2026年に入ってから、推論モデルは賢いチャットボットから業務を動かすエージェントへと軸足を移しつつあります。そんな中で注目を集めているのが、Alibaba CloudのQwenチームが発表した推論モデルQwen3-Max Thinkingです。VentureBeatはWeb検索を組み合わせた評価で Humanity’s Last Exam においてGemini3 ProやGPT5.2 Thinkingを上回ったと報じています。
本記事では、日本企業のIT担当者目線で、Qwen3-Max Thinkingの性能、料金、導入時の現実的な論点などを整理しながら紹介します。
なぜ今 Qwen3 Max Thinking が話題なのか

理由は大きく3つです。
1つ目は、推論の強さだけでなく検索やコード実行のような外部ツール連携を前提にした評価が重視され始めたことです。社内で使う生成AIは、社内規程や商品情報や運用ナレッジなど、外部の根拠にあたって答えを固める場面が多いからです。
2つ目は、ベンチマーク上での競合比較が分かりやすいことです。HLEという難関ベンチマークでの差が話題になりました。
3つ目は、料金設計がエンタープライズ利用を強く意識していることです。入力と出力の単価が明確に提示されています。
Qwen3-Max Thinking とは何か
Qwen3-Max Thinking は、複雑な質問に対して段階的に推論を深めるタイプのモデルです。ここで重要なのは単に長く考えるだけでなく、必要に応じて検索やコード実行などの外部アクションを組み合わせる前提で設計や評価が語られている点です。 情シス観点では、次のような用途に直結します。
・社内ドキュメントや公開情報の突合、根拠の確認
・FAQや手順書の自動化、一次回答の品質安定
・コードや設定の検算、ログ分析の補助
・複数部門をまたぐ要件整理と、たたき台生成
Qwen3-Max Thinkingは何が新しい? 推論とツール活用の設計

Qwen3-Max Thinkingnの魅力として強調したいポイントは、推論の進め方を工夫して計算資源を無駄にしにくいことと、推論とツール活用を切り替えながら解を固めることです。 ここを企業利用に引き寄せると、次の価値になります。
・行き止まりの推論を早めに検知してやり直しコストを抑える
・曖昧な点だけ追加で検索し、確度を上げる
・計算や集計はコード実行に任せ、説明や判断は推論でまとめる
ハルシネーション対策としても学習済み知識だけで断言させず、外部根拠を取りに行く導線が重要になります。
ベンチマークの読み方 HLEが刺さる理由
HLEは、幅広い分野の難問を集めたベンチマークで、3,000問規模とされています。ここで大事なのは、暗記や雰囲気で乗り切りにくい問いが多いことです。エンタープライズの業務でも、問い合わせ内容が複雑だったり、例外処理が多かったり、前提が足りなかったりします。つまり、検索や検算をしながら答えを固める力が効いてきます。
VentureBeatによると、Web検索ツールを組み合わせた HLE のスコアで Qwen3 Max Thinking は49.8、Gemini 3 Pro は45.8、GPT 5.2 Thinking は45.5とされています。 また、別の推論ベンチマーク HMMT でも僅差で上回ったと報じられています。
| ベンチマーク | 何を見る指標か | Qwen3 Max Thinking | Gemini 3 Pro | GPT-5.2 Thinking |
|---|---|---|---|---|
| Humanity’s Last Exam(HLE, searchあり) | 検索を含む複合推論(3000問規模と説明) | 49.8 | 45.8 | 45.5 |
注意点として、ベンチマークは万能ではありません。日本語運用、社内固有文書への適応、ガードレール設計、運用監視まで含めると総合力で差が出ます。なので、数値は候補選定の一次情報として扱うのが現実的です。

料金体系
VentureBeatは、qwen3 max 2026 01 23 について入力 100万トークンあたり 1.20ドル、出力 100万トークンあたり 6.00ドルと紹介しています。Alibaba Cloudのモデル一覧でも、同水準の価格表示が確認できます。企業での見方はシンプルです。
・要約や分類など入力が多い業務はコストが読みやすい
・生成が長い業務、たとえば長文回答やレポート生成は出力単価が効いてくる
・検索やツール実行が別課金の場合、エージェント型は呼び出し回数の設計が重要になる
そのため、まずは問い合わせ一次回答、運用ナレッジ検索、議事録要約など、検索の回数がコントロールしやすい業務から試すのが安全です。
Gemini 3 Pro、GPT 5.2 Thinkingとの比較
| モデル | 入力 1M tokens | 出力 1M tokens | 備考 |
|---|---|---|---|
| Qwen3 Max Thinking(qwen3 max 2026 01 23) | $1.2 | $6.0 | 入力32K以下の段階価格 |
| Gemini 3 Pro | $2.0 | $12.0 | 入力200K以下の価格帯 |
| GPT 5.2 Thinking | $1.75 | $14.0 | OpenAIのgpt 5.2 Standard単価として整理 |
日本企業の導入で必ず見るべきポイント
Qwenが中国系モデルであることから、国や業界によっては採用判断に追加の論点が出ます。VentureBeatも、安全保障要件が厳しい企業では慎重になる可能性に触れています。情シスとしては、次をチェックリスト化しておくと進めやすいです。
・データ持ち出しの有無 入力ログと学習利用の扱い
・接続方式 API経由か、閉域やプロキシ経由か
・監査証跡 だれが何を投げたか、回答根拠は何か
・プロンプトやナレッジの管理 部門ごとの権限分離
・モデル切り替え戦略 ベンダーロックインを避ける抽象化
さらに、HLEのように検索前提で強いモデルを使うほど、検索先のガバナンスが重要になります。参照してよいドメイン、社内文書の公開範囲、引用の残し方まで含めて運用設計してください。
Qwen3 Max Thinkingと Gemini 3 Pro、GPT 5.2 Thinking との比較:まとめ

Qwen3 Max Thinking は、検索を組み合わせた推論で HLE において Gemini 3 Pro と GPT 5.2 Thinking を上回ったと報じられ、価格も入力 1.20ドル 出力 6.00ドルという分かりやすい水準が提示されています。 情シスが注目すべきは、単体の賢さだけでなく、検索や検算を含むエージェント的な業務にどれだけ安定して適用できるかです。
次にやるなら、まずは小さくPoCです。問い合わせ一次回答や社内ナレッジ検索のように、正解の根拠が明確で評価しやすい業務から入れ、検索回数と出力長を計測しながらコストと品質を固めていくのが最短ルートです。


