Anthropic Coworkが切り拓くエージェント活用:AIに考えさせるから任せるへ

AI活用ブログ
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近年、多くの企業で生成AIの導入が進みました。しかし実際の現場では、「とりあえず使わせている」状態にとどまり、業務に定着しない、アウトプットの質がばらつく、属人化が進むといった課題も顕在化しています。こうした状況の背景にあるのは、AIに考えさせているだけで、業務を任せる設計がなされていない点です。

Anthropicが発表したCoworkとプラグイン機能はこの課題に対し、業務ルールやワークフローそのものをAIに組み込み、部門単位で任せるという新しい方向性を示しています。


最近「社外に出せないデータで生成AIを使いたい」という相談をいただきます。ChatGPTの利用は社内で禁止されているそうです。セキュリティやコスト面が気になる企業には、社内のローカル環境で動かせる仕組みがあることはご存知ですか?
OpenAIのオープンなAIモデル「gpt-oss」も利用いただけます。

第1章 Coworkとは何か

生成AIを業務ツールへ引き上げるAnthropicの新アプローチ

Coworkは、Anthropicが2026年1月に発表したエージェント型の生成AIツールです。もともと同社は、開発者向けのAIコーディング支援ツールとしてClaude Codeを提供してきましたが、Coworkはその思想を非エンジニアにも広げた位置づけにあります。

従来の生成AIはチャット画面を通じて質問や依頼を投げ、都度アウトプットを得る使い方が中心でした。一方Coworkは、単なる対話ツールではなく、業務を実行する前提で設計された点が特徴です。あらかじめ業務ルールや参照先、作業の流れを定義し、それに基づいてAIが動くことで人が毎回細かく指示を出さなくても業務が進む構造を目指しています。

Coworkの前提は「組織として再現性のある使い方」

この設計思想は、IT担当者にとって重要な意味を持ちます。なぜなら、Coworkは「個人の工夫に任せたAI活用」ではなく、「組織として再現性のある使い方」を前提にしているからです。

つまりCoworkは、生成AIを便利な相談相手として使う段階から、業務そのものを任せる段階へ進むための橋渡しとなる存在です。この点を理解することが、次に紹介するプラグイン機能を読み解くうえでの前提になります。

第2章 プラグイン機能の仕組み

業務ルールをAIに組み込むという発想

Coworkに新たに追加されたプラグイン機能は、生成AIを業務で使う際に多くの企業が直面してきた課題を正面から捉えた仕組みです。これまでの生成AI活用では、同じ業務であっても担当者ごとに指示の出し方や前提条件が異なり、結果としてアウトプットの品質や観点にばらつきが生じやすいという問題がありました。

Coworkのプラグインは、このばらつきの原因を人の使い方ではなく、業務定義の曖昧さにあると捉えています。プラグインでは、仕事の進め方や参照すべきデータ、利用するツール、重要な判断ポイントなどをあらかじめ定義し、それをAIの動作ルールとして組み込みます。これにより、誰が使っても同じ前提で業務を実行できる状態を作り出します。

第3章 どの部門で使えるのか

マーケティング部門

マーケティング業務では、企画書のたたき作成、コンテンツ案の整理、過去施策の振り返りなど、判断基準やフォーマットがある程度決まっている作業が多く存在します。

プラグインを使えば、参照すべき資料やブランドトーン、確認すべき観点をあらかじめ定義したうえでアウトプットを生成できます。これにより担当者ごとの差を減らしつつ、一定水準の初期アウトプットを安定して作れる点が特徴です。

法務・コンプラ部門

法務やコンプライアンス領域では、生成AIの利用に慎重な企業も少なくありません。しかし、プラグインによって確認項目やリスク観点を明示的に組み込めるため、むしろ人の見落としを防ぐ補助的な役割として使いやすい側面があります。

契約書レビューや文書チェックの初期工程をAIに任せ、最終判断は必ず人が行うといった役割分担を設計しやすい点は、IT担当者にとっても管理しやすいポイントです。

営業部門

営業領域では、すでにプラグインが実務で効果を上げているとされています。単なる営業担当者だけでなく、営業に近い立場のメンバーも含めて、顧客情報やフィードバックを整理し、次のアクションにつなげやすくなる点が評価されています。

ここで重要なのは、個々の営業担当のスキルに依存せず、会社としての営業プロセスをAIに反映できることです。IT部門が関与することで、情報の扱い方やフローを統一しやすくなります。

IT部門が果たす役割

これらの部門別活用に共通しているのは、AIを直接使いこなすことよりも、業務の前提条件や判断基準をどう定義するかが成果を左右する点です。Coworkのプラグインは、その定義を技術的に難しい作業にせず、業務整理の延長として行えるよう設計されています。

そのため、IT担当者は自ら業務を代替するAIを作るというよりも、各部門が安心して任せられる枠組みを整える立場になります。この視点を持つことで、Coworkは単なる新ツールではなく、部門横断で使える業務基盤として位置づけやすくなるでしょう。

第4章 IT担当者が注目すべき設計思想

AIエージェントを社内に広げるための条件

Coworkとプラグイン機能を単なる新しい生成AIツールとして見ると、本質を見誤ります。IT担当者が注目すべきなのは、機能そのものよりも、その背後にある設計思想です。Coworkは、AIを自由に使わせることよりも、任せられる状態をどう作るかに重きを置いています。

多くの企業で生成AI活用が停滞する理由の一つは、使い方を現場任せにしてしまう点にあります。個人ごとにプロンプトが異なり、参照情報もばらばらな状態では、成果の再現性が生まれません。その結果、業務で使えるかどうかの判断が属人的になり、全社展開が難しくなります。

Coworkのプラグインは、この問題に対し、業務の前提条件を明示的に定義することを求めます。どのデータを使うのか、どの工程を必ず踏むのか、どこで人の確認を入れるのかといった判断を、あらかじめルールとして固定する設計です。これは、AIを制御するためというよりも、業務そのものを整理し直す行為に近いといえます。

この考え方は、IT部門の役割とも親和性が高いものです。IT担当者は、業務内容に深く踏み込みすぎる必要はありませんが、業務がどのような前提で動いているかを整理し、再現可能な形に落とし込む支援は行えます。プラグインという仕組みは、その成果物を共有可能な形で残すための受け皿になります。

今後は更に企業で活用しやすくなる

また、今後予定されている組織全体でのプラグイン共有機能も重要です。これは単なる利便性の向上ではなく、業務知識や判断基準を個人の中に閉じ込めず、組織資産として扱うための基盤になる可能性を持っています。生成AIを一時的な効率化ツールで終わらせないためには、この視点が欠かせません。

Coworkが示しているのは、AIに任せるためには、まず人が業務を言語化し、構造化する必要があるという前提です。この順序を理解できるかどうかが、エージェント活用を社内に広げられるかどうかの分かれ目になるでしょう。

第5章 ChatGPTや他の生成AIとの違い

配布型AIから業務基盤型AIへ

多くの企業では、ChatGPTをはじめとする生成AIを、まず個人向けツールとして配布するところから導入が始まっています。このアプローチは立ち上がりが早い一方で、使い方や成果が個人に依存しやすく、業務として定着しにくいという課題も抱えています。

Coworkが目指しているのは、この配布型の活用から一歩進み、業務基盤としてAIを組み込むことです。ChatGPTなどの生成AIは、質問に対して柔軟に応答する汎用性が強みですが、その反面、業務ルールや前提条件を毎回人が補足する必要があります。結果として、同じ業務でも指示の書き方次第でアウトプットが変わってしまいます。

Coworkのプラグインは、こうした前提条件を事前に固定する点が決定的に異なります。業務に必要なルールや参照情報をあらかじめ定義し、それをAIの動作に組み込むことで、毎回同じ品質と観点で処理を行える状態を作ります。これは、生成AIを相談相手として使う発想ではなく、業務プロセスの一部として扱う発想です。

第6章 日本企業で導入を考える際の注意点

Research Preview段階で押さえるべき視点

Coworkは現時点ではResearch Previewとして提供されており、正式なエンタープライズ向け製品としての位置づけは今後固まっていく段階にあります。そのため、日本企業が検討する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。

まず、プラグインが現状ではローカル環境に保存される仕様である点です。将来的に組織全体で共有できる仕組みが提供される予定とはいえ、現段階では運用ルールをどう設けるかが重要になります。検証目的であれば問題ありませんが、本格導入を見据える場合は情報管理や再現性の観点から整理が必要です。

セキュリティやデータ取り扱いには引き続き最大限の注意を

次に、セキュリティやデータ取り扱いの観点です。業務ルールや参照データをAIに組み込むということは、業務知識そのものを扱うことを意味します。IT部門としては、どの範囲までAIに任せるのか、人の確認をどこに残すのかを明確にしたうえで検証を進める必要があります。

Coworkの登場:まとめ

AnthropicがCoworkで示したのは、生成AIを便利な道具として使う段階から、業務を任せられる存在へ引き上げるための考え方です。そこでは、AIの性能よりも、業務ルールや判断基準をどこまで整理できているかが問われます。

IT担当者の役割も、単に新しいAIツールを選定することから、業務が再現可能に回る仕組みを設計することへと変わりつつあります。Coworkのプラグインは、そのための一つの具体例であり、今後のエージェント活用を考えるうえでの重要なヒントになります。AIに考えさせるだけでは、業務は変わりません。任せられる状態を作るために、何を定義し、何を標準化するのか。その問いに向き合うことが、次の生成AI活用フェーズへの第一歩になるでしょう。

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監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。
「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

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