Copilot StudioがもたらすAI自動化の新時代「Computer Use」機能の全貌とインパクト
どうすればより実用的にAIを活用できるのか？
Microsoftが発表したCopilot Studioの「Computer Use」機能は、まさにその答えとなる可能性を秘めています。この記事では、Copilot Studioの新機能がもたらす変化や活用例、他社との違い、導入時の注意点まで詳しく解説します。
Copilot Studioの「Computer Use」機能とは何か
2025年4月、MicrosoftはCopilot Studioに「Computer Use」と呼ばれる新機能を追加しました。これは一言でいえば、「AIエージェントが人間のようにパソコンを操作できる」技術です。AIがウェブサイトやデスクトップアプリケーションのボタンをクリックしたり、メニューを選択したり、テキストボックスに文字を入力したりといった、人間が普段行う“手作業”を肩代わりしてくれます。
従来、AIによる業務自動化には大きな制約がありました。それは「API（アプリケーション・プログラミング・インターフェース）」の存在が必須だったことです。
しかし現実には、多くの業務用アプリやウェブサービスにはAPIが提供されていません。この「APIの壁」がAI活用の可能性を狭めていたのです。
APIがなくても業務自動化
「Computer Use」機能はこの課題を根本から解決します。APIがなくても、人間が操作できるアプリであれば、AIエージェントも同様に画面上の要素を認識し、操作できるようになりました。これはまさに、AI活用における革命的なブレイクスルーといえるでしょう。
Microsoftのビジネス＆インダストリー部門Copilot担当副社長、チャールズ・ラマナ氏は「人が使えるアプリなら、エージェントも使える」と語ります。この仕組みはOpenAIの「Operator」やAnthropic Claudeの同名機能にも近いですが、Microsoft独自の強みを活かしたビジネス向けプラットフォームとして注目されています。
AIが実現する現実的な業務自動化のシナリオ
「Computer Use」機能の登場によって、AIがどんな業務を自動化できるのでしょうか。Copilot Studioでは、データ入力やマーケットリサーチ、請求書処理など、多岐にわたる作業の自動化が現実のものとなります。
具体例１：経理作業の自動化
たとえば経理部門の日常業務を考えてみましょう。毎月末、担当者は数百件の請求書PDFを開き、金額や取引先、日付などを会計システムに一つひとつ転記していきます。この作業には膨大な時間と集中力が必要です。
「Computer Use」機能を活用すれば、AIエージェントがPDFを開き、必要な情報を読み取り、会計システムの適切な項目に入力するまでを自動で行います。人的ミスの削減はもちろん、8時間かかっていた作業が1時間程度に短縮される可能性もあるのです。
具体例２：市場調査の自動化
市場調査の分野でもAIの活躍が見込まれます。ウェブ上のさまざまなサイトを巡回し、価格や在庫情報を収集・整理するなど、これまで人手に頼っていた「調査系」業務も自動化の対象となります。
さらに、「Computer Use」機能はアプリやウェブサイトのボタンや画面の変化を自動で検知し、変化に柔軟に対応できる点も大きな特徴です。これにより、システムやUIがアップデートされた時もAIエージェントの作業が途中で止まるリスクが減り、安定した自動化運用が可能になります。
他社AIとの違い――Copilot Studio独自の強み
Microsoftの「Computer Use」機能は、OpenAIやAnthropicなど他社が提供する類似サービスと何が違うのでしょうか。
最大の特徴は、Copilot Studioがもともと企業向けの業務自動化プラットフォームとして設計されている点です。Microsoft 365やPower Platformとの親和性が高く、既存の業務システムやアプリとの連携がスムーズです。
AIエージェントの行動範囲は自由に設計可能
さらに、Copilot Studioはより多くのウェブサイトやアプリケーションと連携できる柔軟性を備えています。OpenAIの「Actions」などは、現時点で利用できるパートナーサイトが限定されていますが、Copilot Studioでは開発者が自社のニーズに合わせてAIエージェントの行動範囲を自由に設計できるのがポイントです。
また、Microsoftはエンタープライズ領域のセキュリティやデータ管理に定評があり、Copilot StudioのAIエージェントもその恩恵を受けています。企業データを安全に扱いつつ、業務自動化を進められるため、特に大規模組織や金融・医療など規制の厳しい業界でも導入が進むことが予想されます。
導入するうえでの注意点と今後の課題
「Computer Use」機能は非常に魅力的ですが、導入にあたってはいくつか注意すべき点もあります。まず、AIが画面操作を行う際には、アプリやウェブサイトのUI（ユーザーインターフェース）が大きく変わると、AIエージェントが正しく認識・操作できなくなるリスクがあります。
Microsoftは画面の変化を自動検出する仕組みを実装していると説明していますが、複雑な業務フローや頻繁に改修が入るシステムでは慎重な検証が不可欠です。
AIによる不正操作や誤操作の可能性も？
AIエージェントが行った操作の記録や監査がどこまで厳密に取れるのかも重要なポイントです。業務自動化が進むほど、AIによる「不正操作」や「誤操作」が業務全体に及ぼす影響も大きくなります。運用開始後も、定期的なモニタリングやエージェントの行動ログの確認、必要に応じた再学習・修正が求められるでしょう。
さらに、AIが人間の代わりに業務を担うことへの現場の心理的な抵抗も無視できません。AIと人間が協働する新しい働き方をどう定義し、現場に根付かせていくか――現場教育や業務設計の見直しも今後の大きな課題です。
Microsoft Copilot Studioの「Computer Use」：まとめ
AIが“パソコンを使う”時代は、すでに始まっています。Microsoft Copilot Studioの「Computer Use」機能は、APIの壁を超え、より現実的で柔軟な業務自動化を可能にしました。今後、AIと人間が協力して新しい価値を生み出す現場がますます増えるはずです。技術と制度、そして働く人の意識変革――三位一体で進化するAI時代の波を、私たち自身の力で乗りこなしていきましょう。
