DataGemmaとは?Google最新モデルでハルシネーションに対抗

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DataGemmaが切り開くLLMの新時代

近年、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)の普及により、AI生成の文章は格段に自然になりました。しかし、誤った情報を堂々と提示する“ハルシネーション”に悩む人も多いのではないでしょうか。

本記事では、Googleが開発した新たなオープンモデル「DataGemma」に注目し、その仕組みや具体的な活用事例、競合モデルとの差別化ポイントを解説します。読み終える頃には、LLMの精度と信頼性を高める方法が明確になり、ビジネスや研究への導入を検討する際の大きなヒントを得られるでしょう。「LLMの誤答にイライラする…」そんな悩みを解消し、AIを有効活用するための新たな手段がここにあります。


LLMのハルシネーション問題とDataGemmaの登場

大規模言語モデル(LLM)は、人間のように自然な文章を生成したり、質問に対して多彩な回答を返せる一方で、事実と異なる情報を作り出す「ハルシネーション」という課題を抱えています。たとえば、数値情報や統計データを聞いた際に、あり得ない数値をそれらしく答えてしまうケースが挙げられます。

Googleはこの問題に対処すべく、新たなオープンモデル「DataGemma」を発表しました。DataGemmaは、信頼性の高い「Data Commons」というデータソースとの連携や、回答精度を向上させる二つの手法(RIGとRAG)を採用することで、ハルシネーションを抑制する設計がなされています。


DataGemmaの概要

DataGemmaは、Googleが2024年9月13日に発表した、ハルシネーション問題の克服を目指す初のオープンモデルです。Googleの軽量LLMである「Gemma」をベースに開発され、今後登場が予定されているGenerative AI「Gemini」の基盤モデルとして位置づけられています。特徴的なのは、膨大な統計データを含む知識グラフ「Data Commons」を活用し、数値情報をはじめとする統計的データを正確に回答へ反映できる点です。


DataGemmaの特徴

1. ハルシネーションの抑制

LLM単体では誤情報を生成しがちですが、DataGemmaではData Commonsに格納された豊富な統計データを参照し、回答の正確性を高める仕組みが備わっています。

2. RIG (Retrieval-Interleaved Generation)

LLMが生成した情報とData Commonsのデータを比較し、回答の事実性を向上させる手法です。Googleのテストでは回答の事実性が約58%向上し、より信頼できる結果を得られたと報告されています。

3. RAG (Retrieval-Augmented Generation)

モデルの回答生成と外部情報の検索を組み合わせる手法です。統計情報が必要な場合、Data Commonsから関連データを取り込み、約99%の精度で数値を含む回答を提供できたという結果も出ています。

4. 最新データの活用

Data Commonsから最新の数値情報を取得し、常にアップデートされた回答が可能です。

5. 広範な比較クエリへの対応

Gemini 1.5 Proの長文コンテキストウィンドウを生かし、複数年分の大規模な表データを扱うような比較クエリにも対応しています。

6. 自然言語クエリ

ユーザーは自然言語で質問を投げるだけで、統計データが必要か否かをDataGemmaが自動で判断し、回答に必要な情報を取捨選択します。

7. 出典の明示

回答時には利用したデータの出典や参照箇所を明示し、回答の根拠を示すことで透明性を確保します。

8. 包括的な回答

単なる数値回答だけではなく、増減の理由や過去の推移など、文脈を踏まえた包括的な情報を提示します。


用途とユースケース

DataGemmaの柔軟な拡張性は、多様な分野での活用を後押しします。

  1. 一般企業
    • コンテンツマーケティング:
      • 市場トレンドや顧客属性のデータを自動で収集・分析し、説得力あるマーケティング資料を作成。
    • データドリブンな分析:
      • 社内データをLLM経由で簡単に可視化・分析し、新規ビジネスやプロセス改善のアイデアを得る。
    • レポートやドキュメント作成:
      • 必要データを自動的に挿入して下書きを生成できるため、担当者の負担を軽減。
    • 顧客対応:
      • 顧客の問い合わせに基づいた正確な回答を提供し、問い合わせ対応の品質向上に寄与。
  2. 政府・公共機関
    • 政策立案:
      • 大量の統計データを収集・分析し、根拠に基づいた政策の策定を支援。
    • 公共サービスの改善:
      • サービス関連データを深掘り分析して、改善策を提案。
    • 情報公開:
      • 市民向けに分かりやすい統計情報を提供し、行政への信頼度を高める。
  3. 医療・福祉・ヘルスケア
    • 医学研究:
      • 疾病や医療データの分析を加速し、新しい医薬品開発や治療法の研究に活用。
    • 疾病予防:
      • 疾病動向を分析し、効果的な予防策を立案。
    • 医療サービスの向上:
      • 患者情報と統計データを組み合わせ、医療の質向上を目指す。
  4. 教育
    • 教育コンテンツ作成:
      • 学習レベルや進捗に応じたカスタマイズ教材を作成。
    • 学習支援:
      • 生徒の質問に対して、関連する追加情報や補足説明を提示。
    • 教育データ分析:
      • 学習データを俯瞰し、一人ひとりに合った指導を実施。
  5. 金融
    • リスク管理:
      • 市場データを解析し、リスク要因を早期に把握。
    • 投資分析:
      • 企業の財務指標やトレンド情報を統合し、投資判断の精度を向上。
    • 金融商品開発:
      • 顧客ニーズと市場動向を照らし合わせ、新たな金融商品を企画。
  6. 環境保護・社会貢献
    • 環境データ分析:
      • 温室効果ガス排出量や気候データなどを分析し、環境保護に役立つアクションを検討。
    • SDGs達成への貢献:
      • 持続可能な開発目標に関連するデータを可視化し、効率的な取り組みをサポート。

Google Cloud Platformとの連携

DataGemmaはGoogle Cloud Platform(GCP)のサービスと連携することで、さらに強力な分析・運用基盤を実現します。

  • Vertex AI:
    • DataGemmaモデルをVertex AIへデプロイし、API経由でアプリやサービスへ組み込み可能。
  • BigQuery:
    • 大量データをBigQueryで管理しながら、DataGemmaを通じて高度なデータ分析や予測を実施。
  • Looker:
    • DataGemmaが導き出したデータをLookerで可視化し、誰でも理解できるダッシュボードに落とし込みが可能。

利用料金と提供状況

DataGemmaは無料で商用利用が可能で、RIGモデルとRAGモデルがHugging Face上で公開されています。利用には以下の手続きが必要です。

  1. Hugging Faceのモデルページでライセンスに同意し、アカウントへのアクセスを許可。
  2. DataCommonsのAPIキーを環境変数として設定。
  3. Hugging FaceのAPIトークンを設定。
  4. ユーザー情報を入力し、利用規約に同意した上で利用申請完了。

「Gated model You have been granted access to this model」と表示されたら、RIGモデルとRAGモデルをダウンロードして利用できるようになります。


競合製品との比較

GoogleのDataGemmaと競合するサービスを比較した表を作成しました。

サービス名提供企業特徴使用技術データソースハルシネーション対策
DataGemmaGoogleLLMのハルシネーション問題に対応する初のオープンモデル。RIG
RAG
Data Commons(国連、WHO、CDC、国勢調査局などのデータ)RIGとRAGを組み合わせ、信頼できるソースを積極的に照会し、ファクトチェックを行う。
Azure AI SearchMicrosoftLLMの回答精度を向上させるための検索サービス。RAGMicrosoftのデータベースおよび外部データソースRAG手法を用いて、関連情報を事前に収集し、LLMの回答精度を向上。
Amazon KendraAmazon機械学習を活用したエンタープライズ向け検索サービス。RAGAmazonのデータベースおよび外部データソースRAG手法を用いて、関連情報を事前に収集し、LLMの回答精度を向上。

この表は、各サービスの特徴や使用技術、データソース、ハルシネーション対策に焦点を当てています。DataGemmaは、特に信頼性の高いデータソースと独自の技術を組み合わせることで、LLMのハルシネーション問題に対処しています。

DataGemmaの優位性

  1. ハルシネーション抑制:
    • Data CommonsとRIG・RAGの併用で誤情報を大幅に減らす。
  2. 統計データへの特化:
    • 数値情報に基づいた意思決定が必要な場面で真価を発揮。
  3. オープンソース:
    • 研究者・開発者が自由に改良・検証でき、技術発展を促進。

DataGemmaの制限と課題

  1. Data Commonsのデータカバレッジ
    地域やトピックによってはデータ不足の可能性があり、回答精度にばらつきが生じる場合があります。
  2. データの保持が不可
    一度回答したデータをモデル側で保持しないため、連続的な会話には対応しにくい点が課題です。
  3. 学習データの規模
    現状600件程度の学習データのみを使用しているため、さらなる大規模データの取り込みやファインチューニングが必要です。

FAQ

Q: DataGemmaはどのような質問に向いていますか?
A: Data Commonsに含まれる統計データがあるものなら、特に正確な数値情報を提供するのに適しています。国や地域の人口、GDP、平均寿命などが典型的な例です。

Q: 日本語への対応状況は?
A: DataGemmaは日本語クエリにも対応しており、自然な日本語で回答を得ることが可能です。

Q: 具体的な導入方法は?
A: Hugging Face上のモデルをダウンロードし、必要なAPIキーやトークンを設定するだけで利用できます。詳細手順はモデルページを参照ください。

Q: 今後の展望は?
A: Data Commonsのデータ範囲拡大や学習データの増強により、より多様な統計情報や高精度な回答が可能になると期待されています。


結論

DataGemmaは、LLMのハルシネーション問題を解決すべく開発されたGoogleの最新オープンモデルです。Data Commonsの信頼性高いデータとRIG・RAGといった2つの手法を組み合わせることで、正確な数値情報を含む回答が得られる点が大きな強みです。

すでに無料で商用利用が可能で、研究者や企業が自由に活用・改善できるオープンソースとして公開されています。今後さらにデータカバレッジが広がり、より多様な領域での活用が期待されるでしょう。正確性を重視するLLMのあり方を大きく前進させるDataGemmaの動向に、今後も注目が集まります。

参考)DataGemma | Google AI for Developers – Gemini API

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監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。

「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

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