近年、開発現場における生産性向上のため、さまざまなAI支援ツールが登場しています。その中でも、VS Codeの使いやすさとChatGPT/GPT-4クラスの対話能力を併せ持つ「Cursor」は、開発作業を根本から変革する注目のエディタです。
ここでは、Cursorの基本的な使い方、各機能の詳細、そして実際の活用事例について、具体的な内容を余すところなく解説します。
Cursorの基本的な使い方

インストールと初期設定
Cursorは、Windows、macOS、Linuxなど各種OSに対応しており、まず公式サイトから対応するインストーラをダウンロードします。

インストール後、初回起動時に表示されるウィザードでは、VS Codeの設定や拡張機能のインポート、コマンドラインツールである cursor
コマンドのインストールが行われ、ブラウザ上でのユーザー登録とサインインを経ることで、すぐに利用可能な状態となります。なお、googleアカウントでもサインインできます。
初めての起動時にはサンプルプロジェクトが自動的に開かれるため、VS Codeユーザーなら直感的に操作方法を理解できる点も魅力です。
UI構成と基本操作

Cursorのエディタ画面は、左側にファイル構成、中央にコードエディタとターミナル、右側にAIチャットウィンドウが配置された、VS Codeに非常に近いインターフェースとなっています。基本操作の中心は以下の2点です。
コード編集モード(Cmd+K / Ctrl+K)
エディタ上で任意のコードを選択し、Cmd+K
(Windowsの場合は Ctrl+K
)を押すと、選択したコードに対して編集指示やリファクタリングのプロンプトを入力できるモードが起動します。
何も選択していない場合は、新規コード生成のプロンプトが表示され、具体的な指示(例:「このUIをHTML/CSSで実装して」)を与えると、AIがコードを生成してくれます。
提案されたコードは、インラインでの補完として表示され、Cmd+Y
(適用)や Cmd+N
(却下)といったショートカットで手軽に反映できます。
チャットモード(Cmd+L / Ctrl+L)
Cmd+L
(Windowsの場合は Ctrl+L
)を押すと、右側にチャットウィンドウが開き、現在編集中のファイルやカーソル位置のコンテキストを基に、コードの疑問点や改善点、エラーの原因など、幅広い質問に対してAIが対話形式で回答してくれます。

たとえば、「この部分にバグはない?」といった具体的な問い合わせにも即座に対応し、リポジトリ全体を横断して該当箇所を提示するなど、プロジェクト全体を把握した支援が可能です。
ここではリバーシ(オセロ)ゲームを作るためのコードに対して、3-9の箇所にバグがないかチャットで聞いてみました。すると以下のような回答が得られました。

Cursorの機能の詳細

Cursorは、開発者が直面するあらゆる課題に対応するための多彩な機能を搭載しています。ここでは、主な機能を具体的な事例とともにご紹介します。
コード自動補完と生成機能
- 自動補完(オートコンプリート):コード入力中に、AIが次に続く複数行のコードを予測して提示します。Tabキーで候補を選び、スニペットとして一括挿入できるため、入力の手間が大幅に削減されます。
- コード生成と編集指示:選択したコードに対して「この関数をリファクタリングして」など具体的な指示を与えると、より効率的かつ可読性の高いコードへの変換案を提示します。
プロジェクト全体を活かした高度な支援
- リポジトリ全体のコンテキスト把握:単一ファイルに留まらず、プロジェクト全体のコードベースをAIが解析することで、「〇〇のロジックはどこにあるか」などの問い合わせに対しても正確な回答が得られます。複数ファイルにまたがるコード検索も可能です。
- シンボル機能とDocs機能:チャット入力内で
@
を使用すると、特定のファイル、クラス、またはGitコミットを指定して参照できるため、より正確な指示や質問が可能です。

デバッグとコード品質向上のための支援
- Auto-Debug機能:プログラム実行時にエラーが発生した際、画面上の「Debug with AI」ボタンをクリックするだけで、エラー箇所の自動特定と具体的な修正提案が得られます。デバッグ作業の手間が大幅に軽減されます。
- Fix Lints機能:コード内のLintエラーについても、ワンクリックで修正案を提示し、スタイル統一や潜在バグの防止に役立ちます。
画像入力とターミナル連携
- 画像からのコード生成:チャットウィンドウにデザイン画像をドラッグ&ドロップし、「このUIをHTML/CSSで実装して」といった指示を与えることで、画像解析からコードを自動生成する機能があります。これにより、デザイナーが作成したUIを迅速にWeb実装することが可能です。
- 自然言語でのターミナル操作:ターミナル上でも英語による指示から必要なコマンドを生成し、実行できるため、日常的なコマンド入力の効率が向上します。
具体例

上記の画像に対して「このUIをHTML/CSSで実装して」とチャットで支持したところ、HTML/CSSそれぞれコードで書き出してくれました。


※それぞれのコードは長いので割愛してあります。
他のツールとの違い

Cursorは、GitHub Copilotなどの既存のAI補完ツールと比較して、以下の点で優れています。
- エディタとしての一体感:Cursorは独立したエディタそのものであり、VS Codeの使い慣れたUIと操作性をそのまま継承しつつ、AI支援機能を内包しているため、別途プラグインを導入する必要がありません。
- プロジェクト全体への対応:従来の補完ツールは現在編集中のファイル内のみで動作するのに対し、Cursorはリポジトリ全体のコードを把握しており、複数ファイルにまたがる大規模な変更にも対応可能です。
- 多様なAI機能の統合:単なるコード補完に留まらず、文章生成、翻訳、画像解析など、開発以外の作業にも幅広く応用できる点が、他ツールとの差別化ポイントです。
料金プランについて

Cursorは、無料プランでも一定回数のAI呼び出しが可能で、まずはその機能性を体験できます。
さらに、より高度な機能を求める場合は、有料プラン(月額約20ドル~)や自身のOpenAI APIキーを使用して機能を拡張するオプションも用意されています。
Cursorの活用事例:実際のユースケースと業界での導入例

プログラミング業務での活用
- コード生成・リファクタリング:開発現場では、UIの実装から複雑なアルゴリズムの下書き、さらには既存コードのリファクタリングに至るまで、Cursorの自動補完機能が大いに役立っています。たとえば、「この画像と同じUIをReactで実装して」という具体的なプロンプトを入力すると、対応するコード雛形が瞬時に生成され、手作業のコーディング負担が軽減されます。
- バグ修正とデバッグ作業:エラー発生時には、Auto-Debug機能を活用してエラー箇所を自動で特定し、修正案を提示。さらに、Lintエラーに対してもFix Lints機能がワンクリックで対応するため、コード品質の向上にも貢献しています。
文章作成・ドキュメント執筆での活用
- 技術ブログや設計ドキュメントの作成:Cursorは、コード補完機能に加え、自然な文章生成能力も備えています。プログラミングに関する技術ブログや設計ドキュメントの執筆時、冒頭の段落や説明文の下書きをAIに提案してもらい、そのまま編集・採用することで、執筆スピードが飛躍的に向上します。
- マーケティングコンテンツのドラフト:製品紹介文や広告コピーの作成にも利用され、具体的な指示を与えることで、魅力的な文章のドラフトが生成されるため、ライターやマーケティング担当者の負担軽減にもつながっています。
具体例
以下の文章は、チャット欄で浦島太郎について聞いたものです。このように一般的な文章生成AIと同じような使い方もできます。

教育・学習での活用
- プログラミング学習のサポート:学習者は、分からないコードの部分について「このエラーの意味は?」や「この関数の役割を説明して」と質問することで、即座に解説や改善案を得ることができます。これにより、独学でもつまずきにくく、効率的な学習が可能になります。
- 授業や研修での活用:教育機関やプログラミングスクールでは、Cursorを講義補助ツールとして導入し、模範解答の提示やコード例の自動生成、さらには課題の自動採点とフィードバックに活用されています。
具体例
ここでは48行目の関数がどのような役割をおこなっているのか、チャットで聞いてみました。

すると以下のように回答されました。

その他の業界での応用
- フリーランス・個人開発者の生産性向上:忙しいプロジェクトにおいて、一人で多数の業務をこなさなければならないフリーランスや個人開発者にとって、Cursorは強力な生産性向上ツールとなっています。コード生成、デバッグ、さらにはドキュメント作成まで一括して支援してくれるため、業務効率が大幅に向上します。
- デザインレビューや業務データ分析:画像入力機能を利用して、デザイナーが作成したUIのレビューをAIに依頼するケースや、販売履歴データを解析し効果的なマーケティング施策を導き出すためのツールとしても活用され、技術とビジネスの現場でその応用範囲が広がっています。
Cursor:まとめ

Cursorは、従来のコードエディタの枠を超え、AIによる多角的な支援機能を搭載した次世代ツールです。インストールから初期設定、日常のコーディング作業、さらにはデバッグやドキュメント作成に至るまで、開発者が直面するあらゆる課題に具体的な解決策を提供します。
VS Codeの使いやすさを引き継ぎながら、プロジェクト全体のコンテキストを把握してくれる点や、画像入力からのコード生成といった革新的な機能により、企業のエンジニアから教育現場、個人開発者まで幅広い層に支持されています。無料プランでまずはその機能を体験し、必要に応じて有料プランやAPI連携でさらに機能拡張することで、今後の開発ワークフローを大きく変える可能性を秘めたツールと言えるでしょう。
Cursorの具体的な使い方や事例を知ることで、今後の開発環境の最前線を体感していただけるはずです。最新技術と直感的な操作性が融合したCursorを、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。