AGIへの扉を開く?Googleの新チームが目指す“リアルタイム生成AI”とは

Google DeepMindが挑む“世界をシミュレートするAI”の最前線

Google DeepMind、新チームを結成へ
物理世界をシミュレートするAIモデルの開発を加速

Google DeepMindが、物理世界をシミュレート可能な大規模AIモデルの開発に向けて、新たなチームを結成します。OpenAIのビデオ生成プロジェクト「Sora」の共同リードの一人であり、2023年10月にGoogle DeepMindへ移籍したTim Brooks氏がこの新チームを率いることを、自身のX(旧Twitter)アカウントで明らかにしました。

新チームの狙いと背景

Tim Brooks氏は「DeepMindは、世界をシミュレートできる大規模生成モデルの開発に野心的な計画を持っている」と語り、今回のチームではこれを実現するための研究・開発を行うとしています。Google DeepMindの既存プロジェクト「Gemini」「Veo」「Genie」の成果を活用しながら、さらなる高性能化を目指すのが狙いです。

  • Gemini:
    • 画像解析やテキスト生成といったタスクに対応するGoogleのフラッグシップAIモデル群
  • Veo:
    • Googleが開発するビデオ生成AI
  • Genie:
    • ゲームや3D環境をリアルタイムでシミュレーションできる「ワールドモデル」

これらの技術を組み合わせることで、たとえばロボットのトレーニング環境を仮想空間内で構築・最適化したり、ゲームや映画制作などのエンターテインメント分野で革新的なコンテンツを生み出したりすることを目指しているとのことです。

生成AIとAGIへの道

Google DeepMindが世界モデルの開発に注力する背景には、さまざまなマルチモーダルデータ(映像・画像・テキストなど)に対応できるAIを実現し、最終的には人工汎用知能(AGI)に迫る技術を確立する狙いがあります。

「AIトレーニングをビデオやマルチモーダルデータでスケーリングすることは、AGIへの道に不可欠だ」と、Google DeepMindの求人情報には記されています。実際、生成AIは多様な分野で急速に導入が進んでいますが、動画や3D環境といった複雑な空間情報をリアルタイムに処理・生成できる技術は、まだまだ発展の余地が大きい領域といえます。

クリエイティブ業界との関係性

こうした「ワールドモデル」や「リアルタイム生成AI」の普及については、クリエイティブ業界から賛否両論があります。ゲームや映画、アニメーションなどの分野では、製作工程の効率化やコスト削減が進む一方、雇用やクリエイターの創作の場が脅かされる可能性も指摘されています。

  • 雇用への影響
    Wiredの調査によれば、大手ゲーム会社のActivision Blizzardは大量の人員削減を行いつつ、一部でAI技術を導入し生産性を高めていると報告されています。また、アニメーション関連労働組合の調査では、2026年までに10万件以上の映像・アニメーション関連の仕事がAIによって影響を受ける可能性がある、とも予測しています。
  • クリエイターとの共生か置換か
    一部のスタートアップ(Odysseyなど)は「クリエイターとのコラボレーション」を明示的に掲げています。一方、大手企業が同様のスタンスを取るかどうかは未知数であり、クリエイティブ業界の未来像をめぐる議論は今後さらに活発化するでしょう。

著作権問題と動画データの利用

ワールドモデル開発の過程で大きな懸念となるのが、動画データの著作権問題です。一部のAIモデルが、ゲームプレイ動画などを無許可で学習データとして利用している可能性があるとして、法的なリスクを指摘する声も出始めています。

GoogleはYouTubeを所有しており、その利用規約に基づいて動画データを学習に使う権利を有していると主張していますが、具体的にどの動画を使っているのかは明らかにしていません。利用者や投稿者との関係をどのように調整していくのか、引き続き注目が集まります。

今後の展望

Google DeepMindが掲げる「世界をシミュレートするAIモデル」開発プロジェクトは、AIが現実世界のありとあらゆる要素を再現し、かつリアルタイムで生成できる未来を示唆しています。これにより、ロボットやゲーム、映像制作など多様な領域での利用が期待される反面、クリエイティブ業界における労働環境の変化や著作権問題など、さまざまな社会的課題への対処が避けられません。

新チームの成果は、AI研究の最先端のみならず、コンテンツ制作から産業ロボットの開発まで幅広い分野に影響を与えるでしょう。Google DeepMindがこの取り組みをどのように実用化につなげ、業界や社会とどのように折り合いをつけていくのか、今後の動向に注目が集まります。

参考)Google is forming a new team to build AI that can simulate the physical world

監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。

「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

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