両側性乳がん治療に関わる重要な意思決定の際、「Deep Research」によるサポートが大きな助けになったと自身のSNSで語りました。治療方針のグレーゾーンに悩む中で、病理報告書をアップロードしたところ、学術論文や関連研究の引用を含んだ詳しい分析が瞬時に得られ、医師の見解と照らし合わせることで治療方針の確信を深めたといいます。
「専門家を否定するのではなく、提案された研究をひとつひとつチェックしていくことで、判断材料を圧倒的に増やしてくれた」とのことで、AIが医療の意思決定を支援する一例として注目を集めています。
注意点と今後の展望
もちろん、現時点でのDeep Researchにも限界やリスクがあります。OpenAI側は「情報ソースのチェックや正確性の検証は依然として必須。完全に鵜呑みにせず、適宜裏づけを取ってほしい」と強調しています。
また、モデルが長時間の自律思考を行うためリソース負荷が大きい点も課題で、今後はアルゴリズムの最適化や利用可能領域の拡大が検討されるとのことです。企業向けには独自データセットとの連携も視野に入っており、特定分野のリサーチや高度な意思決定サポートにも活用が期待されています。
Deep Research:まとめ
「Deep Research」は、多ステップでのウェブ検索からソースの引用、レポート生成までを自動で行う真の“AIエージェント”の先駆け的存在といえます。ビジネスのレポート作成や医療情報の検索、製品比較といったあらゆる知的業務を効率化し、新しい情報収集の形を切り開く可能性を秘めています。
まだ発展途上の機能ではあるものの、専門家レベルの知見をいつでも呼び出せる利点は非常に魅力的です。使う側は最終的な意思決定の責任を持ちつつ、うまく活用すれば時間・コストともに大幅な節約をもたらしてくれることでしょう。