巨額投資「Stargate」構想の真意と、世界の競争力に関する持論を語る
AIブームの中で、「様子見」や「慎重な判断」を選択する企業は少なくありません。しかし、そんな判断は致命的な過ちかもしれません。ソフトバンクグループの孫正義代表が、2025年2月21日にマイアミで開催されたFIIで、AIの進化速度について衝撃的な予測を示しました。
すでにPhDレベルの能力を持つAIが、わずか2-3年のサイクルで「10億倍」の知能を獲得する——。そんな未来予測に対し、「まだAIには間違いがある」「人間の方が賢い」と考える人々に対して、孫氏は「下から上を見上げている状態だ」と指摘。このまま様子見を続ければ「気付いた時には手遅れになる」と警告しています。500億ドル規模の投資計画「Stargate」の真意から、世界のAI覇権争いまで、孫氏の最新の視点から見えてくるAIの未来像をお届けします。
AIが今後10年でGDPの5-10%(約9-18兆ドル)を代替する可能性があるという孫氏の予測は、経営者たちに新たな視座を提供するでしょう。さらに、彼が5人の孫たちに伝えているというAIとの付き合い方には、次世代を担う若者たちへの重要なメッセージが込められています。
「10億倍の知能」への加速が始まっている

「私の夢は大きい。情熱も大きい。体は小さいが、夢は大きいんだ」
マイアミでのFIIカンファレンスで、孫正義氏はそう前置きしてから、AIの進化に関する衝撃的な予測を語り始めた。
その核心は、新プロジェクト「Stargate」を通じて実現される「コンピューティング能力の指数関数的な成長」だ。具体的には、年間のチップ生産数が10倍に、1チップあたりの計算能力も10倍になるという。そして、OpenAIの新モデルは現行の10倍の能力を持つ。この掛け算で、わずか1サイクル(12-18ヶ月)で1000倍の進化が実現する計算だ。
「2サイクルで100万倍、3サイクルで10億倍です」と孫氏は説明する。「すでにOpenAIのモデルは、数学、物理学、医学、法律など、あらゆる分野でPhDレベルの試験に合格しています。皆さんは5つの分野でPhDを取れますか? 1つの分野でさえ難しいでしょう」
「効率化」を追求する欧州への警鐘
この予測を踏まえ、孫氏はAI開発の「抑制」や「効率化」を志向する動きに警鐘を鳴らす。特に欧州のアプローチについて、「それは間違いです。AIの進化は誰かが止めようとしても止まりません。中国はすでにその情熱と能力を示しています」と指摘した。
むしろ重要なのは、積極的な投資だという。「今後10年でGDPの5-10%、つまり9-18兆ドルがAIに置き換わる可能性があります。そうなれば、数兆ドルの投資も決して過大ではありません」
次世代へのメッセージ – AIと「共に生きる」
では、急速に進化するAIと人類はどう向き合うべきなのか。孫氏は、自身の孫たちへのアドバイスを例に挙げて説明した。
「娘たちから『子供にChatGPTを使わせるべきか』と聞かれます。私の答えは『使わせるべきではない』ではなく、『共に生きさせなさい』です。AIと共に呼吸し、夢を見させなさい」
宿題でAIを使うなど、使用制限を設けることに反対する理由について、孫氏は「彼らはAIネイティブです。私たちの想像力を10億倍に拡張する可能性を持つツールを、なぜ制限する必要があるでしょうか」と反問する。
「今でも世界には電気のない村があります。電気が発明されて何百年も経つのに、です。AIへのアクセスの有無は、それ以上の生活の差を生むでしょう」
イノベーションの中心地とグローバル展開
Stargateプロジェクトの地政学的な意味についても、孫氏は明確な見解を示した。
「イノベーションの中心は間違いなくシリコンバレーです。NVIDIAは95%以上のAIコンピューティング市場シェアを持ち、OpenAIとGAFAが最先端の知能を提供しています。これは事実です」
ただし、これは米国の独占を意味するものではないという。「これは他国から機会を奪うものではありません。むしろ、欧州などが自ら未来を制限しようとしているのです」
参考)Masayoshi Son & Richard Attias on the $500 Billion Race for AI’s Future