生成AIの導入が進む一方で、「コード生成はできても大規模改修は不安」「調査や資料作成は結局人がつなぎ直す」「長い会話や大量ドキュメントで精度が落ちる」といった壁に直面する企業は少なくありません。Claude Opus 4.6は、こうした“業務の最後の詰め”に効くアップデートとして、コーディング・推論・長文コンテキスト・エージェント運用を一段引き上げるモデルです。本記事では、性能指標から新機能、導入時の勘所までB2B視点で整理します。
- 1. Claude Opus 4.6の概要:何が進化したのか(コーディング・推論・業務対応)
- 2. ベンチマークで見る性能:Terminal-Bench 2.0/HLE/GDPval-AA/BrowseComp
- 3. 1Mトークン長文コンテキストの実力:検索精度と“context rot”改善
- 4. 安全性のアップデート:評価結果とサイバーセキュリティ対策の強化
- 5. プロダクト/API新機能:Adaptive thinking、Effort、Context compaction、出力128k
- 6. 導入・活用ポイント:Claude CodeのエージェントチームとExcel/PowerPoint連携、価格と提供形態
- まとめ
1. Claude Opus 4.6の概要:何が進化したのか(コーディング・推論・業務対応)
Claude Opus 4.6は、Anthropicが提供する最上位クラス(Opus)の最新モデルで、前世代から特に「計画性」「長時間の自律タスク」「大規模コードベースでの信頼性」「レビューとデバッグ」を強化しています。単発のコード生成ではなく、要件の曖昧さを吸収しながら設計→実装→検証→修正までを継続できる点が、開発現場の実務に直結します。

また、改善は開発領域に留まりません。財務分析、リサーチ、文書・スプレッドシート・プレゼンの作成/編集など、日常のナレッジワークに適用できる汎用性も強調されています。自律的にマルチタスクを進められる環境(Cowork)では、複数の作業を並行して回し、成果物をまとめ上げる“業務アシスタント”としての使い勝手が増します。
- コーディング:大規模コードの理解、レビュー、デバッグ、自己ミス検知が向上
- 推論:難問でより深く考え、結論前に推論を見直す傾向が強化
- 業務対応:金融・調査・ドキュメント作成など、成果物まで到達しやすい
2. ベンチマークで見る性能:Terminal-Bench 2.0/HLE/GDPval-AA/BrowseComp
Opus 4.6は、複数の評価で最先端級の結果を示しています。B2B用途では「実務タスクに近い評価で強いか」「探索やツール利用を伴うタスクをやり切るか」が重要で、その観点で目立つのが以下の指標です。
Terminal-Bench 2.0(エージェント型コーディング)
ターミナル操作や反復を伴う“エージェント的なコーディング能力”を測るTerminal-Bench 2.0で最高スコアを達成したとされています。CIの失敗原因の切り分け、依存関係の調整、テスト追加といった「複数手順をまたぐ修正」に強いことを示唆します。
HLE(Humanity’s Last Exam:学際的推論)
複雑で学際的な推論テストであるHLEでも、フロンティアモデルの中でリードするとされています。業務では、法務・会計・技術・市場などの論点が混ざる意思決定が多く、単一分野の知識より“統合して筋の良い結論を出す力”が効きます。
GDPval-AA(経済価値の高い知識労働タスク)
金融・法務などの領域を含む「経済的に価値のある業務タスク」を測るGDPval-AAで、次点モデル(OpenAIのGPT-5.2)を約144 Elo、前世代(Opus 4.5)を190ポイント上回るとされています。Elo差は体感品質の差として現れやすく、レビュー工数や手戻りの削減に直結し得ます。
BrowseComp(オンラインでの探索能力)
見つけにくい情報をオンラインから特定する能力を測るBrowseCompでも最良とされます。B2Bでは、規制・仕様・競合動向・一次情報の確認など“根拠探し”がボトルネックになりがちで、探索性能はそのまま調査リードタイムに影響します。
3. 1Mトークン長文コンテキストの実力:検索精度と“context rot”改善
Opus 4.6の大きなトピックが、Opusクラスとして初の「1Mトークン・コンテキスト(ベータ)」です。単に長く入るだけでなく、長文の中から必要情報を“取り出して使える”かが実務では重要です。大量の議事録、規程、設計書、契約書、FAQ、ログなどを束ねて扱う場面では、検索精度と推論の一貫性が成果を左右します。

元記事では、長大な文書集合から関連情報を取り出す能力が大幅に改善し、数十万トークン規模でも情報の追跡が安定、埋もれたディテールを拾えると説明されています。ここで鍵になるのが、長い会話で劣化する“context rot(文脈腐敗)”への対策です。
MRCR v2(needle-in-a-haystack)での改善
1Mトークンの中に複数の“針”を隠すMRCR v2(8-needle 1M variant)で、Opus 4.6は76%とされ、比較としてSonnet 4.5は18.5%に留まると記載されています。これは「入れた情報が長文の奥に沈むと取り出せない」という従来の限界が、実用域へ近づいたことを意味します。
- 統合検索:社内ナレッジ+案件資料+過去提案を一度に読み込ませ、根拠付きで回答
- 監査・規程対応:長い規程から該当条文を特定し、例外条件まで含めて整理
- 大規模開発:設計書・チケット・コード断片を跨いで整合性をチェック
4. 安全性のアップデート:評価結果とサイバーセキュリティ対策の強化
企業導入では、性能と同じくらい「安全性の説明可能性」と「運用リスクの抑制」が重要です。Opus 4.6は、広範な安全性評価の結果として、業界の他フロンティアモデルと比べても同等以上の安全プロファイルで、欺瞞、迎合、妄想助長、不正利用への協力などの“ミスアライン挙動”が低率とされています。また、無害な質問まで拒否してしまう“過剰拒否”が最近のClaudeモデルの中で最も低い点も、業務利用では実務上の摩擦を減らします。
さらに、Opus 4.6はサイバーセキュリティ能力が高まった分、悪用リスクを見据えた対策も強化されています。具体的には、潜在的に有害な応答を検出するための新たなサイバーセキュリティ用プローブを6種類追加し、悪用の兆候を追跡しやすくしたと説明されています。加えて、防御側の活用(OSSの脆弱性発見と修正支援)も加速し、今後は必要に応じてリアルタイム介入による悪用ブロックも検討するとされています。
5. プロダクト/API新機能:Adaptive thinking、Effort、Context compaction、出力128k
Opus 4.6はモデル性能だけでなく、開発・運用の“扱いやすさ”を高める機能が揃っています。B2Bでのポイントは、コスト/速度/品質の最適化と、長時間タスクの安定稼働です。

Adaptive thinking(適応的思考)
従来の「拡張思考をオン/オフ」から進み、文脈に応じて深く考えるべき場面をモデルが判断します。難所では深く、単純作業は軽く進められるため、業務の待ち時間やAPIコストを抑えながら品質を確保しやすくなります。
Effort(low/medium/high/max)
開発者が“どれだけ考えさせるか”を4段階で制御できます。元記事では、難問では高い思考が効く一方、簡単なタスクでは「考えすぎ」によりコストやレイテンシが増える場合があるため、必要に応じてmediumへ下げることが推奨されています。業務フローに合わせ、下書き生成はlow、監査や重要判断はhigh/maxといった使い分けが現実的です。
Context compaction(ベータ)
長時間の会話やエージェント運用でコンテキスト上限に近づくと、古い文脈を自動要約して置き換える仕組みです。これにより、長期案件の伴走、複数日にまたがる調査、継続的なコードレビューなどで、履歴を保ちながら走り続けられます。
出力最大128kトークン
一度に大きな成果物を返せるため、分割リクエストの設計や結合処理の手間を減らせます。要件定義書のたたき台、テスト仕様書、移行手順書、長文レポートなど、出力が大きくなりがちな業務で効きます。
6. 導入・活用ポイント:Claude CodeのエージェントチームとExcel/PowerPoint連携、価格と提供形態
Opus 4.6の価値を最大化するには、「モデルを賢くする」だけでなく「仕事の形に組み込む」設計が必要です。開発現場とビジネス部門、それぞれで使いどころが明確になっています。
Claude Code:エージェントチーム(リサーチプレビュー)
Claude Codeでは、複数エージェントを並列に動かし、チームとして協調させる機能が研究プレビューとして提供されます。コードベースレビューのように“独立に読み進められる作業”を分割し、同時並行で進めるのに向きます。結果として、レビューの網羅性とスピードを両立しやすくなります。
- 例:サブエージェントAは認証周り、BはDBスキーマ、Cはフロントの状態管理を重点レビュー
- 例:障害解析で、ログ解析・変更差分確認・再現手順作成を並列化
Excel強化とPowerPoint連携(研究プレビュー)
ビジネス部門では、Excelでデータを整え、PowerPointで意思決定資料に落とす流れが定番です。Claude in Excelは、計画してから実行し、非構造データを取り込んで適切な構造を推定し、複数ステップの変更を一度で処理できる方向に強化されています。さらにClaude in PowerPointは研究プレビューとして提供され、テンプレートやブランド(レイアウト、フォント、スライドマスター)を読み取って、体裁を崩さずにスライド化できる点が業務的に重要です。
価格と提供形態
提供はclaude.ai、API、主要クラウドプラットフォームで開始されています。APIではモデル名「claude-opus-4-6」を利用します。価格は据え置きで、入力/出力それぞれ100万トークンあたり$5/$25です。なお、1Mコンテキスト(ベータ)でプロンプトが200kトークンを超える場合はプレミアム価格が適用され、入力/出力が100万トークンあたり$10/$37.50とされています。米国内推論(US-only inference)は1.1倍のトークン価格で提供されます。
導入時の実務チェックリスト
- 用途別にEffortを設計:定型作業はlow/medium、重要判断やレビューはhigh/max
- 長期案件はContext compaction前提で運用:要約粒度と監査ログ方針を決める
- エージェント化は“分割可能な仕事”から:レビュー、調査、棚卸し、比較表作成など
- Office連携は成果物の型を先に定義:Excelの入力フォーマット、PPTのテンプレを固定
- セキュリティは防御活用もセット:脆弱性診断・修正案作成・パッチレビューに組み込む
まとめ
Claude Opus 4.6は、コーディングと推論の強化に加え、1Mトークンの長文コンテキスト(ベータ)と“context rot”の改善により、「大量の情報を読み、必要箇所を取り出し、最後までやり切る」実務適性を押し上げています。Terminal-Bench 2.0、HLE、GDPval-AA、BrowseCompといった評価での優位は、開発・調査・資料化といったB2Bの中核業務に直結するシグナルです。
一方で、深い思考はコストとレイテンシにも影響します。Adaptive thinkingとEffortで最適化し、Context compactionとエージェント運用で長期タスクを安定化させることが、導入効果を最大化する鍵になります。Excel/PowerPoint連携まで含めて設計すれば、開発部門だけでなく企画・営業・管理部門の生産性向上にも波及させやすいモデルと言えるでしょう。

