Microsoftは2025年8月、Excelに革新的な機能を発表しました。その名も「COPILOT関数」です。これまでExcelといえば「数値計算や表の作成に特化したツール」というイメージが強くありましたが、今回の発表により、自然言語を直接関数として入力し、AIによる分類・要約・生成をスプレッドシート上で実行できるようになります。
この記事では、Excelに新しく加わったCOPILOT関数の仕組みや特徴、活用方法、そして実務におけるメリットと制約について、IT担当者やビジネスパーソン向けにわかりやすく解説します。
COPILOT関数とは何か

ExcelのCOPILOT関数は、セルに自然言語のプロンプトを入力するだけで、AIがデータを分析・分類・要約し、結果を返す新しい関数です。従来の関数が「=SUM(A1:A10)」のように数値処理を前提としていたのに対し、COPILOT関数は文章を解釈し、AIを活用した高度な処理を実行できます。
たとえば、顧客からのフィードバックを分析する場合、次のような書き方で簡単に分類が可能です。
=COPILOT("Classify this feedback", D4:D18)
上記のように入力するだけで、AIがD4:D18のテキストを読み取り、自動で分類結果を返してくれます。従来の関数では複雑な条件分岐や外部ツールが必要だった処理が、数式1つで実現できる点が最大の魅力です。
ExcelのCOPILOT関数が使えるのは?
この機能は現在、Windows版Excel(バージョン2509以降)、Mac版Excel(16.101以降)のBetaチャンネルで利用可能です。ただし、利用には「Microsoft 365 Copilotライセンス」が必要になります。

日本語対応について
- 入力プロンプトは日本語でも利用可能
実際に=COPILOT("この顧客の声を分類して", A2:A20)
のように入力すると、自然言語での指示を理解して処理してくれます。Excel本体が日本語環境に対応しているため、関数呼び出し自体は問題なく日本語で使えます。 - 出力内容は日本語を扱える
顧客のフィードバックや自由記述アンケートを日本語で入力した場合も、分類・要約・生成の出力を日本語で返してくれます。つまり、業務で利用される日本語テキストを直接処理可能です。 - 公式発表では明記されていないが、多言語サポート前提
Microsoft 365 Copilot自体が多言語対応を進めており、英語以外の主要言語(日本語、中国語、スペイン語など)での利用も前提に設計されています。Excel COPILOT関数も同様に、日本語利用が可能です。 - 注意点
- 専門用語や曖昧な表現では、英語の方が精度が高い場合があります。
- 出力の粒度(たとえば要約の長さや分類の精密さ)は英語指示の方が安定するケースがあるため、日本語での実務利用では検証が必要です。
ExcelのCOPILOT関数の特徴と強み

COPILOT関数には、従来の関数にはない次のような強みがあります。
- 自動再計算機能
参照しているセルの内容が変わると、AIの結果も即座に更新されます。従来の関数と同様、最新のデータを反映した出力を維持できる点が大きな利点です。 - 他関数との組み合わせ
IF、SWITCH、LAMBDAといった従来のExcel関数と組み合わせることで、より柔軟な処理が可能です。たとえば、「COPILOTで分類し、その結果に応じてIFで処理を分岐する」といった応用ができます。 - スピル機能対応
出力が複数行や複数列に及ぶ場合、自動的にスプレッドシート上に展開されます。テキスト要約やリスト生成の際に威力を発揮します。 - 自然言語処理の活用
テキストの分類や要約、アイデア生成など、従来の関数では不可能だった作業をセル1つで実行できるようになりました。特に顧客対応やマーケティング部門での活用が期待されます。
制限と注意点
一方で、COPILOT関数にはいくつかの制約も存在します。利用する際には次の点に注意が必要です。
- 数値計算には不向き
合計や平均などの集計処理は従来の関数の方が正確で高速です。COPILOT関数はテキスト処理やアイデア生成に特化しており、数値作業を置き換えるものではありません。 - 外部データへのアクセス不可
関数は事前学習済みのLLMを用いて処理します。現時点ではWebや社内ドキュメントへの直接アクセスはできないため、必要なデータはワークブックに取り込んで参照してください(将来拡張予定)。 - 使用制限あり
利用回数にはレート制限が設けられており、10分間で最大100回、1時間で最大300回までに制限されています。業務で大量処理を行う際には制約となる可能性があります。 - ライセンスと環境条件
Microsoft 365 Copilotのライセンスが必須であり、さらにBetaチャネルの最新版Excelが必要です。導入を検討する場合はIT部門での環境整備が前提となります。

実務での活用例
COPILOT関数の真価は、ビジネス現場における活用にあります。以下のようなシーンで役立つでしょう。
- 顧客フィードバックの分析
サポート窓口に寄せられた問い合わせやアンケート結果を自動で分類し、ポジティブ/ネガティブ/改善要望などのカテゴリに整理。分析のスピードが飛躍的に向上します。 - 営業・マーケティング資料の作成
セルに「新製品のセールスポイントを要約して」と入力するだけで、提案書の下書きを生成可能。アイデア出しや資料作成の効率化に直結します。 - 教育・人事分野での利用
従業員アンケートの自由記述を要約したり、回答内容をテーマごとに分類したりといった作業が簡単にできます。従来は時間を要した集計業務を効率化できます。 - 会議議事録の要約
議事録のテキストを貼り付け、要点をまとめるよう指示すれば、短時間でわかりやすい概要を作成可能。情報共有のスピードが格段に上がります。
このように、テキストを扱う業務であれば部門を問わず導入効果が期待できます。
今後の展望
今回のCOPILOT関数は、Microsoftが推進する「Copilot戦略」の一環として位置づけられます。今後はWeb検索や企業内データベースとの連携など、さらに幅広い活用が可能になると予想されます。
また、数値処理と自然言語処理を組み合わせることで、従来のExcelでは考えられなかった新しい使い方が生まれるでしょう。たとえば、売上データを集計したうえでAIに「改善のための提案」を生成させる、といった応用も視野に入ります。
ExcelのCOPILOT関数が発表! まとめ

ExcelのCOPILOT関数は、自然言語でAIを呼び出し、スプレッドシートの中で高度な処理を実行できる画期的な機能です。数値処理は従来の関数、テキスト処理はCOPILOT関数、と役割を明確に分けることで業務効率が大幅に向上します。企業のIT担当者にとっては、日々の業務効率化はもちろん、部門横断でのデータ活用の幅を広げる新しい武器となるでしょう。