調査はAIにおまかせ!Deep Researchで変わるリサーチの新常識
突然ですが、「複雑な研究テーマをたった30分ほどでまとめてくれるAIがあったら便利だ」と思いませんか?
忙しい日々の中、論文やニュース、プレスリリースなど多岐にわたる情報源をチェックするのは大変です。そこで登場したのが、OpenAIの新ツール「Deep Research」。本記事では、実際にDeep Researchを試してみた結果を共有し、どんな場面で役に立つのか、そしてどのような課題が残されているのかを具体的に紹介します。「AIが代わりにリサーチをまとめてくれる時代」をリアルに感じたい方必見の内容です。
Open AIのDeep Researchとは?
OpenAIが2023年2月2日に発表した「Deep Research」は、「調査を依頼すると、約30分ほどかけてウェブをクロールし、レポート形式にまとめて報告してくれる」というタイプのエージェントです。
Googleが1月にリリースした同名製品や、Perplexityが2月14日に出したリサーチ製品と同様に、テーマを与えると自動的に関連情報を集約してくれるのが特徴です。
例1. 「対称性と機械学習」のリサーチテスト
まずは「対称性と機械学習(特にニューラルネットワーク)」を依頼し、Deep Researchの実力を測ってみました。すると、約13件のウェブ上の情報を参照し、9分ほどでレポートを作成。すでに誰かがわかりやすくまとめた記事があると、その内容をきちんと拾ってくれるため、精度は高めです。
さらに、実際に論文も引用するなど、興味深い視点や研究動向を整理してくれました。既存の知識を再確認するだけでなく、「こんな最新論文もあるのか」と新しい気づきを得られる点は大きなメリットといえます。
例2. MoE(Mixture of Experts)研究の調査
次に、最新のMoE研究についてDeep Researchにまとめてもらいました。関連論文を参照して「こうすればうまくいく」などの成果を紹介してくれた一方、実際の運用では再現性の問題や落とし穴がある場合があります。これは通常の調査と同じく、AIが拾える情報には限りがあるということです。人間が体験や検証を重ねながら得られる知見や暗黙知までは、まだAIが完璧に補えないという現状が再確認されました。
例3. Preferred Networksのリサーチ
最後に、日本企業「Preferred Networks(PFN)」について深掘りリサーチを依頼。公式サイトやWikipediaだけでなく、プレスリリースなどの第三者情報からもまとめを作成し、PFNの研究成果や企業像、強みや弱みなどを客観的な視点で可視化してくれました。
ただし、人物名や役職などは誤りが混じるケースもあり、まだ「ハルシネーション」が発生しやすい面があります。とくにウェブ上の言及が少ない企業の場合は誤情報が入りやすいようです。
Deep Researchの魅力と課題
こうした3つのリサーチを試して感じたのは、Deep Researchが情報収集の手間を大幅に削減してくれるという点です。情報源が豊富なテーマならば、短時間で論文やニュースなどを体系的にまとめてくれるため、初心者が全体像を把握するのにも役立ちます。
一方、まだ完全に正確な情報だけを抽出できるわけではなく、誤った人物名や役職などが含まれることもあります。また、実験的な研究分野においては、論文の再現性や実運用での課題を見落としがちになるなど、人間の最終判断や検証が必要不可欠です。
今年はエージェント戦国時代へ
Deep Researchのような「調査レポート作成系エージェント」は、すでにGoogleやPerplexityからも登場しており、今後さらに増えると予想されます。おそらく各エージェントは特徴的なアルゴリズムやUI、取得ソースなどで差別化を図り、競争しながら進化を遂げるでしょう。
私たちとしては、これらのAIエージェントを上手に使いこなし、人間のリサーチ力を補完することが大切になってきます。最新情報をいち早く入手し、用途に応じて最適なエージェントを選ぶのが、これからの“リサーチ上級者”への道と言えそうです。
参考)メールマガジン「岡野原大輔のランチタイムトーク」「OpenAIのDeep Researchを試してみた」