大絶賛と失望が交錯するAI『Manus』
近頃、SNSやテック系メディアを中心に「Manus」というAIプラットフォームの話題で持ち切りです。
「注文代行から不動産購入、果てはゲーム開発まで自動化してくれる?」という触れ込みに、半信半疑でも惹きつけられた人は多いでしょう。
本記事では、Manusがなぜこれほどの注目を浴びているのか、そして本当に“次世代のAI体験”と呼べるだけの実力があるのかを徹底検証します。機能の裏側やユーザーの生の声にも触れながら、AI導入を検討するうえで知っておきたいポイントをわかりやすく解説していきます。
Manusのブームは本物か、それとも幻想か
Manusは、先週プレビュー版を開始したばかりのエージェント型AIプラットフォームです。その注目度は凄まじく、プレビュー版にもかかわらずDiscordコミュニティが短期間で13万人以上に急増するなど、まるで人気アーティストのコンサートチケットを求めるような熱狂ぶりが起きています。
加えて、中国のリセールアプリ「Xianyu(閑魚)」では、Manusの招待コードが高額で売買される事態にまで発展しました。こうした“バズ”現象を受けて、中国のメディアも「国産AIの誇り」と大々的に報じています。
本当にそこまでの価値があるのか?
しかし、この盛り上がりに「本当にそこまでの価値があるのか?」と疑問を呈する声が少なくありません。というのも、Manusはまったくのゼロベースで開発されたAIではなく、すでに存在するAnthropicのClaudeやAlibabaのQwenといった大規模言語モデルを組み合わせていると報じられているからです。確かに組み合わせ方次第では多彩な機能を実現できるものの、「単なるモデル寄せ集めでは?」という指摘も浮上しています。
さらにManusの公式サイトやSNS上では、やや誇大とも思える活用例が語られてきました。たとえば「不動産を自動で購入できる」「手間なくビデオゲームをプログラミングできる」など、まるで何でも可能にしてくれそうな夢のようなAIに映ります。
しかし実際には、ユーザーから「エラーが頻発する」「作業が無限ループに陥る」などの報告が相次いでいます。あるユーザーは「近くのファストフード店でフライドチキンサンドイッチを注文させようとしたら十分に時間をかけた挙句クラッシュした」という体験を共有。別のユーザーは航空券の手配を頼んでも、リンクが誤っていたり情報が不完全だったりして結局手作業で検索し直す羽目になったと嘆いています。
まだクローズドβの段階
こうした“使いにくい”という声の一方で、Manusの開発元である中国企業「The Butterfly Effect」はあくまでも「まだクローズドβの段階であり、トラブルを洗い出す段階にある」と主張しています。実際、Manusの“完全自動化エージェント”というコンセプトは魅力的です。AIが自ら状況を把握し、タスクを分解し、必要なソフトウェアやサービスを横断的に操作する未来は、多くの人が憧れるでしょう。
開発チームは「Manusは単なるチャットボットやワークフロー管理ツールではなく、概念から実行まで一気通貫で担う新たなパラダイムだ」と豪語しています。実際、GAIAなどのAIアシスタントベンチマークで高い評価を得ているとの話もあります。
過度な期待が先行してしまっている
しかし、今のところは技術の不安定さや誤情報の拡散が目立つようで、過度な期待が先行してしまっている印象は否めません。中国では一部メディアやインフルエンサーが過大評価気味にManusを取り上げることで期待値を上げてしまい、実際に使ってみたユーザーが落胆するという構図も生まれています。そのうえ、SNS上で拡散されたデモ動画の中には、真偽不明のものも含まれていたといいます。
まだ始まったばかりのManusにはまだ期待
もっとも、Manusはまだ始まったばかりです。実際にチームは「今後システムを大幅に改善し、ユーザーからのフィードバックをもとに機能を強化していく」と言及しており、将来的に“完全自動化AIエージェント”として進化を遂げる可能性は否定できません。
Manusが本当に生活やビジネスの効率化を劇的に変える存在になるのか、あるいはひとときのブームで終わってしまうのか──その行方を見届けるには、まだ少し時間が必要そうです。