ビジネス資料の作成は、多くの企業で時間のかかる業務の1つです。
提案書、営業資料、社内報告書、研修資料、役員向けの説明資料など、日々さまざまな資料が作られていますが、実際には資料作成に多くの時間をかけているにもかかわらず、以下のような課題も少なくありません。
- 「何を伝えたいのかわかりにくい」
- 「情報が多すぎる」
- 「結局、相手にどう動いてほしいのかが伝わらない」
そこで注目されているのが、ChatGPTをはじめとした生成AIの活用です。ただし、ChatGPTに「PowerPoint資料を作って」と入力するだけでは、良い資料にはなりません。読み手に響く資料を作るためには、やはりコツがいります。
この記事では、読み手にきちんと伝わるAI時代のビジネス資料作成術について、基本的な考え方から実践手順、プロンプト例、注意点までわかりやすく解説します。
AI時代の資料作成は何が変わったのか

これまでの資料作成では、PowerPointを開き、白紙のスライドにタイトルを入れ、箇条書きを並べ、必要に応じて図やグラフを追加するという流れが一般的でした。しかし、この方法では最初から細部のデザインや文章表現に意識が向きやすく、資料全体の目的やストーリーが後回しになりがちです。
AI時代の資料作成では、この順番が変わります。まず考えるべきなのは、スライドのデザインではありません。最初に決めるべきなのは、次のような内容です。
・誰に見せる資料なのか
・何を伝える資料なのか
・相手にどう動いてほしいのか
・どの順番で説明すれば伝わるのか
・どの情報を図や表にすれば理解しやすいのか
ChatGPTは、このような「資料の設計」を支援するのが得意です。つまり、AI時代の資料作成では、PowerPointを操作する前に、ChatGPTを使って資料の骨組みを作ることが重要になります。
ビジネス資料で本当に大切なのは「きれいさ」ではない
ビジネス資料というと、デザイン性の高さや見た目のきれいさに目が向きがちです。もちろん、読みやすいレイアウトや統一感のあるデザインは重要です。しかし、どれだけ見た目が整っていても、内容が伝わらなければ良い資料とはいえません。ビジネス資料で本当に大切なのは、相手が短い時間で内容を理解し、次の判断や行動に移れることです。
たとえば、営業資料であれば相手にサービスの価値を理解してもらい、商談や導入検討につなげる役割です。資料作成で重要なのは、情報を並べることではありません。相手が理解しやすい形に再構成することです。そして、この「情報を整理して、伝わる形に変える」作業にChatGPTを活用します。
ChatGPTが得意なのはPowerPoint作成ではなく資料設計
ChatGPTが得意なのは、次のような作業です。
・資料の目的を整理する
・読み手に合わせて説明の順番を考える
・スライドごとのメッセージを決める
・長い文章を短くわかりやすくする
・箇条書きを整理する
・図解や表のアイデアを出す
・説明に抜け漏れがないか確認する
つまり、ChatGPTは「資料作成の代行者」ではなく「資料設計の相談相手」として使うと真の効果を発揮します。ChatGPTにいきなり完成スライドを作らせるのではなく、まずは資料の目的、読み手、構成、メッセージを整理するために使う。この考え方が、AI時代のビジネス資料作成では重要です。
ChatGPTで資料を作る前に決める5つのこと

ChatGPTを使って資料を作る前に、最低限決めておきたいことがあります。ここが曖昧なままAIに依頼すると、見た目はそれらしくても、伝わりにくい資料になってしまいます。
1. 誰に見せる資料なのか
同じテーマでも、相手によって伝え方は変わります。現場担当者向けの資料なら、具体的な手順や実務上のメリットが重要です。管理職向けなら、コスト、効果、リスク、スケジュールが重視されます。役員向けなら、経営判断に必要な要点を短くまとめる必要があるでしょう。ChatGPTに依頼する際も「誰に向けた資料なのか」を明確にすると、出力の精度が上がります。
2. 何を伝える資料なのか
資料には必ず中心となるメッセージがあります。新サービスを提案したいのか、現在の課題を報告したいのか、社内研修で理解を深めたいのか、意思決定を促したいのか。目的によって、必要な構成は変わります。ChatGPTに資料作成を依頼する際は「この資料で最も伝えたいこと」を最初に指定することが大切です。
3. 相手にどう動いてほしいのか
良いビジネス資料は、読み終えた後の行動が明確です。たとえば、サービス導入を検討してほしい、次回商談につなげたい、予算承認してほしい、業務改善の必要性を理解してほしいなど、資料のゴールを決めておく必要があります。このゴールが決まっていると、資料全体の流れも作りやすくなります。
4. 何分で説明する資料なのか
5分で説明する資料と、30分かけて説明する資料では、スライドの枚数も情報量も変わります。短時間で説明する場合は、要点を絞る必要があります。長めの説明であれば、背景、課題、解決策、導入効果などを丁寧に展開できます。
ChatGPTに依頼するときは、「10分で説明する営業資料」「15分の社内研修用資料」のように、説明時間も指定すると良いでしょう。
5. 提案・報告・研修・営業のどれか
資料の種類によって、適した構成は異なります。提案資料なら、課題、解決策、効果、導入ステップの順番が基本になります。報告資料なら、結論、現状、課題、対応策、次のアクションが重要です。研修資料なら、基礎知識、事例、演習、まとめという流れが向いています。
資料タイプを明確にすることで、ChatGPTはより適切な構成を提案しやすくなります。
AI時代のビジネス資料作成で重要な5つの視点

ChatGPTを使えば、資料作成の時間を大きく短縮できます。しかし、AIに任せきりにするだけでは、良い資料にはなりません。ここでは、AI時代のビジネス資料作成でとくに重要な5つの視点を紹介します。
1. 1スライド1メッセージに絞る
わかりにくい資料の多くは、1枚のスライドに情報を詰め込みすぎています。1枚のスライドで伝えることは、基本的に1つに絞るべきです。
たとえば、「導入メリット」「料金」「導入手順」「事例」を1枚にまとめると、読み手はどこを見れば良いのかわからなくなります。それぞれ別のスライドに分けたほうが、内容は伝わりやすくなります。
ChatGPTに依頼するときも、「1スライド1メッセージで構成してください」と指定すると、情報が整理されやすくなります。
2. 情報を並べるのではなくストーリーにする
資料は、情報をただ並べるだけでは伝わりません。読み手が自然に理解できる順番に並べることが大切です。ビジネス資料では、次のような流れがよく使われます。
・現状
・課題
・原因
・解決策
・効果
・次のアクション
この順番に沿って説明すると、読み手は「なぜこの話が必要なのか」「なぜこの解決策が必要なのか」を理解しやすくなります。ChatGPTは、このストーリー設計にも活用できます。
3. 相手に合わせて情報量を調整する
資料作成では、情報をたくさん入れることが正解とは限りません。相手が知りたいことに絞って情報を出すことが重要です。たとえば、役員向けの資料に細かい作業手順を大量に入れても、意思決定にはつながりにくいでしょう。一方で、現場担当者向けの資料で概要だけを説明しても、実務には使いにくくなります。
ChatGPTに依頼する際は、「役員向けに要点だけ」「現場担当者向けに具体的に」など、読み手の立場を指定すると、適切な情報量に調整しやすくなります。
4. 図解・表・グラフで理解しやすくする
ビジネス資料では、文章だけで説明するより、図解や表、グラフを使ったほうが伝わりやすいことがあります。たとえば、比較は表にする、流れはフロー図にする、変化はグラフにする、全体像はマトリクスにする、といった使い分けです。
ChatGPTに「この内容は図解にできますか」「どのグラフが適していますか」と聞くことで、視覚化のアイデアを得られます。
5. 最後は人間が判断する
ChatGPTは便利ですが、資料作成を完全に任せきることはおすすめできません。事実関係、数値、出典、社内ルール、デザインの細部、相手の状況に合わせたニュアンスは、人間が確認する必要があります。AIはたたき台を作る存在であり、最終的な判断は人間が行う。この役割分担が重要です。
ChatGPTを使った資料作成の基本ステップ

ここからは、ChatGPTを使ってビジネス資料を作る基本的な流れを紹介します。
1. 資料の目的と読み手を整理する
最初に、資料の目的と読み手を明確にします。たとえば、次のようにChatGPTへ依頼します。
「中小企業の経営者向けに、生成AI導入の必要性を説明する10分程度の提案資料を作りたいです。読み手はAIに詳しくない経営層です。資料の目的は、AI導入に前向きになってもらい、次回の個別相談につなげることです。まず、資料全体の構成案を作ってください。」
このように、読み手、テーマ、説明時間、ゴールをまとめて伝えると、資料の方向性が定まりやすくなります。
2. 全体構成を作る
次に、ChatGPTに資料全体の流れを作らせます。この段階では、細かい文章を作るよりも、スライドごとの役割を決めることが重要です。たとえば、以下のような構成です。
・表紙
・なぜ今AI導入が必要なのか
・多くの企業が抱える課題
・生成AIで解決できること
・導入効果
・導入ステップ
・注意点
・次のアクション
このように全体像を作ってから、各スライドの中身を詰めていきます。
3. スライドごとのメッセージを決める
構成が決まったら、各スライドで何を伝えるかを明確にします。ここで重要なのが、1スライド1メッセージです。たとえば、「生成AIで解決できること」というスライドであれば、メッセージは「生成AIは文章作成だけでなく、問い合わせ対応、資料作成、データ分析にも活用できる」といった形にします。ChatGPTには、次のように依頼できます。
「上記の構成をもとに、各スライドで伝えるべきメッセージを1文ずつ作ってください。1スライド1メッセージで、ビジネス資料向けに簡潔にしてください。」
4. 見出しと本文を作る
スライドごとのメッセージが決まったら、タイトルと本文を作ります。このとき、スライド内の文章は短くすることが大切です。ChatGPTは丁寧に説明しようとして文章が長くなりやすいため、「1スライドあたり3〜5行」「箇条書きは3点まで」などの条件を付けるとよいでしょう。たとえば、次のように依頼します。
「各スライドのタイトルと本文を作ってください。タイトルは20文字前後、本文は箇条書き3点までにしてください。専門用語はできるだけ避け、経営者にもわかりやすい表現にしてください。」
5. 図解・表・グラフの案を出す
文章ができたら、どのスライドを図解や表、グラフにできるかを考えます。ChatGPTには、次のように依頼できます。
「この資料の中で、図解、表、グラフにしたほうがわかりやすいスライドを教えてください。それぞれ、どのような見せ方が適しているかも提案してください。」
AIは、比較表、フロー図、Before / After、ロードマップ、マトリクスなどの案を出してくれます。
6. PowerPointに落とし込む
ChatGPTで構成や本文ができたら、PowerPointに落とし込みます。この段階では、ChatGPTの出力をそのまま貼るのではなく、社内テンプレートやブランドルールに合わせて整えることが重要です。
フォント、余白、色、図形、アイコン、グラフなどは、PowerPoint上で調整します。Microsoft 365のPowerPointを使っている場合は、デザイナー機能やCopilotを組み合わせることで、レイアウト作成を効率化できます。
7. 最後に人間が確認する
最後に、必ず人間が確認します。確認すべきポイントは、次の通りです。
・事実や数値に誤りがないか
・出典が必要な情報に根拠があるか
・相手にとってわかりやすい順番になっているか
・1スライドに情報を詰め込みすぎていないか
・社内ルールや表記ルールに合っているか
・機密情報が含まれていないか
ChatGPTはたたき台を作るには非常に便利ですが、最終的な品質を決めるのは人間の確認です。

Chat GPTにそのまま使えるプロンプト例

ここでは、ビジネス資料作成で使えるプロンプト例を紹介します。
①:提案資料を作るプロンプト
「以下の条件で、提案資料の構成案を作ってください。
テーマ:生成AI導入支援サービスの提案
読み手:中小企業の経営者
説明時間:15分
目的:生成AI導入の必要性を理解してもらい、個別相談につなげる
条件:1スライド1メッセージ、全10枚程度、専門用語はできるだけ避ける
各スライドのタイトル、伝えるべきメッセージ、本文の箇条書きを作ってください。」
②:社内報告資料を作るプロンプト
「以下の内容をもとに、社内報告資料の構成案を作ってください。
目的:生成AI活用プロジェクトの進捗報告
読み手:部長・役員
説明時間:10分
含めたい内容:実施内容、成果、課題、今後の対応、必要な意思決定
結論を先に伝える構成にしてください。各スライドは、タイトルと箇条書き3点以内でまとめてください。」
③:営業資料を作るプロンプト
「以下の商品について、営業資料の構成案を作ってください。
商品:社内向けAIチャットボット
対象顧客:情報システム部門
顧客の課題:問い合わせ対応の負担、社内ナレッジの分散、属人化
目的:導入メリットを伝え、商談化につなげる
課題提起、解決策、導入効果、事例、料金、次のアクションの流れで、10枚程度のスライド構成にしてください。」
④:研修資料を作るプロンプト
「新入社員向けに、生成AIの基本を説明する研修資料を作りたいです。
対象:AI初心者の新入社員
説明時間:30分
目的:ChatGPTの基本的な使い方と注意点を理解してもらう
含めたい内容:生成AIとは、できること、できないこと、プロンプトのコツ、情報漏洩の注意点
研修資料として自然な流れになるように、スライド構成と各スライドの要点を作ってください。」
⑤:役員向け資料を作るプロンプト
「以下のテーマで、役員向けの説明資料を作ります。
テーマ:全社的な生成AI導入の検討
読み手:経営層
説明時間:10分
目的:導入に向けた検討開始の承認を得る
重視したい観点:費用対効果、リスク、競合動向、導入ステップ
細かい機能説明よりも、意思決定に必要な論点を中心に構成してください。」
ChatGPTとPowerPoint Copilot、Canva、Gammaの違い

AIを使った資料作成ツールは、ChatGPTだけではありません。PowerPoint Copilot、Canva、Gammaなど、さまざまなツールがあります。それぞれ得意な役割が違うため、目的に応じて使い分けることが重要です。
ChatGPTは構成と思考整理に強い
ChatGPTは、資料の目的整理、構成案、スライドごとのメッセージ作成、文章の改善、図解案の作成に向いています。まだ資料の方向性が固まっていない段階では、ChatGPTが非常に役立ちます。
PowerPoint Copilotはスライド化に強い
PowerPoint Copilotは、PowerPoint上で資料を作成・編集する作業に向いています。既にWord資料やアウトラインがある場合、それをもとにスライド化したり、既存のPowerPoint資料を修正したりする際に便利です。
CanvaやGammaはデザイン込みの作成に強い
CanvaやGammaのようなツールは、デザイン性のある資料を素早く作るのに向いています。短時間で見た目の良い資料を作りたい場合や、SNS向け、セミナー向け、カジュアルなプレゼン資料を作りたい場合に便利です。
一方で、企業の正式な提案資料や社内資料では、社内テンプレートやブランドルールに合わせる必要があります。その場合は、ChatGPTで構成を作り、PowerPointで仕上げる流れが現実的です。
ChatGPTでPowerPoint資料を作るときの注意点

ChatGPTは資料作成に便利ですが、注意点もあります。
情報を詰め込みすぎない
ChatGPTは丁寧に説明しようとするため、1枚のスライドに情報を詰め込みすぎることがあります。そのため、出力後は必ず情報を削る作業が必要です。ビジネス資料では、全てを説明するより、相手が判断するために必要な情報だけを残すことが大切です。
事実や数値は必ず確認する
ChatGPTの出力には、誤った情報や古い情報が含まれる場合があります。市場規模、料金、法律、統計、企業情報、製品仕様などを資料に入れる場合は、必ず公式サイトや信頼できる情報源で確認しましょう。
デザインは人間が調整する
ChatGPTは文章や構成の作成には強い一方で、最終的なデザイン調整は人間が行う必要があります。余白、フォントサイズ、色、図形の配置、視線の流れなどは、PowerPoint上で確認しながら整えることが重要です。
機密情報をそのまま入力しない
企業でChatGPTを使う場合は、機密情報の扱いに注意が必要です。顧客名、契約金額、未公開の売上データ、個人情報、社外秘の戦略資料などは、そのまま入力しないようにしましょう。必要に応じて、情報をマスキングしたり、社内で許可されたAI環境を利用したりすることが大切です。
社内テンプレートに合わせる
企業の資料には、ロゴ、色、フォント、表記ルール、見出しルールなどがあります。ChatGPTの出力をそのまま使うのではなく、社内テンプレートに合わせて整えることで、実務で使える資料になります。
ChatGPTを活用したAI時代のビジネス資料作成:まとめ

ChatGPTは、資料作成そのものを丸投げするツールではありません。資料の方向性を考え、構成を作り、スライドごとのメッセージを整理し、図解や表のアイデアを出すための強力なパートナーです。
良い資料を作るためには、まず誰に何を伝え、どのように行動してほしいのかを明確にする必要があります。そのうえで、ChatGPTを使って構成を作り、PowerPointでデザインを整え、最後に人間が事実確認と品質チェックを行う。この流れが、AI時代のビジネス資料作成の基本です。


