追加料金不要でビジネスのAI活用を支援
Googleは、2025年1月16日に「Google Workspace」のビジネスおよびエンタープライズ向けプランに生成AI機能を追加料金なしで標準提供することを発表しました。
メール作成や会議の要約、ドキュメント生成など、AIの支援をより手軽に利用できるようになり、今後の働き方やビジネス展開に大きく影響を与えそうです。今回の発表では、Googleが掲げる「AIは作業の付加機能ではなく、仕事のあり方を根本から変える foundational な存在」という考え方が改めて示されています。
AIがもたらす「仕事の変革」
Google Workspaceは20年以上にわたり、ドキュメント、スプレッドシート、プレゼンテーション、メール、ビデオ会議などを含む総合的なコラボレーション基盤として進化してきました。全世界で1,000万以上の企業が採用し、新興スタートアップから大企業まで、多様な規模でワークフローの効率化を実現しています。
昨今注目を集めている生成AIは、単純作業の負担を減らし、会議の議事録作成や長文ドキュメント・動画の要約など、人間が本来クリエイティブに使うべき時間を確保する手段として期待を集めています。Googleによると、すでに10万社以上がこうしたAI機能を取り入れ、業務効率だけでなくアイデア創出にも大きな効果を実感しているとのことです。
追加料金なしで利用できるAIの主な機能
今回発表された「Google Workspace」に組み込まれる生成AI機能は以下のとおりです。すべてのビジネスプラン、エンタープライズプラン利用者が追加料金なしでアクセスできます。
1. Gmail・Docs・Sheets・Meet・Chat・Vids などにおけるAI支援
- Gemini
メール、チャット、ファイルなどを横断的にサマライズ(要約)したり、必要な情報を引き出したりする補助機能を提供。ドキュメント、スライド、スプレッドシート、動画をゼロから作成できるクリエイティブ支援も行います。会議の要約や参加の遅れをフォローする機能など、コミュニケーション品質を向上する補助も搭載されます。
2. 「Gemini Advanced」とのチャット
- Geminiアプリ
PCやモバイルから、より高度なAIチャット機能にアクセス可能。コーディングやリサーチ、データ分析のほか、チーム向けのAIエージェント「Gem」を作って繰り返しタスクを自動化したり、専門性の高い業務をサポートしたりできます。
3. 「NotebookLM Plus」の高度なリサーチアシスタント機能
- NotebookLM Plus
AIリサーチアシスタントをあらゆる従業員が使えるようにする機能。資料をアップロードし、即座に要点をピックアップ。音声による要約機能「Audio Overviews」も備えており、習得した内容をチームに共有できます。オンボーディングや学習を加速させる強力なツールとして期待されます。
シンプルになった価格体系
Googleは、今回のアップデートで「最新の生成AIを使うための追加ライセンスは不要」という方針に転換しました。例えば、ビジネススタンダードプランで従来は「Gemini Businessアドオン」を利用していた場合、月額32ドル/ユーザーの支払いが必要でしたが、今後は標準でAI機能を利用できるようになり、実質14ドル/ユーザーのみで済みます(従来のWorkspace料金+2ドル相当)。
新規ユーザー向けの価格は明日から適用され、既存ユーザーは2025年3月17日以降、または年間/固定契約プランの更新時期に合わせて順次適用される予定です。なお、企業規模が非常に小さい顧客には今回の価格変更は適用されないとしています。詳細はGoogleのヘルプセンターで確認できます。
データ保護とプライバシーへの取り組み
ビジネス向けにAIを提供するうえで懸念されるのが、データのセキュリティやコンプライアンスです。Googleは以下のような取り組みを明確に打ち出しています。
- データは顧客のもの
ユーザーが入力したデータ、プロンプト、生成されたテキストなどは、許可なくモデル学習に使用しない方針。また、広告目的でのデータ活用や売却は行わないと明言しています。 - 企業管理者が主導できるセキュリティコントロール
すでにWorkspaceで導入されているセキュリティやデータ主権コントロールが自動的に適用され、Geminiが参照できる情報はアクセス権が付与された範囲内に制限されます。 - 豊富な認証とコンプライアンス対応
SOC 1/2/3、ISO 27001/17/18、ISO 42001などの認証を取得し、医療情報保護(HIPAA)要件にも対応可能。企業や業界のルールに合わせた形で導入できます。
無料トライアルで体験可能
Googleは「AIは単なるアドオンではなく、仕事の進め方そのものを変革する中心的存在」としています。今回の発表により、生成AIが各種プランに組み込まれ、追加コストを気にせず導入できる環境が整いました。
無償トライアルも提供されるため、実際に機能を試しながら自社の業務フローに組み込めるか検討する絶好の機会と言えます。ウェビナーの登録も案内されており、活用方法や導入事例など、より詳細な情報を得られる場が用意されています。
AIによるビジネス支援は、ここからさらに進化していくと見られます。今後1年を通して、Googleは追加のAI機能を順次リリースする予定とのこと。各企業が競争力を高めるカギとして、生成AIの活用がいよいよ本格化してきました。新たな働き方のスタンダードとして「AIをどう使いこなすか」が問われる時代が、すぐ目の前に来ています。
参考)Google Workspace enables the future of AI-powered work for every business