LlamaIndexが新アーキテクチャ「Agent Document Workflow」を発表
AIオーケストレーション・フレームワークとして注目を集めているLlamaIndexは、新たなアーキテクチャとしてAgent Document Workflow(ADW)を発表した。同社によれば、これは一般的なRetrieval-Augmented Generation(RAG)を用いた手法を超えるものであり、エージェントの生産性と意思決定力を向上させる可能性があるという。
RAGを超える新たなワークフロー「ADW」
RAGベースのシステムでは、エージェントがタスクを遂行するために必要な情報を提示することはできるものの、情報に基づいてエージェントが意思決定を行う部分でまだ課題が残っていた。これに対してLlamaIndexのADWは、「複雑なワークフローを扱い、単なる情報抽出やマッチングにとどまらず、文書そのものを意思決定の一部として活用できる」ように設計されている。
たとえば、企業が法務関連の契約書をレビューする場合、人間のアナリストは契約書の重要事項を抽出し、規制要件を照合し、潜在的なリスクを特定し、最終的には推奨事項をまとめるといった複数のステップを踏む。ADWはこうしたプロセスをAIエージェントが担う際、単に情報を探すだけでなく、必要に応じて規制情報を参照・検証しながら意思決定(推奨事項の生成など)まで行うことを可能にする。
LlamaIndexはブログ投稿で、「ADWは文書を幅広いビジネスプロセスの一部として扱うことで課題に対処する。ADWシステムでは、各ステップ間で状態を維持し、ビジネスルールを適用し、複数のコンポーネントを調整したうえで、文書の内容にもとづいてアクションを起こすことができる。単にテキストを分析するだけでは終わらない」と述べている。
エンタープライズで求められる“より高度な”意思決定能力
LlamaIndexは以前から、RAGが重要な技術でありながら、エンタープライズが求める高度な意思決定能力にはまだ不十分だと指摘していた。企業がAIエージェントを実運用するうえで、単なる情報提示にとどまらず、与えられた情報を活用して的確なアクションにつなげるフレームワークが必要とされている。
この背景には、企業がAIエージェントに単純作業だけでなく、人間の担当者に近い複雑な業務・判断を任せ始めている現状がある。RAGだけでは対応できない複数ステップのワークフローをこなすために、LlamaIndexはADWによる“エージェント型”アプローチを提唱しているのだ。
具体的なアプローチ:ADWが担う役割
LlamaIndexはこれまでに、同社の「LlamaCloud」解析機能とエージェントを組み合わせた参考アーキテクチャをいくつも提案している。そこでは、各ワークフローごとに「ドキュメント」が“オーケストレーター”としての役割を果たす設計を採用しているのが特徴だ。
- ドキュメントによる指示:
- まず、ドキュメントがエージェントに指示を出し、必要であれば「LlamaParse」を使ってデータから情報を抽出する。
- 状態の維持:
- ドキュメントは、ワークフロー全体のコンテキストや進捗などの“状態”を管理する。
- ナレッジベースへの参照:
- 必要な場合は別のナレッジベースから参照資料を取り寄せる。
- 推奨事項や意思決定の生成:
- 最終的にエージェントが、取得した情報に基づいて提案や意思決定につながるアクションを起こす。
ADWによって、エージェントは単なる情報検索や断片的なタスクの実行を超えて、プロセスの途中で見つかった情報やコンテキストをもとに柔軟に判断を下せるようになる。LlamaIndexは「状態を保持しながら複数ステップのプロセスに対応することで、単なる抽出やマッチング以上の複雑さを伴うタスクを処理できる」と説明している。
広がるエージェント・オーケストレーションの可能性
RAGを進化させたエージェント・オーケストレーションは、まだ新興の領域ではあるものの、企業が複数のエージェントやAIアプリケーションを導入する際に重要度を増すと考えられている。単体のエージェントだけでなく、複数のエージェントが連携して動く“マルチエージェント・エコシステム”も今後は議論の焦点となるだろう。
AIエージェントは、企業内のナレッジに基づいた情報を見つけるだけでなく、業務における様々な判断や意思決定を自動化・補助することが期待されている。しかし、“バニラ”のRAGでは複雑な業務判断には不十分であるケースが多い。そこで、必要に応じてツールを使い分け、さらに取得した情報の関連性を判断しながら結果を出すことのできる“エージェント型”RAGが注目を浴びている。
LlamaIndexが提唱するADWは、こうした高度なエージェント活用の一助となる新たな枠組みだ。企業がAIの導入を本格化させる中で、RAGを超えた高度なオーケストレーションや意思決定プロセスを実現したいと考える組織にとって、今後の有力な選択肢の一つになりそうだ。