GPT-4.5の実像:価格と性能は見合うのか、その真価に迫る

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業界を揺るがすGPT-4.5の衝撃:期待と疑問、勝つのはどっち?

「最新のLLMはどこまで賢くなったの?」と気になる方へ。OpenAIが発表した新モデル「GPT-4.5」は、微妙な改良が“意外な差”を生む不思議な存在として注目されています。

本記事では、性能向上が期待される一方で、価格や活用分野について賛否を呼ぶGPT-4.5の実力と課題を掘り下げ、「果たして投資に見合うのか?」という疑問にも迫ります。性能の“ちょっとした改善”に込められた可能性や、実際に使用した企業の生々しい評価を知ることで、自社のAI活用に役立つ新たなヒントが得られるでしょう。


GPT-4.5とは何か

OpenAIがリリースした「GPT-4.5」は、CEOのサム・アルトマン氏が「最後のNon-CoT(Chain-of-Thoughtでない)モデル」と位置づけたLLM(大規模言語モデル)です。

公式には「最先端モデルではない」とされながらも、演算効率を高めた最大規模のLLMとして登場しました。アルトマン氏は、GPT-4.5は他の新モデル(o1やo3-mini)のような高度な推論力は持たないとしながらも、「より人間らしい思考」を実現していると強調しています。

一方、多くの業界オブザーバーや研究者が、GPT-4.5の登場を「面白い動き」としつつ、過度な期待は禁物だと指摘。Wharton大学のイーサン・モリック教授は「とても不思議で興味深いモデル」と評価しつつも、複雑なプロジェクトで“妙に怠惰”になる傾向があるとコメントしています。

GPT-4.5 Previewの社会的推論ベンチマーク

GPT-4.5 Previewは、LLMの社会的知性を測る「Elimination Game Benchmark」で1位を獲得しました。

このベンチマークは、戦略的思考や欺瞞、協調性といった要素を評価するために、複雑なルールと多様な指標を採用しています。これにより、生成AIが社会的推論をどのように行うかを詳細に分析できます。


Karpathy氏の評価:小さな進化は積み重なる

OpenAI共同創業者で元Tesla AI責任者のアンドレイ・カルパシー氏も、GPT-4.5のリリースに懐かしさを覚えたと語っています。彼によれば、GPT-4の時点でも、3.5との「決定的な差」を示すプロンプトを探すのに苦労したほど、進化は微妙なレベルで進んでいました。その流れをくんだGPT-4.5にも「一見すると些細だが、全体的に底上げを感じる改良」が散りばめられており、「言葉選びやユーモア、世界知識の端々」でより良い応答を返すといった評価をしています。

ただし、GPT-4.5はまだ「推論力向上のための訓練」を施していない段階であるため、高度な数学的問題や複雑なコードの生成には大きな進歩は見られないとのことです。カルパシー氏は「今後、強化学習などによって推論能力が付与される可能性はあるが、現時点でのGPT-4.5に大きな“革命”を期待するのは早い」としています。


Box CEOの事例:エンタープライズ向けに有用性を確認

クラウドストレージ大手BoxのCEO、アーロン・レビー氏は、GPT-4.5を企業向けのユースケースで試験運用した結果、「GPT-4oよりも複雑な文書の構造化データ抽出に強みを発揮する」と報告しています。

レビー氏のテストでは、商業契約書(CUADデータセット)を用いた単発抽出テストで正確性が19ポイントも向上したとのこと。さらに、200ページ超におよぶ複雑な契約書でもGPT-4.5の方が精度が高かったといいます。こうした例からも、大量の文書から要点を抽出する“非推論的”なタスクには、GPT-4.5の強化された世界知識や言語処理能力が活かせる可能性が示唆されます。


業界の懐疑と価格への疑問

一方で、GPT-4.5の「完成度」だけでなく「価格」にも議論が集まっています。OpenAIをたびたび批判してきたAI専門家のゲイリー・マーカス氏は、「GPT-4.5はたいした内容ではない」と酷評。Hugging FaceのCEOクレマン・ドランジュ氏も、「クローズドソースのままでは評価しづらい」とコメントしています。

さらにSNS上では、「GPT-4.5がo1より高額なのに、ベンチマーク上ではo1の方が優れているケースもある。どこに価値を見出せばいいのか」という指摘もあり、高コスト路線を続けるOpenAIの方針に疑問を呈する声が少なくありません。

また、価格設定の背景には競合モデルへの“蒸留”を防ぐ狙いがあるのではないか、との見方も浮上しています。特に1月から頭角を現した「DeepSeek」がOpenAIに匹敵する推論力をより低コストで提供しているという点が、OpenAIにとって脅威となっているようです。


まとめ:期待と課題のはざまで

GPT-4.5は、推論力を主眼としない「大規模モデルのスケールアップ版」として登場しました。高度な数学やプログラミングといった論理思考分野での飛躍は小さいものの、豊富な世界知識やニュアンス表現の向上など、“知識面”での底上げは確かに期待されます。

しかし、価格やクローズドソースである点、そして既存モデル(特に思考力が鍛えられているo1など)との比較で「コストに見合う価値があるのか」という疑問の声も強まっています。将来的にGPT-4.5をベースに推論力を強化する可能性は残されているものの、現状では「文書要約やデータ抽出など非推論タスク向けの改良版」という捉え方が適切かもしれません。

企業や開発者にとっては、複雑なリーガル文書の整理や多岐にわたる情報収集といった領域でGPT-4.5が有力な手段となり得る一方で、あくまで自社のニーズに対する“費用対効果”をしっかり見極める必要があります。新モデルの微妙な進化が示唆するのは、“大きなブレイクスルー”だけがAI活用の価値ではないということ。さまざまな要素を総合的に検討しながら、最適なAI戦略を練り上げていきましょう。

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監修者:服部 一馬

フィクスドスター㈱ 代表取締役 / ITコンサルタント / AIビジネス活用アドバイザー

非エンジニアながら、最新のAI技術トレンドに精通し、企業のDX推進やIT活用戦略の策定をサポート。特に経営層や非技術職に向けた「AIのビジネス活用」に関する解説力には定評がある。
「AIはエンジニアだけのものではない。ビジネスにどう活かすかがカギだ」という理念のもと、企業のデジタル変革と競争力強化を支援するプロフェッショナルとして活動中。ビジネスとテクノロジーをつなぐ存在として、最新AI動向の普及と活用支援に力を入れている。

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