ローカルLLMをファインチューニングしRAG構築するステップ

日本語対応のオープンソースLLMを活用してローカルLLMをファインチューニングし、RAG(Retrieval-Augmented Generation)を構築するためのステップについて詳しく解説します。

RAGとファインチューニングの主な違い

  • RAG
    • モデルの生成能力に外部のデータベースや検索システムを組み合わせて、必要な情報をリアルタイムで取得しながら応答を生成する手法です。元のモデルは固定されたままで、外部情報を「補足情報」として利用します。
  • ファインチューニング
    • 既存のモデルに新しいデータを追加して再学習させ、特定のタスクや用途に適したモデルに調整する手法です。モデル自体を更新します。

顧客対応や文書作成に役立つ!

ローカルLLMのファインチューニングとRAG構築

ローカルLLMのファインチューニングは、特定の業務ニーズに応じたカスタマイズを可能にします。日本語特有のニュアンスや文化を理解したモデルを構築することで、より自然で高精度な結果を生成できます。これは、顧客対応や文書作成、翻訳など、さまざまなビジネスシーンで質の高いサービス提供を実現します。

次に、RAGの構築によって、外部知識を活用しながら生成AIの性能を向上させることができます。RAGは、生成AIモデルが外部情報源から取得した関連情報を組み込むことで、より正確で情報量の多い出力を実現します。これにより、特定のドメインや話題に関する知識不足を補完できるため、業務効率が大幅に向上します。

ローカルLLMをカスタマイズするメリット

  1. データプライバシーとセキュリティ
    • ローカル環境で動作するため、機密データが外部に送信されることがなく、情報漏洩リスクが低減します。特に個人情報保護法やGDPRなどの法規制が厳しくなる中で、この点は非常に重要です。
  2. カスタマイズ性
    • 自社の業務内容やデータに特化した形でモデルをファインチューニングすることで、より高精度な結果が得られます。例えば、社内用語や専門用語を学習させることで、業務効率化につながります。
  3. オフライン環境での利用
    • インターネット接続が不要なため、安定した通信が確保できない状況下でもLLMを活用できます。これにより、工場や建設現場など様々なシーンでの業務効率化が期待されます。
  4. コスト削減
    • クラウドサービス利用料やAPIコール費用などのランニングコストを抑えることが可能です。特にLLMを大規模に活用する場合、そのコストメリットは大きくなります22

ローカルLLMのユースケース

  1. 製造業
    • 製品開発におけるアイデア創出やマニュアル作成の自動化などで活用されます。過去の製品情報や技術文書を学習させることで、新製品のアイデア創出や設計開発を支援します。
  2. 医療分野
    • 電子カルテの自動作成や医療画像診断の支援などで利用されます。医師の音声データをリアルタイムでテキスト化し、電子カルテへの入力を自動化することで、医師の事務作業負担を軽減します。
  3. 教育分野
    • 個別最適化された学習体験の提供や教材作成の自動化などで活用されます。生徒一人ひとりの学習進度や理解度に合わせて最適な教材や問題を提供するアダプティブラーニングが実現可能です。
  4. 金融分野
    • 不正取引の検知や顧客対応の自動化などで利用されます。過去の取引データから不正取引パターンを学習し、リアルタイムで不正検知が行えます。

ローカルLLMのファインチューニングする手順

ステップ1: 環境の準備

まず、Pythonや必要なライブラリ(例: transformerslangchainchromadbなど)をインストールします。Google Colaboratoryやローカル環境での実行が可能です。また、Hugging Faceに登録し、モデルへのアクセス権を取得します。特にLlama系モデルはGated Modelとして提供されているため、利用権限の申請が必要です。

ステップ2: モデルの選定とファインチューニング

モデルの選定

日本語対応のオープンソースLLMから適切なモデルを選びます。例えば、Meta社のLlamaやGoogle社のGemmaなどが候補です。

ファインチューニング

選定したモデルを特定のタスクに合わせてファインチューニングします。LoRA(Low-Rank Adaptation)などの手法を用いることが一般的です。以下のようなコードを使用してファインチューニングを行います。

from transformers import AutoModelForCausalLM, AutoTokenizer
from peft import LoraConfig, PeftModel
from trl import SFTTrainer

model_name = "meta-llama/Meta-Llama-3-8B-Instruct"
tokenizer = AutoTokenizer.from_pretrained(model_name)
model = AutoModelForCausalLM.from_pretrained(model_name)

# LoRA設定
lora_config = LoraConfig(r=64, lora_alpha=16, lora_dropout=0.1)
trainer = SFTTrainer(model=model, tokenizer=tokenizer, peft_config=lora_config)
trainer.train()

ステップ3: RAG構築

RAGは、情報検索と生成を組み合わせた手法です。以下の手順でRAGを構築します。

データベースの準備

RAGでは、外部データベースから情報を取得するために、ChromaDBなどのベクトルストアを使用します。データベースには関連する文書や情報を格納しておきます。

情報検索機能の実装

LangChainなどを用いて、ユーザーからの質問に対して関連する情報をデータベースから検索する機能を実装します。

生成モデルとの統合

検索した情報を基に生成モデルが回答を生成するように設定します。以下はその一例です。

from langchain.chains import RetrievalQA
from langchain.vectorstores import Chroma

# ベクトルストアから情報取得
vectorstore = Chroma.from_documents(texts, embeddings)
qa_chain = RetrievalQA.from_chain_type(llm=llm, chain_type="stuff", retriever=vectorstore.as_retriever())

# 質問応答
response = qa_chain.run("データアナリティクスラボ株式会社について教えてください。")

ステップ4: テストと評価

構築したRAGシステムが正しく動作するかどうかテストします。具体的には、様々な質問に対して期待通りの回答が得られるか確認し、必要に応じてモデルやデータベースの調整を行います。

まとめ

日本語対応のオープンソースLLMを活用したローカルLLMのファインチューニングとRAG構築は、高度な自然言語処理能力を持つシステムを自分自身で構築するための強力な手段です。このプロセスでは、環境設定から始まり、モデル選定、ファインチューニング、RAG構築まで一連の流れがあります。これにより、自分自身やビジネスニーズに合わせたカスタマイズ可能なAIシステムが実現できます。

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