Skild AIが切り拓くロボットの新時代
AIとロボティクスが急速に進化する現在のテック業界で、驚くべきニュースが次々と舞い込んでいます。しかし、「ロボットが本当に人間の仕事を奪うのか」「AIは何を変え、何が変わらないのか」など、まだ多くの疑問や不安もあるのではないでしょうか。
本記事ではソフトバンクが約5億ドルもの巨額投資を検討しているロボティクス向けAIスタートアップ、Skild AIの最新動向を解説します。読むことで、AI×ロボティクス分野の現状を俯瞰しながら、新興企業がどのように巨額の資金を調達し、次なるイノベーションを生み出しているのか、その実態を深く知ることができます。
ソフトバンクがSkild AIに5億ドル投資を検討
ソフトバンクとSkild AIの交渉概要
BloombergやFinancial Timesによると、ソフトバンクはロボティクス向けAIを開発するスタートアップ「Skild AI」に対し、約5億ドル（約750億円相当）の投資を検討していると報じられています。投資後の企業評価額は約40億ドル（約5,200億円）にも達するとされ、AI・ロボティクス領域への注目度の高さを象徴する動きとして大きな話題を集めています。
Skild AIとは
Skild AIは創業からわずか2年ほどの若い企業ですが、2022年7月にはライトスピード・ベンチャーズやコートゥー・マネジメント、ジェフ・ベゾスといった著名投資家から総額3億ドルを調達し、企業評価額は当時15億ドルにのぼりました。同社は「多様なロボットに応用可能な汎用AIモデル」を開発しており、特定のドメインやユースケースに合わせてモデルを最適化できることを強みとしています。
AI×ロボティクスへの注目度
AIとロボティクスの融合は、ここ数年で急速に投資が加速している領域の一つです。たとえばジェフ・ベゾスは近年、AI技術によって制御されるロボット開発企業に積極的に出資を行っており、Skild AIだけでなく多くのスタートアップが注目を集めています。
- さらに、2022年11月にはPhysical Intelligenceというロボティクス向けAI企業が4億ドルの資金調達を実施し、プレマネー評価額は20億ドルに達しました。こちらもベゾスのほか、Lux CapitalやThrive Capitalが主導したラウンドとして話題になりました。
- また、2023年2月にはFigure AIがAI搭載のヒト型ロボット開発で6億7,500万ドルを調達し、評価額26億ドルを記録しています。
これらの事例はいずれも、業界全体が“AIが生み出す次世代ロボティクス”に大きな期待を寄せている証左といえるでしょう。
Skild AIの狙いと技術的特徴
Skild AIの最大の特徴は「ロボットの開発や運用に必要とされるAIの“基盤モデル”を提供する」点です。従来のロボティクスでは、目的に応じた個別のアルゴリズム開発が必要でしたが、Skild AIが目指しているのは、多様な分野のロボットに対応できる“共通の脳”を作ることです。
- 汎用性
- 一つのモデルをベースにさまざまなタスクや物理環境に合わせて最適化が可能。
- 効率性
- 既存のプラットフォームやソフトウェアに応用しやすいため、新プロジェクトへの導入がスピーディー。
- 拡張性
- 大量の実データやシミュレーションデータを活用してモデルをアップデートすれば、新機能や高度な動作も実現が期待できる。
Skild AIの共同創業者であるDeepak Pathak氏とAbhinav Gupta氏は、2022年7月のTechCrunchインタビューでこうした汎用モデルが多くのロボットに応用できるポテンシャルを強調しています。
投資がもたらすインパクト
ソフトバンクはロボット事業において、かつては人型ロボット「Pepper」を手がけるなど一定の知見をもっています。しかし近年は投資会社としての色合いが強まり、特にAI関連スタートアップへの出資を通じて事業シナジーを高める戦略をとっています。
- ソフトバンクビジョンファンド
- 多数のAI企業に投資してきた実績がある。
- ロボティクス・ポートフォリオの拡充
- Skild AIと組むことで、ソフトバンクがロボット分野で新たな優位性を確立できる可能性。
今回の5億ドルという投資額が実現すれば、Skild AIにとっては技術開発・人材獲得・市場拡大のための大きな原動力となるはずです。また、ソフトバンクとしてもロボティクス業界でのプレゼンス向上と次世代ビジネスの開拓に大きく寄与すると考えられます。
まとめと今後の展望
Skild AIやPhysical Intelligence、Figure AIといった新興企業の巨額調達ラッシュは、AI×ロボティクス分野がこれからさらに活況を呈することを示唆しています。今後は「より高度な人工知能を搭載し、人間と共存・協働するロボット」がますます増えていくでしょう。
ソフトバンクがSkild AIへの投資交渉を続けている背景には、技術がビジネスにもたらすインパクトを見据えた戦略的な動きがあると考えられます。もし投資が正式に成立すれば、この提携がどのような新しいイノベーションを生み出すのか、業界全体が注目することは間違いありません。
